インテルCPUロードマップアップデートの最終回は、Atomファミリーである。Atomのロードマップについては、連載3回と連載57回で説明したが、今回は連載57回のアップデートになる。ただし、今回はプラットフォーム全般の話ではなく、プロセッサーに絞って説明する。
UMPC用としてスタートした
超低消費電力版 Atom Zシリーズ
Atomは現在、大きく分けて5種類(厳密には6種類)のマーケットに投入されている。最初に投入されたのが「UMPC」(Ultra Mobile PC)のマーケットで、「Atom Z」シリーズがこれに相当する。ラインナップは「Atom Z540/Z530/Z520/Z510/Z500」の5製品で、これが2008年4月のことだった。
翌2009年3月には、「Atom Z530P/Z520PT/Z510P/Z510PT」の4製品が追加された。これらはUMPC向けと言うよりも組み込み向けのオプションで、「P」は「Large Form Factor」を意味する。元々のZ500シリーズは13×14mmサイズの「FCBGA 441ball」パッケージを採用していたが、このPシリーズは22×22mmの「FCBGA 437ball」構成になっており、そのためか、TDPも2Wから2.2Wに上がっている。さらに「PT」シリーズは、産業用途向けに温度動作範囲が幅広く(マイナス40~85度)、一般向けAtomの0~70度と区別されている。
これらに加えて2009年4月には、「Atom Z550/515」が登場。さらに2010年5月には、「Atom Z560」が追加された。
UMPC向けAtomの後継製品は、「Lincroft」ベースの「Atom Z600」ファミリーが2010年5月に発表された。ところがプレスリリースはあるのに、インテルの製品検索サイト「ark.intel.com」のデータベースには載っていないという扱いが、この製品の位置付けを表わしている。
実のところ、ark.intel.comはインテルの全製品を網羅しているわけではない。後述する「Atom CE4200」なども掲載されておらず、OEM専用といった扱いの製品は載せない方針のようだ。Z6xxシリーズもこれに該当するようで、ロードマップ表のスペックはおそらく正しいと思うのだが、インテルの公式情報ではない。
このZ600シリーズは第2世代にあたるが、CPUコアそのものは従来のAtom Z500(Silverthorne)シリーズと変わっていない。違いはGPUやメモリーコントローラーなどの、GMCH機能をすべて統合した点にある。また内蔵GPUには「Intel GMA600」という型番が振られているが、中身はARMベースのSoCで多用されている英Imagination Technologiesの「PowerVR SGX535」をベースとしている。ビデオデコーダーも同様で、Imaginationの「PowerVR VXD」をベースとしているようだ。
Z600に続いて2011年末頃を目処に、32nmプロセスを使った次世代のコアである「Medfield」ベースの製品が投入される予定である。
この連載の記事
-
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第756回
PC
RISC-Vにとって最大の競合となるArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第755回
PC
RISC-Vの転機となった中立国への組織移転 RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第754回
PC
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ -
第753回
PC
早期からRISC-Vの開発に着手した中国企業 RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ