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SIの本質を突く金言がちりばめられた勉強会

クラウドはSIから作られる!富士通の考えるSIとは?

2010年12月22日 09時00分更新

文● TECH.ASCII.jp

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12月21日、富士通は「SIビジネス」の勉強会を開催した。富士通のSIビジネスの考え方や既存システムの問題解決、ICTの利活用など幅広い内容が俎上に上がった。

時代で変わるシステムインテグレーション

富士通 テクノロジーサポートグループ システム生産技術本部 本部長の柴田徹氏

 勉強会において富士通 テクノロジーサポートグループ システム生産技術本部 本部長の柴田徹氏は、まず市場概況やSIビジネスの考え方について解説した。富士通のビジネスにおいて、SIを含むITサービスは大きな割合を占めており、調査会社の調べでは売上高ランキングで11年連続国内No.1となっているという。とはいえ、国内での成長は10兆円前後で鈍化を続けている成熟市場であることも認識しているという。

一般的なシステムインテグレーションの定義

 さて、一般的にSIとは、「ハードウェア、ソフトウェアなどを用いてコンピューティングシステムを構築すること。または企業のシステム構築や運用・保守などを一括して請け負うサービス事業」を指す。プロジェクトは企画や要件定義、設計、開発・テストを経て、導入に進み、その後は運用・保守というフェーズに移る。柴田氏は「ソフトウェアとハードウェアの相性は、現在も確実に存在しています。これに対して製品を組み合わせ、安定したシステムとしてお客様に提供するのがSIの本質」(柴田氏)と説明する。

 歴史を振り返ると、1980年代まで定型業務の自動化・効率化を進めるためのメインフレームの時代があり、1990年代にオープン化と部門システム化が進んだ。「メインフレーム時代は、SEは『ハードウェアのおまけ』と言われていた。しかし、1980年代からハードウェアではなく、アプリケーションや機能に価値を見いだすようになってきた」(柴田氏)。そして、現在は低価格・柔軟性を重視したクラウドの時代が到来している。このクラウド登場の背景には、「オープンシステムの時代、コストを削減するためにオペレーションをお客様がやるようになってきた。しかし、現在これが結果として重荷になっており、資産を所有せず、運用管理をアウトソーシングするクラウドが生まれている」という事情があるという。

 富士通がサービスとして提供するソーシング(調達)という観点では、企業競争力の強化を目指す経営者層とコスト削減や効率化を旨とするIT部門との目的のギャップを埋めるという効果があるという。

クラウド時代のシステムインテグレーション

 クラウド時代を迎え、顧客が抱える具体的な課題として、システムが複雑化している部分もある。製品自体や提供形態が多様化し、さまざまな組み合わせが存在しているからだ。これに対して海外のベンダーは足りない製品を買収などで補っているが、富士通ではこうした囲い込みを行なっていないという。柴田氏は「富士通は基本は自社製品を採用し、なければオープンソースソフトウェアや他社製品を組み合わせている。いずれにせよ確実に検証して、お客様に提供している。ですから、富士通のクラウドはバリエーションがある。クラウドはSIから生みだされている」と語る。「クラウドの本質は垂直統合でシステムを一括提供できるというもの。富士通は一貫してこの一括提供を守り続けている」(柴田氏)ということで、まさに製品を組み合わせ、安定したシステムとして提供するSIの本質が、クラウドでも活きていると語った。

クラウドの複雑性を解消する製品とサービス

 そして、柴田氏はこうしたソーシングを支える技術をいくつか例として挙げた。要件定義の精度を向上するため、経営・業務・システムの要件を5階層に分けて整理する「新要件定義手法」や既存システムを見える化と分析評価を行なう「モダニゼーション技法」、導入以降の運用をサポートする「サービスマネジメント」、業務課題を見える化し、解決までつなぐ「フィールド・イノベーション」などの取り組みだ。

 また、既存のアプリケーションを活用しつつ、クラウドにも対応する開発・実行を行なえる「INTARFRM」や、INTARFRMをベースにした開発環境をサービスとして提供する「開発PaaS(仮称)」などの取り組みも披露した。「メインフレームの時代は20年もったツールもありましたが、再びこうした長寿命のアプリケーションを開発できます」(柴田氏)ということ。

INTARFRMによるインフラに依存しないアプリケーション

 インフラ技術はどんどん新しくなっており、今までそのたびにアプリケーションを作り直しが必要であった。これに対して富士通は、最新技術のメリットを享受しながら、今あるモノをうまく活用してビジネスの変化に対応するという。昨今は米国流のアジャイル開発などももてはやされているが、富士通では品質を担保しながら、こうしたスピードを担保するための具体的な施策も進めていくという。

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