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3月の規制緩和と大震災で需要は一気に高まった

2011年いよいよ始動!コンテナ型データセンターを見よう

2011年05月12日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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5月11日~13日に開催されたJapan IT Week 2011 春の目玉の1つは、コンテナ型データセンターだ。今まで建設を難しくしていた規制が2011年3月に緩和されたことを受け、日本SGI、IIJ、NTTファシリティーズなどがコンテナ型データセンターを披露した。

3月の国交省通達で法的な障壁が取り払われる

 コンテナ型データセンターは、冷却設備、分電盤、ラックなどを備えたモジュラー型データセンターユニットで、欧米では外気冷却とあわせて導入されることも多い。モジュラー型であるため、短期間に増やせる点が大きな魅力で、外気冷却や水冷を組み合わせることで、消費電力を大きく抑えることもできる。

 こうしたコンテナ型データセンターは欧米ですでに高い実績を誇っているが、今まで国内では建築基準法や各自治体の規制により、屋外での設置が困難であった。限定的に規制が緩和されるクラウド特区などの方策も検討されたが、結局2011年3月に国土交通省から出された通達により、重大な障害発生時等以外人が立ち入らないなどの要件を満たせば、建築基準法上の建築物として取り扱わないことになった(国住指第4933号)。この規制緩和により、確認申請を省くことが可能になり、建築に際しての法的な障壁が取り払われたといえる。また、3・11の大震災以降のデータセンター需要の拡大を受け、スピーディなデータセンター構築がきわめて重要になっている。そのため、この数ヶ月で各社から続々と製品やサービスが発表されており、今回のJapan IT Week 2011 春でも、数社がコンテナ型データセンターを展示している。さっそく見ていこう。

元祖コンテナ型データセンター
「SGI ICE Cube Air」が来た

 データストレージEXPOで日本SGIが展示していたのが、コンテナ型データセンター「SGI ICE Cube Air」のデモユニットだ。コンテナにラック、空調や電気設備までを搭載したスタンドアロン型のデータセンターユニットである。

会場に展示されたSGI ICE Cube Airは8フィートの小型モデル

 もとより同社は水冷式の「SGI ICE Cube」を2009年から展開していたが、2011年1月に発表されたSGI ICE Cube Airでは名前のとおり空冷の設備を搭載している。コンテナの種類にあわせ、スモール、ミディアム、ラージの3種類のモデルが用意されているが、今回会場に展示されていたのは、8フィートコンテナ(2.48m(W)x 奥行き4.2m(D)x高さ2.85m(H))の「スモール」モデル。51Uのラックを4つ搭載し、200台程度のサーバーを収容できる。デモユニットとはいえ、仕様はほぼ製品と同じで、内部に入ることも可能だ。

 SGI ICE Cube Airでは、縦長のコンテナの前面から吸気し、ラックを冷却したのち、背面から排気する構造。冷却は高効率のファンで外気を取り入れる方法と、水で冷却した空気を用いる気化冷却(オプション)の2種類が利用できる。こうした効率的な冷却システムにより、PUE1.02(外気冷却時)という高い電力利用効率を誇るという。

吸気側に設置されたエアーフィルターと気化熱冷却フィルター

中央のドアを開けると右側に吸気側のファン、左側にラックが並ぶ

冷却ファンが斜めに設置されているのがミソで、空気をスクランブルさせる効果があるという

温湿度、火災、漏水などを検知するセンサーがあちこちに設置され、PLCで自動制御される

コンテナの外側には外気センサーや分電盤などが配置されている

 3・11の大震災以降、バックアップサイト構築などで問い合わせが増えているという。コンテナ型データセンターだと、建築が短期間で済むというメリットが大きいようだ。

■関連サイト

IIJは松江データセンターパークの「IZmo」を展示

 クラウドコンピューティングEXPOでは、インターネットイニシアティブ(IIJ)が開設を発表したばかりの「松江データセンターパーク」で採用されているコンテナ型データセンターユニット「IZmo(イズモ)」の実物を展示している。外気冷却採用のコンテナ型のITユニットと別に空調モジュールと室外機を別途取り付けることで、データセンターとして機能する。

IIJの松江データセンターパークで採用されているコンテナ型データセンター「IZmo」

 展示されているのは「IZmo W」というユニット。SGI ICE Cubeと異なり、縦長コンテナの縦方向中央に並べたラックでホットアイルとコールドアイルを区切るという構成になっている。通常トラックで運べるようラックを傾斜配置して幅を抑えている「IZmo S」に比べ横幅が広いため、ラックをまっすぐ余裕をもって設置できるのがメリットだ。ユニット自体は、以前実証実験で用いられたのものと大きく変更されていないが、配線を減らしたり、分電盤を改良したり、細かい修正を数多く反映したという。

内部は中央のラックでホットアイルとコールドアイルが仕切られる

 今回の見所は、外部からの設定や操作を可能にしたコントロールパネルだ。冒頭の説明のとおり、コンテナ型データセンターは「重大な障害発生時等以外人が立ち入らない」という要件があるため、基本的には設定や操作は外部からコントロールできる必要がある。これを実現するため、電力やカメラ、照明などの制御なども外部から行なえるようにした。最終的には、クラウドと統合し、コンテナ全体で1つのコンピュータとして動作するようなインテリジェンスを持たせたいという。

外部からひととおりのことが行なえる「IZmo管理システム」が披露された

■関連サイト

実績とカスタマイズが売りのNTTファシリティーズ

 グリーンIT&省エネソリューションEXPOでは、豊富なデータセンターの構築実績を持つNTTファシリティーズが、先日発表したばかりの「セルモジュール型データセンター」のうち、「コンテナタイプ(S)」のデモユニットを展示した。同サービスでは、そのほか大型ボックスを用いた「コンテナタイプ(L)」や屋内設置型の「フロアタイプ」も用意されており、「空きスペースにプライベートクラウドを作る」などユーザーの要望に応じて、規模や容量を選べる。

NTTファシリティーズのコンテナタイプ(S)のデモユニット

 コンテナタイプ(S)はトレーラーで運搬可能ないわゆるコンテナ型データセンターで、外気冷却ユニットとラック型空調機「FTASCL」により、PUE1.2という高い電力利用効率を実現している。ラックはIZmoと同じく縦長のコンテナを分断する形で設置され、ラックと屋根の間なども、吸気と排気を物理的に分離するアイルキャッピングが施されている。背面には外気空調ユニットも付けられており、実際に動作していた。

中央のラックでホットアイルとコールドアイルが仕切られる

外気冷却ユニットが接続されており、実際に外気を取りこんで冷却していた

外気冷却とラック型空調機と組み合わせることで効率的な冷却が実現

 NTTグループは、もともと電電公社時代からコンテナのような通信設備を全国各地に配置してきた実績があるため、こうしたコンテナ型データセンターの設置や保守運用のノウハウを持っているという。また、ラックや空調機の選定や配置の変更も顧客の要望を応じてカスタマイズできるという。NTTグループ全体で、高品質なデータセンターだけではなく、よりコストパフォーマンスの高いデータセンターをバリエーションとして加えていくという流れがあるようだ。

■関連サイト

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