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最新パーツ性能チェック 第111回

P67とH67を合体させた夢のチップセット「Z68」の実力を探る

2011年05月12日 00時00分更新

文● 加藤 勝明

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Z68のもう一つの目玉
「SRT」を試す

 最後に、Z68に新搭載されたSRTこと「Smart Response Technology」の性能をチェックしよう。この機能は最高64GBまでの領域をHDDのキャッシュとして使い、HDDのパフォーマンスを向上させる機能だ。自作パーツとしては、すでに販売中のSilverStone製「SST-HDDBOOST」やHighpoint Technologies製「Rocket Hybrid 1220」がこれと似たスタンスの機能となる。
 まず、SRTを使うための要件および注意点は以下の通りだ。

  • SATAの動作モードが「RAID」であること
    ただし、HDDは単体(Non-Raid)であってもRAIDであってもかまわない
  • HDD側にシステムをインストール済みであること
  • キャッシュとして利用可能(中身が消えてもいい)な、最低4GB以上のSSDがあること(現実的には64GB以上が理想)
  • HDD/SSDともに、Z68のSATAコネクターに接続されていること(6Gbps/3Gbpsは問わない)
    なお、SRTの恩恵を得られるのは1ドライブのみ
  • 最新の「Intel Rapid Storage Technology」(Ver.10.5.0以降)がインストールされていること

要件を満たした状態でRapid Storage Technologyを起動すると、ツールバー上に「高速」というボタンが出現する。ここで「高速の有効」をクリックしよう

SRTの動作モードは2種類。最高64GBまでの領域をキャッシュ用に割り当てることができる。ここで「OK」を出すとしばらく固まるのだが、キャッシュエリアを作成中なので慌てないこと

割り当てが成功した後のSSDの状態。SSDの容量から64GB分を引いた分は、初期化して普通のストレージとして利用できる(図はGドライブとして初期化した後)

上のボリューム一覧を見ると、SSDがどのように分割されているかがわかる。一度キャッシュを設定した後で、再びキャッシュの動作モードを変更することも可能だ

 ここでのポイントは、HDDを単体で使う限りSRTの設定で「RAID BIOSを見る必要がない」という点だ。つまり、RAIDモードでOS等一式をセットアップした後からSSDをシステムに追加しても、Rapid Storage Technologyが自動的に最適な設定にしてくれるのだ。RAID BIOSの設定はビギナーにはハードルが高い作業だけに、半自動化したSRTの設計は秀逸だ。
 また、SRTに割り当てたSSDはいつでも元に戻せるが、その際Rapid Storage Technology上で正しく操作すれば、HDD側のデータが失われることはない(SSD側はパーティション操作を伴うため、そのつど初期化される)。この点も嬉しい設計だ。

キャッシュ動作は2種類

 SRTでのキャッシュの動作は「拡張(Enhanced)」と「最速(Maximized)」の2つから選択できる。その違いは以下の通りだ。

拡張
SSDとHDDの両方にデータを書きこむ、いわゆるライトスルー方式。万が一SSDに障害が発生しても、HDDの中身は残る。こちらがデフォルト。
最速
まずSSDに書きこみ、頃合いを見てHDDに書き出すライトバック方式。HDDに書き出す前にSSDに障害が出ると、SSDにしかないデータはHDD上から消失するリスクがある代わりに、高いパフォーマンスを得られる。

 ポイントになるのはSSDはインテル製でなくてもOK、というところだろうか。Z68リリース間近に流出した情報では次世代インテル製SSD「311」シリーズとの強い関連が噂されたが、どうやら「SRTの動作に適した高速かつ小容量のSSD」、ということが実態のようだ。

ベンチ結果は高性能だが……

 今回は「CrystalDiskMark 3.0.1a」のほかに、4GBの単一イメージファイルの複製、合計400MBのRAWファイル50枚の複製、さらに「Passmark Rebooter」を使ったシステムの起動時間を比較してみた。比較対象としてHDD単体でも計測している。

CrystalDiskMark 3.0.1a 50MB×4(単位:MB/s) better→

CrystalDiskMark 3.0.1a 1000MB×4(単位:MB/s) better→

CrystalDiskMark 3.0.1a 4000MB×4(単位:MB/s) better→

 CrystalDiskMarkの結果では、リードとライトで明暗が見事に分かれた。総じてリード操作はSSDの高速性が活かされていると判断できる。しかしライト操作に関しては、最速モードがHDD最大の欠点であるランダムライト性能を補っている一方で、拡張モードではランダムライトでHDD単体より悪化してしまう。だが拡張モードはキャッシュ領域のSSDとHDDでRAID1を構築していると考えれば、(安全性のトレードオフとして)パフォーマンスが悪化することのは致し方ないといえるかもしれない。

RAW画像ファイル50枚[400MB]のコピー時間(単位:秒) ←fast

4GBファイルのコピー時間(単位:秒) ←fast

Windows起動時間(単位:秒) ←fast

 ファイル複製に関しては少々複雑な手順でテストを行なっている。まずSRTを解除した状態でテストファイルをHDD上にコピー、その後SRTを有効にしてテストファイルを複製(これが1回目)、さらに複製したファイルをさらにその場で複製(2回目)となる。1回目のファイル複製は書き込みに対してのみSSDのパワーが発揮されるが、2回目はSSDの読み出しにも威力が発揮される。
 ここでの結果はCrystalDiskMarkの結果をある程度裏付けている。つまり読み出しにはどちらも高い効果を発揮するが、書き込みはむしろ遅くなるケースがあるということ。とはいえ、拡張モードの2回目の結果が最速モードと大差ないことを見ると、HDD自体のキャッシュ性能にも関連がありそうだ。
 ちなみに、400MB程度のファイルの場合は、複製したものを複製する作業が一番速いのはHDDだった(2回目はほぼ一瞬で終了する)という点も記しておきたい。

SSDを切断すると、どうなるか?

 さて、ファイルをコピーした直後に強引にSSDのケーブルを抜き、コピーしたデータがどうなるかもチェックしてみた。
 どちらのモードでも抜いた直後から操作に対するレスポンスが消失し、リセットすることになったが、コピーしたデータは拡張モードでは残る。しかし最速モードではコピーしたはずのデータは消えていた。

無理矢理SSDを引っこ抜いた後に再起動すると、RAID BIOSがアラートを発する

この画面で「R」キーを押すと、HDD側のキャッシュとの関連付け設定が消え、以降は普通に起動するようになる

 これは前述のモードによるキャッシュ動作の違いと一致する。いつSSD内にキャッシュされたデータがフラッシュされるのかは不明だが、最速モードではこういったリスクが現実にあり得るということは覚えておきたい。
 ただし、何回かこの実験を行った後はシステム全体が不安定な状態に陥ったため、拡張モードといえども障害に対して万全とはいえない。あくまで万が一のリスクを乗りきるためのものと考えるべきだろう。

Z68はまだ熟せず、しかし美味!

 これまでZ68マザーのレビューをお届けしたが、全体としてまだまだ未完成な印象を受けた。Virtuの出来や、マザーボードとしての安定性に若干不安な面があったこともあるが、一番の理由は「(OCユーザー期待の)外部PLLの載ったマザーが今のところ1枚もない」ということに尽きる。Virtuを使いたければ(自己責任とはいえ)H67マザーでも事足りる。オーバークロックとQSVが使えることこそがZ68の魅力だが、現状では倍率上げのみというのは非常に寂しい。
 そういう意味において、Z68マザーはもうひと化けする可能性を秘めている。Z68マザーの完成形はまだ見えていないのだ。ただし、現状でもSRTは非常に面白い。まだ検証しきれていない部分は多いが、上手に利用すれば大容量ストレージを抱えたPCの新しいセットアップ方式のスタンダードになるだろう。
 Z68が熟すまで待つもよし、酸っぱさを楽しみつつも美味なる新機能を堪能するもよし。そんな魅惑のチップセットが出てきたといえる。

現状としてまだまだ未完成な印象を受けたZ68マザー。外部PLLの載ったマザーが登場すれば、大きく化ける可能性を秘めている。SRTが非常に面白い機能なので、自作マニアはこの機能だけでもしばらく遊べるだろう


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