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ビジネスサイクルを回す新しいICT人材像も提示

モダナイゼーションの次を描く富士通のSIビジネス

2013年01月18日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月17日、富士通は恒例となっているSIビジネス勉強会を開催し、次世代のSIコンセプトである「トータルサービスマネジメント」について説明した。同社が進めるレガシーシステムのモダナイゼーションの次に何を描くのかが大きなテーマとなった。

モダナイゼーション商談が進まない理由は?

 勉強会において富士通 システムインテグレーション部門 部門長補佐(テクノロジー担当)の柴田徹氏は、まずICTを取り巻く現状と富士通のアプローチを振り返った。

富士通 システムインテグレーション部門 部門長補佐(テクノロジー担当) 柴田 徹氏

 現状、企業は競争力を高めるためにICTを最大限活用する必要があるが、実際は既存資産(レガシーシステム)が重しになっており、昨今のリアルタイム経営やグローバリゼーション、コンシューマライゼーションなどの波に対応できない。柴田氏は、「外資系のベンダーは新しいモノに載せ替えろと言ってますし、実際そういうお客様もいらっしゃいます。でも、動いているモノを捨てることへの『ためらい』もかなりある」と指摘する。

 こうしたレガシーシステムに対して、富士通は「モダナイゼーション」というアプローチを進めている。モダナイゼーションは既存システムシステムの見える化やスリム化などを図るアプローチ。具体的にはアプリケーションの導入状況を市街図のように視覚的に見られる「ソフトウェア地図」、ビジネスに貢献するための投資をマッピングした「ポートフォリオマネジメント」などを展開している。「ソフトウェア地図は日本だと、どうやって出しているのか?という論議になりがち。一方で、グローバルでは、現在欠けている部分や投資が必要な箇所が視覚化できるので、課題がわかりやすく、評価も高い」(柴田氏)という。また、既存資産を保守性の高い開発基盤に移行させる「成長開発」やシステムの品質維持や向上を支援する「ICT投資評価」というアプローチも提供している。

見える化とスリム化を軸にしたモダナイゼーション

 では、こうしたレガシーシステムに対するアプローチや、それを展開するための仮説は正しかったのか? 柴田氏は、「モダナイゼーションの商談は年間約400件あり、活況といえるが、実際に提案まで至ったのが約10%に過ぎない。このギャップはなにかを考えた」と語る。

昨年の仮説は果たして正しかったのだろうか?

 調査によると、日本は特に既存ICTへの投資がイノベーションではなく、運用管理に回っており、割合も他国に比べかなり高い比率を占めている。とはいえ、モダナイゼーションで運用コストを下げただけでは、経営陣からはコストにしか見えない。そのため、成長戦略にひも付くICT活用を明確しなければならないことに行き当たったという。これに対して、運用コストの削減から生まれたICT予算を成長戦略を実現するためのイノベーションに当て、企業の競争力を強化していくのが、今後の同社のSIビジネスの戦略になるという。「モダナイゼーションの先になにがあるのかを説明し、イノベーションのイメージをお客様と共有する」(柴田氏)というわけだ。

モダナイゼーションの先のイノベーションをユーザーと共有する必要がある

新しい利用を支えるトータルマネジメント

 続いて柴田氏が説明したのが、これからのSIビジネスと富士通の取り組みだ。従来、SIではハードウェアやアプリケーション、ドキュメントなどの「モノ」と、「モノ」を使って効果を生み出す「運用」や「利用」を指す「コト」を価値として提供してきたという。しかし、スマートフォンやクラウドの普及、オープン化の浸透などにより、ICTの「新しい利用」が求められるようになってきた。

これからのICTが提供する価値

 この「新しい利用」を実現するには、今までのように顧客からの要件待ちでシステム化を進めるのではなく、顧客の漠然とした要求自体を明確にし、ビジネスサイクル自体を支える「イノベーションオリエンテッド」の活動が必要になる。これを元にすると、システムの運用効率化やコスト削減に加え、成長戦略までを含めたトータルのマネジメントが求められるようになるという。柴田氏は「今後は業務部門もICTに向き合い、ベンダーがそれをトータルで支える。ビジネスサイクルとシステム構築サイクルを継続的に回し、情報システム部が企画や評価を担当する」という新しい顧客とベンダーの関係が必要になると指摘した。これを実現する新しいSIビジネスのコンセプトが、同日付で発表された「トータルサービスマネジメント」になる。

顧客とベンダーの新しい関係

 あわせて披露されたのが、こうした新しいSIビジネスを支える種類の人材だ。以下のとおり、今までのコンサルタント、マネージャー、アーキテクトという人材像(ロール)に加え、プロデューサー、イノベーター、インテグレーターの3種類の人材像を定義し、ビジネスサイクルを強化する。こうした新しい役割を担う人材を富士通では2015年度末までに約5000人育成するという。

新しいSIビジネスを支える種類の人材とロール

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