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新年度事業戦略を実施

震災復興にオープンソースで貢献するレッドハット

2011年04月22日 07時00分更新

文● 渡邉利和

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4月21日、レッドハットは新年度の事業戦略説明会を開催した。好調な業績を上げ続けている同社は、JBossとクラウドにさらに注力していく計画で、5月3~6日に米国ボストンで開催される“Red Hat Summit and JBoss World”では関連する新製品の発表も行なわれることが予告された。

クラウド対応のさらなる強化

 レッドハットの会計年度は3月からだといい、新年度開始早々に震災が起こったことになる。これを受けた同社の取り組みは、もちろん義援金の拠出等も行なっているそうだが、主眼となるのは「業務を通じた貢献」だという。

レッドハット代表取締役社長 廣川 裕司氏

 説明を行なった同社の代表取締役社長の廣川 裕司氏は、「被災地では救援物資も届いており、物質面ではかなり行き届いてきていると聞くが、一方で絶対的に不足しているのが雇用だ」と指摘した。長期的な復興を実現するには、被災地での雇用確保は不可欠であり、同社はそこに向けた貢献として「TCOの大幅な削減や標準化されたシステムの展開のスピード」といったオープンソースのメリットを活かして被災地におけるITシステムの再建に協力していくという。合わせて同社は「プラスワン活動」に取り組み、「1つでも1分でも1割でも追加で貢献」という目標を掲げている。

 同社の決算では、昨年度のワールドワイドでの成長率は年122%を達成、直近の第4市販の成長率は125%を記録しているという。日本の業績は非公開だが、廣川氏は「ワールドワイドの成長率を上回る好業績を達成している」とした。とくに国内第4四半期には1億円超の大型案件が3件成立しており、受注ベースで大幅な成長を記録したという。

 同社では、中核事業である“Red Hat Enterprise Linux”の安定成長を図ると共に、“Beyond Linux”戦略として、アプリケーションサーバ“JBoss”とクラウド事業を2倍に拡大するという目標を打ち出した。昨年度の実績では、国内のJBoss事業は100%成長にわずかに欠ける80%の伸び、クラウド事業は100%以上の成長を達成したそうだが、今年度は両事業ともに100%以上の成長を目指すという。これに関連した動きとしては、昨年11月にクラウド内のアプリケーション配備・管理ソリューションを提供するMaraka社を買収している。これを受けて、来月ボストンで開催されるRed Hat Summitでは、異種間クラウドの接続を実現する“Cloud Engine”や、同社がEDS(Enterprise Data Service)と呼ぶ仮想データ管理や、JBossを活用したPaaS(Platform as a Service)への取り組みなど、さまざまな新発表が行なわれる予定だという。

 廣川氏は、震災発生を受けた現状認識として、「DR(災害復旧)の重要性」を強調する一方で、「いつどこが災害に遭うか分からないため、DRサイトは短期間で実装可能なフレキシブルな構成でなくてはいけない」と指摘した。かつてのような、数年がかりの巨大プロジェクトでバックアップサイトを用意するようなやり方ではなく、必要な時に必要な場所にすぐにDRサイトを用意し、状況に応じて別の場所に移動させるような身軽な体制を構築する必要があるという指摘だ。

 同社が提供するLinux/JBoss/KVMによる仮想化といったインフラ環境は、高度に標準化されており、こうした用途に強みを持つわけだが、一方でこうしたインフラを本当に必要としているはずの自治体関係者などにそのメリットがまだ知られてないと言う。そこで同氏は、今年度の課題の1つとして「オープンソースの力とレッドハットの価値を知ってもらう」ことも挙げている。

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