このページの本文へ

IT技術者に未来はあるか? 第2回

過去の延長線ではなく、思考や行動様式を変えよう

広がるクラウド化でIT技術者の環境はどう変わる?

2011年05月12日 06時00分更新

文● 政井寛/政井技術士事務所 代表

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

リーマンショック以来の2年間、IT技術者は企業のIT投資削減の影響でリストラに怯え、クラウドの登場で自身の技術の陳腐化を憂い、中国、インド技術者との競争にしり込みする日々であった。この先否応なく巻き込まれるグローバル大競争の時代に、どう生き残ればいいのか?本連載を通じて、ITサービス企業とIT技術者に問いかける。第2回は、世界的なムーブメントとなっているクラウドの普及でIT技術者を取り巻く環境がどう変わるかを見ていこう。

クラウドで変わること

 ITビジネスやIT技術者の今後を考える時、クラウドコンピューティングの影響はきわめて大きい。昨年のIT系の講演では「タイトルにクラウドをつけないと人が集まらない」と言われるほど注目を集めている。実際のビジネスの中で多くのIT技術者に具体的な影響が出てくるのは、もう少し先だが、その影響は確実に迫っている。

 クラウド時代になると何が変わるか。クラウドは大きな技術の革新ではない。すでに存在していた新しい技術要素、具体的には

  1. ネットワークやサーバ―の大容量化と高速化
  2. 仮想化技術
  3. Webコンピューティング
  4. フリーソフト

が組み合わさって実現できた、新しいスタイルのコンピュータの利用方法である。

 現在の企業のIT利用は、図1に示したプロファイリングでわかる通り、企業の競争優位性の度合いと企業リスクの関係で分類できる。非ミッションクリティカル領域を皮切りに、徐々にクラウド化される。セキュリティやベンダーロックイン、損害賠償問題などの杞憂を解決しながら、最後はコア(高い競争優位)とミッションクリティカルの領域まで対象になる可能性さえある。

企業のITシステム・プロファイリング

 ITユーザーの利用拡大が始まると、この影響は先ず最初にセンター(データセンター)事業者に現われる。「センターの大規模化・集中化で“クラウドセンター”を目指す」か、「事業を中止する」かの判断を迫られる。ソフトベンダーはカニバライゼーション(Cannibalization、共食い状態)を引き起こし、ビジネスモデルの変革を迫られる。そして、ハードメーカーや通信機器メーカーのようなインフラコンポーネントを制作・販売する企業は、販売先が一般企業からセンター事業者に比重が移ってゆくのでマーケティングを変更する必要がある。

 企業のIT化領域は拡大するため、新しい業務ソフトの開発需要は発生する。反面、従来のコンテクスト業務(競争優位とは関係ないが稼働しないと企業活動に支障をきたす業務)は、標準品利用を徹底することになるため、大型のアプリケーション開発プロジェクトは少なくなる。このような大きな変化のうねりの中で、IT技術者の重要性や存在感は間違いなく高まる。しかし、それは量的な拡大ではなく、質的な変化を迫られることになるのでやっかいである。

クラウド化を見据えたビジネスとは

 従来、ITユーザーが持っていたコンピュータセンターは、プライベートクラウドを経て、クラウド事業者側に移る。そのため、そこに従事していたインフラ系技術者も集約される。ハイレベルのプロフェッショナルだけが残ることになりそうだ。しかも、グローバルで超巨大クラウド提供ベンダーはセンターの運営を世界のいくつか拠点に絞るので、日本のIT技術者はインド、中国の技術者と競争になり狭き門となる

 ユーザー企業では、従来のシステムをクラウドに移行するプロジェクト需要(システムのリフォーム、マイグレーション)が発生する。おそらく5年程度の一過性需要であり、専門的に請け負うソリューション会社が担当することになる。

 クラウドを見据えた長期継続的なビジネスは、業務特化したソフトウェアを戦略的に据えたSaaS事業やその延長線にあるBPO(Business Process Outsourcing)事業に将来性がある。ただし、このビジネスは、自らのリスクで製品開発とマーケッティングを行ない、市場から認知されることが成功要因となる。ビジネスモデルがまったく違うため、従来のITサービス企業にとって転換はかなり 高いハードルであるが、1つの活路であることは確かである。

 中堅・中小企業向けコンサルテーションビジネスも需要は膨らむと考えられる。クラウド利用を前提としたIT化は、従来のITと比較しては破格の低価格で実現できる。しかし、数あるクラウドソリューションから自社に適合できるソリューションを選択し、かつ組み合わせの整合性を保つことは至難である。経営者や事業責任者と信頼関係を作り、導入企業の業務改革や改善も同時に進めないと成功はおぼつかない。ここにITコンサルタントの存在意義があり、IT技術者のアドバンスドステップとして道が開ける可能性がある

 図2は、クラウド時代に向けてITサービス企業がとるべき選択肢を提示している。赤字はビジネスモデルの特徴であり、企業の体質を特徴に合うように転換する必要がある。クラウドの意義は、誰でも簡単に利用できるIT環境がそろうことである。つまり、コスト的に合わなくてIT化できなかった業務や仕組みが、IT化可能な範囲に入ってくることになる。これを前向きにとらえて新しい事業構造に挑戦することで飛躍の可能性が出てくる。

ITサービス企業のビジネスモデル選択肢

 以上、クラウド時代にIT技術者が活躍できる場面をいくつか紹介してきたが、どれをとっても過去の延長線では生き残れない。いままで経験したIT技術に加えて、思考や行動様式を変える必要があるのだ。この詳細は、次回以降解説する予定である。

カテゴリートップへ

この連載の記事
最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ