テレビの専制君主もアップルとグーグルになるか?
そして、最後のセッションは、Google TVとApple TVについて。情報通信総合研究所の志村一隆氏と、スタイルの代表取締役 竹田 茂氏が登壇した。
志村氏によると、アメリカでは大手テレビネットワークが動画配信サービス「Hulu」で、放送の翌日にネット配信することをやっているが、広告単価は同じコンテンツでもテレビ放送なら10万ドル(約840万円)なのが、Huluだとわずか35ドル(約3000円)。これまでは高単価でビジネスをやっていたのが、ネットではそれができなくなると指摘。竹田氏も、テレビCMの制作費も下がっており、みんなが“ビンボー”になるスパイラルなのかもしれないと語った。
志村氏は、プレミアムなコンテンツを出す場所として、いまのところ一番良いのはAppleTVだと見ている。Apple TVは適度にクローズドな環境で、ユーザーはお金も払ってくれるからだ。ただ、現状のApple TVは外付けのSTBだが、Google TV同様いずれはテレビ側に内蔵されるようになるであろうこと、そしてApple TVはコンテンツ系、Google TVは広告系の、それぞれ「専制君主的な存在」になるだろうと予測。
現状のGoogle TVは大手テレビネットワークから嫌悪されているが、この状況はすぐに変わるだろうと語る。
志村 アメリカの電気店に行くと、普通にGoogle TVが販売されていて、しかも安い。現在のところ、3大ネットワークはコンテンツを提供していないが、これはよくあるテクノロジーとハリウッドの争いと同じだ。最初はプレッシャーをかけるけれど、水面下では交渉し、後日配信権を設定して商売するかたちだろう。来夏にはGoogle TVでHuluが見られるようになるのではないか。
もっとも、Google TVだけでなく、サムスンやLGもネットTVを展開しており、ネット検索やテレビ画面上のアプリ展開も、アメリカでいま販売されているテレビでは普通の話になっているという。
一方で、Google TVがこれから流行るという志村氏の考えに対し、竹田氏は「おそらく流行らない。ユーザーに、アナタは何もしなくていいというサービスのほうが良くて、番組を検索して探すなど、アクティブに操作しなければいけないのは面倒だ」と回答。YouTubeも始めた「Leanback」(YouTube側で選んだ動画を連続して再生するサービス、紹介動画)のようなものが理想だと語った。
3つのセッションを終えて、増井氏は最後に、MEDIVERSEで、メディア的なビジネスの立ち上げをサポートする、あるいは包括的に勉強できる場を提供し、そして問題意識を共有する参加者によるコミュニティを作っていきたいという抱負を語った。
MEDIVERSEのカリキュラムは、座学やレポート、ワークショップ、ディスカッションなど、多様な形態で構成され、単なるメディア議論や技術研究ではない、実践的なものとなるという。今後の活動の詳細については、公式サイトに随時掲載していく予定だ。