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マイクロソフトが敵だったのは今は昔?

ライバルはヴイエムウェア!レッドハットのクラウド戦略

2011年06月16日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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6月15日、米レッドハットのCEO、ジム・ホワイトハースト氏が来日して記者会見を行なった。同氏はライバルとしてヴイエムウェアを名指しし、同社がクラウドを次の重要な戦略分野として位置づけていることを明確にした。

Linuxからクラウドへ

 米レッドハットのCEOにジム・ホワイトハースト氏が就任したのは約3年半前の2007年12月で、同氏のCEO就任後初めての海外出張先が日本だったそうだ。今回は同氏にとって3回目の来日だといい、およそ年一回のペースに日本を訪れていることになる。

米レッドハットのCEO ジム・ホワイトハースト氏

 2007年時点のレッドハットは、エンタープライズ向けのLinuxディストリビューションとして着実に地位を固めつつあったRed Hat Enterprise Linuxを軸に事業を展開しつつ、その前年の2006年に買収したJBossによってアプリケーションのレイヤにも地歩を築こうとしていたところだった。その後、長いとも短いとも言える3年半という期間で同社のフォーカスは着実に変化し続けてきている。2008年にカムラネット(Qumranet)を買収、同社の仮想化技術であるKVMはLinuxカーネル標準の仮想化プラットフォームになった。また、2010年にはマカラ(Makara)を買収し、同社のPaaS向けのツールを獲得してクラウド実現のためのコンポーネントを着実に揃えてきた。

オープンソースをベーストした現在のソリューションスタック

 同氏は米国の景気動向を踏まえ、大規模な景気後退が続いていた局面でも年率20%超という高い成長率を維持できた理由について、「不景気が、コスト削減のためにオープンソースソフトウェアを選ぶという追い風として作用した」ことを指摘した上で、「景気が回復に転じた現在では、クラウドを含む次世代アーキテクチャの構築のためにオープンソースソフトウェアが使われるという流れが起こっており、成長が維持されている」と語った。

 同氏はクラウドについて、「ベンダー主導ではなく、ユーザー主導で起こった初めての技術革新だ」という認識を示した。これは、クラウドを実現したのが伝統的な意味でのITベンダーではなく、ユーザー企業としてITをビジネスに活用していたGoogleやAmazonが主役となったことを踏まえての見解だ。「ユーザー企業が、自社が直面する問題に主体的に取り組み、解決していく過程で実現したのがクラウドであり、クラウドという形で問題解決が可能になったのは、そのためのツールとしてオープンソースソフトウェアを活用したからだ」、と同氏はいう。これは、今後クラウドがより広範に普及していく際に、オープンソースソフトウェア企業として主導的な地位を守り続ける同社がきわめて有利なポジションにある、という主張でもある。

 同氏は、米国での市場調査結果を照会しながら、「今後エンタープライズクラウドを推進していくと目される企業として名前が挙がったのはグーグル、ヴイエムウェア、レッドハット、アマゾン・ドットコムの4社だ」と紹介し、クラウド時代のリーディングカンパニーの一社として同社がすでに市場の支持を得ているとした。さらに同氏は、同社の強みとして膨大な数のオープンソースプロジェクトに積極的に参加し、オープンソースソフトウェアの進化に直接携わる立場にあることを挙げた。「オープンソースプロジェクトを通じてユーザー企業のニーズを吸収し、先進的なユーザー企業が生み出したイノベーションの成果を製品としてパッケージングし、エンタープライズ向けに提供できる」ことが同社の躍進の理由だという。

最近発表されたクラウド関連製品「CloudForms」およびサービス「OpenShift」の概要

オープンソース企業としてクラウドに注力

 同社のビジネスの中核をLinuxだと考えると、クラウドへの注力はやや違和感もあるが、すでにLinuxの会社ではなく、オープンソースの会社なのだと認識すれば、現在のクラウドへの注力の意味が理解できる。クラウドを「ユーザー主導の技術革新」と捉える視点はこれまであまり意識していなかったが、確かに説得力のある見解だと同意せざるを得ない。そして、ユーザーが技術革新を推進する以上、そこでツールとして使われるソフトウェアは特定のベンダーにロックインされるようなプロプラエタリなものではなく、オープンソースが中心になるのが自然だろう。

 なお、同氏は現在から近い将来を見たときの同社の最大の競合相手としてブイエムウェアを挙げた。強力な仮想化プラットフォームをベースにクラウド構築のためのフルスタックを揃えているブイエムウェアは、エンタープライズ向けにクラウド構築のためのソリューション提供を志すのであれば正面からぶつからざるを得ない強敵なのは間違いないだろう。

 ユーザー企業が技術革新を主導するといっても、すべての企業がIT分野の技術革新に十分な開発リソースをさくことを望むわけではない。ある程度目処がつけば、クラウドそのものに関してはレッドハットに任せておき、自社の開発リソースはビジネス優位を確立するためのアプリケーションやサービスに集中したい、という流れが生まれると同氏は予測する。これはたとえば、アマゾン・ドットコムが同社のユーザーであることからも裏付けられる。こうしたクラウドを活用するユーザーの信任をどれだけ得られるかが、今後のヴイエムウェアとの主導権争いの行方を左右することになるだろう。

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