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この結末を見届けよ! 小説『ダークエルフ物語 夜明けへの道』

2011年04月02日 00時00分更新

文● 第9編集部 第2書籍課 工藤裕一

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8年以上続いた傑作シリーズが、大きな一区切りへ

 2002年12月に邦訳版の刊行を開始した世界2千万部ファンタジー小説シリーズ『ダークエルフ物語』(ダンジョンズ&ドラゴンズというTRPGの世界観をベースにした翻訳小説で、あの『ドラゴンランス』と双璧をなすシリーズ)が、2011年3月25日の『ダークエルフ物語 夜明けへの道』の発売をもって、ついに大きな一区切りを迎えた。編集担当としてこの8年間、作品を見続けてきた私の立場から、過去作品を振り返りつつ、この記念すべき一作の紹介をさせていただきたい。

ダークエルフ物語 夜明けへの道

「ダークエルフ物語 夜明けへの道」/原題:THE LEGEND OF DRIZZT 10(Passage to Dawn)/R.A.サルバトーレ 著 安田均 監訳 笠井道子 訳/定価:2625円 (本体2500円)/B6変形・ソフトカバー/608ページ/ISBN:978-4-04-868752-2/発行:アスキー・メディアワークス 発売:角川グループパブリッシング

 過去8年あまりで出してきた10作品全12巻は、大きく3つのグループに分かれている。

 漆黒の肌と白い髪を持つダークエルフ族(闇に落ちた邪悪なエルフで、地下に住む種族)として生まれながら、善なる心を持っていたがために悩み苦しんだドリッズト・ドゥアーデンが、秘された実父との葛藤を経て、ついに故郷である邪悪な地下都市を捨てて地上へ出奔し、彼に対して偏見や差別心を抱かない真の仲間たちに巡り会うまでを描いた『ダークエルフ物語』3部作

 その仲間たちと地上世界を旅して巡る、豪華絢爛、めくるめく壮大なる冒険の数々を描いた『アイスウィンド・サーガ』3部作(邦訳版は、全5巻で発売)。

 そして、ドリッズトを追って地下世界から迫りくる魔手との凄絶なる戦いを描いた、最新シリーズ『ダークエルフ物語 ドロウの遺産』シリーズ4部作

 先頃発売された『ダークエルフ物語 夜明けへの道』は、このラストを飾る作品となる。

 本作品シリーズのテーマは、私の理解では、次の通りだ。

 まず、執筆順では最初になる『アイスウィンド・サーガ』シリーズは、ひたすらエンターテインメント性を追求した、冒険活劇として描かれている。重厚感こそ他の作品にやや劣るものの、その楽しさ、ハラハラドキドキのストーリーのスピード感は際立っていて、ファンタジー・ロールプレイングゲーム好きなどには、たまらないものがある。

 次に執筆された最初の『ダークエルフ物語』では、物語は主人公ドリッズトの内面の成長へとより深化していく。『アイスウィンド・サーガ』に負けない超一級のエンターテインメント性を保ちながらも、ドリッズトの歩み――孤独から友情へ、そしてエゴから社会へ――が見事に描かれた本作は、数あるサルバトーレ作品の中でもひときわ優れた出来栄えの、白眉の作品であった(巻が進むごとにサルバトーレの筆致はどんどん優れたものになっていく)。本作でサルバトーレは、ドリッズトを「読者の心に一生残るキャラクター」へと仕立てることについに成功したと言って良い。涙なしには読めない傑作だ。

 そして次なる『ダークエルフ物語 ドロウの遺産』シリーズであるが、本作では、ドリッズトが自分の暗い過去や因縁と決着をつける物語が描かれている。内面のテーマは、ずばり言えば、“自己犠牲の精神”と“友を信じ、頼ること”との相克であろう。

 『ダークエルフ物語 夜明けへの道』の結末では、ドリッズトはついにひとつの平安、確信を得たように私には思える――が、そこは本作を読まれた読者諸氏の解釈にゆだねることにしよう。

『ダークエルフ物語 夜明けへの道』のあらすじ

 ではいよいよ、「夜明けへの道」のあらすじをご紹介しよう。

 前作「暗黒の包囲」で、ドリッズトの邪悪な故郷であるメンゾベランザンからのダークエルフ侵攻軍を退けた後、故郷と呼べる場所を探し続けるドリッズトとキャッティ・ブリーは、海賊拿捕船〈海の妖精〉号に乗り組み、デューデルモント船長らと6年にわたって海賊討伐に明け暮れる日々を過ごしていた。

 そこに忍び寄る、邪悪な影と謎のメッセージ……フォーゴトンレルムの広大な海洋を旅する波瀾万丈の航海の末、“呪われた魔女の島”に導かれたドリッズトら一行は、そこで不可解な詩篇を手に入れることになる……。

 ドリッズトと深い因縁のある恐るべき奈落(アビス)の強敵が仕掛けた罠とは? その強敵に囚われ、日々拷問を受けているという、ドリッズトにとってかけがえの無い人物とは?

 謎が謎を呼ぶ冒険は、ついには、極寒の最果ての地での、奈落の魔族・デーモン軍との最終決戦へとつながっていく。そしてドリッズトの前には、亡き父ザクネイフィンの姿が……?

 『ダークエルフ物語 ドロウの遺産』『同 星なき夜』『同 暗黒の包囲』に続く、「ドロウの遺産」シリーズをしめくくる、感動の完結編が本作だ。

 小説『クレリック・サーガ』の主人公カダリーやダニカ、イヴァン&ピケルらも登場し、まさにダークエルフ物語の総決算と言える壮大なる物語が展開される、全608ページである!


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