タブレット用Lincroftはニーズがなく……
タブレット向けAtomも紹介しておこう。連載の過去記事ではタブレット向けもUMPC向けの一部として紹介しているが、昨今ではタブレット向けプロセッサーでARMベースSoCの性能競争が始まっている。そこにUMPC向けの延長では性能的に苦しくなってきたためか、SKU(Stock Keeping Unit)が異なるようになってきた。
まずタブレット向けAtomとして最初に投入されたのは、LincroftベースのAtom Z600シリーズである。これは2010年5月に発表された製品とは異なり、1.6GHzに1.9GHzと、より高い動作周波数の製品になっている。基本的な構造に変化はないが、動作周波数が高い分TDPが増えるのは致し方なく、最大では4W近くなるという話もある(ただし、インテルは詳細情報を公開していない)。
しかし、このLincroftベースのAtom Z600シリーズは製品の検討や一部試作までは行ったのだが、少なくとも大手メーカーでの採用事例は皆無。やや黒歴史化している状況である。それもあってか32nmプロセスのMedfieldは、まずこのタブレット向けに投入される模様だ。
NVIDIAの「Tegra 2」やクアルコムの「Snapdragon」と比較すると、Lincroftのままでは性能面では見劣りするのは否めないところだ。そのために、ひょっとするとデュアルコア構成が投入される可能性もありそうだ。逆に、タブレット向けの後に投入されるUMPC向けはシングルコアのままか、シングル/デュアルの2種類のSKUになるかもしれない。
2011年末にはMedfieldに切り替わる
ネットブック/ネットトップ向けAtom
次にネットブック/ネットトップ向けAtomのロードマップを見てみよう。まずネットブック向けだが、2008年6月に「Diamondville」こと1.6GHz駆動の「Atom N270」が登場。続く2009年2月にはFSBを533MHzから677MHzに高速化した「Atom N280」が投入された。これらが第1世代の製品にあたる。
これに続き、2009年12月に第2世代製品である「Pineview」こと、「Atom N450」が投入された。2010年3月にはその高速動作版である「Atom N470」も登場した。Atom N400シリーズはGMCHも統合されたほか(GPUはIntel GMA3150)、CPUコアも64bit拡張である「Intel 64」をサポートしたのが大きな違いとなる。
ちなみに、先に述べたAtom Z600シリーズも本来ならばIntel 64をサポートしている「はず」であるが、これについては(公開情報がない理由もあり)確認が取れていない。Pineviewには2010年6月に「Atom N475/N455」が追加されたが、これはクロック向上だけでなく機能も若干改良されていて、DDR3メモリーをサポートしている。
N470/N450のメモリーは、DDR2-677の1チャンネル構成のみだった。それがN475/N455では、DDR3-800もしくはDDR2-800を1チャンネルという構成に切り替わった。これは性能向上というよりも、DDR3メモリーを使うことによる消費電力低減が主要なテーマと思われる。
Pineviewまでの製品は、「熱設計に厳しいネットブック向け」としてシングルコアのみの構成だったが、2010年9月には初のデュアルコア製品である「Atom N550」が投入された。さらについ先日、2011年3月1~5日まで開かれていたドイツの家電総合展示会「CeBIT 2011」では、動作周波数を1.66GHzまで引き上げた「Atom N570」も発表された。
さすがにN570ではTDPも増えて8.5Wとなっている。だが、以前に比べてPC側の排熱許容度も上がっているので、CPU+GMCHで8.5Wは許容範囲となったと考えられる。このネットブック向けも、おそらく2011年末のタイミングで32nmのMedfieldベースになると思われる。
ただしこのネットブック向け(や後述するネットトップ向け)の製品は、同じMedfieldといっても中身が異なるものになりそうだ。相違点はいくつかあるが、最大の違いはGPU。UMPC/タブレット向けのものは引き続きPowerVRベースのGPUを搭載するが、ネットブック/ネットトップ向けは従来のIntel GMAシリーズの改良版を搭載すると見られている。またメモリーに関しても、UMPC/タブレット向けはDDR2もしくはLPDDR1(もしくはLPDDR2)をベースとしたものになる一方で、ネットブック/ネットトップ向けはおそらくDDR3のみのサポートになると見られる。
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