「メディア維新をいく」アニメ編をはじめたばかりだが、8月13日の第10回記事で紹介したように、9月10日のイベント「mixi meetup 2010」において、mixiはフルオープン化を発表した。メディアを語る際、この変化を無視して進める訳にはいかない。今回は、一度立ち止まってネットメディアの勢力図や未来を考えてみたい。
ユーザー数が5億人を突破したとされるFacebook。北米のみならず、世界中にそのシェアを拡げているSNS(ソーシャルネットワークサービス)だ。国内では2000万ユーザーを抱えるmixiもその影響からは逃れられない。
「Web 2.0」や「クラウド」といったいわゆるバズワード(明確な定義のない専門用語)の次の打席に立ちそうなのが「ソーシャル」。
ソーシャルと言われてまず思いつくSNSだが、Twitterのようなリアルタイムコミュニケーション型のものや、Foursquareに代表される位置情報と組み合わせたサービス、そして共同購入型のGROUPONなど、その範囲は拡がり続けている。
しかしソーシャルという言葉の定義はとても曖昧だ。ユーザー同士の交流を基盤とするサービスをソーシャルと呼ぶのであれば、1999年開始の2ちゃんねる、2006年開始のニコニコ動画を外すわけにはいかない、ソーシャルグラフ(ユーザー同士のつながり・関係)自体の活用は、今よりずっと以前から始まっていたといえる。
では、今このタイミングでソーシャル分野が急に注目を浴びたのは何故なのだろうか? それはいわゆるオープン化、技術的にいえばAPI(Application Programming Interface)の公開に本質がある。それによってサービス間同士の連携が急速に進んでいるからだ。それは以前紹介したYahoo! JAPANのオープンネットワークともなぞらえることもできる。
mixiが発表したフルオープン化とは?
Twitterが急速に利用者数を拡げた要因の一つに、APIの柔軟な公開ポリシーが挙げられる。Twitterのデータベースを一定のルールのもと外部から利用できるため、開発者は様々なクライアントソフトや連携サービスを作り、利用者は自分好みのものを選択することができる。
Twitter社自身がユーザー向けの様々なサービスを作らなくとも良く、システムそのものの品質向上に専念できるというメリットもある。
編註:ただし、5月にTwitter社はサードパーティのクライアントソフトTweetieを買収し、公式Twitterクライアントソフトとしてリメイクした。9月15日には公式サイトのUI強化も図っており、サードパーティ優遇策には変化もみられる。
mixiが発表したのも、このAPIの拡充と公開範囲の拡大だ。
これまでもmixiは「mixiアプリ」の仕組みを提供してきた。これは、主にゲームの開発者に対してmixiのソーシャルグラフが格納されたデータベースへのアクセスを2008年から認めるものだ。
mixiアプリの開発者はmixiユーザーがマイミクを招待したり、ゲーム内の更新情報を「mixiボイス」と呼ばれるTwitter的なサービスに自動投稿できた。
さらに今回、mixi Graph APIと名付けられたAPI群を活用することで、ゲームだけでなく、mixi以外のウェブサービスやスマートフォン、家電などでもmixiのソーシャルグラフを活用することができるようになった。
同時に、最近日本でも目にすることの多くなったFacebookの「いいね!(Like!)」ボタンに準ずる「mixiチェック」ボタンをプラグインとして提供することも明らかになった。
Facebookのいいね!ボタンは、その名の通りユーザーが今見ているページコンテンツを気に入った場合にクリックする。そうするとFacebookのソーシャルグラフを元に、他にも同じコンテンツを気に入ったユーザーが分かる。実際の友人・知人関係を越えて、同じものに「共感」したユーザー同士がつながっていくのだ。
この仕組みはSNSをビジネスに活用したい企業にも役立つ。自社のブランドコンテンツ、例えばキャンペーンサイトに共感してくれたユーザーが、ひとつの場所(コミュニティー)に集まっており、その反応を確認したり、企業からのメッセージを届けられるようになるからだ。
新たに設けられたmixiのチェックボタンも、これと同じような狙いがある。ボタンをクリックすることで、その情報が集積され、マイミクも更新情報を共有できる。mixiの原田明典副社長は、「(mixi以外の)ウェブをソーシャル化する」機能と説明している。
FacebookがAPIを一般公開したのが2008年なので、これに遅れること約2年、ようやく2000万ユーザーを擁する日本最大のSNSが動き始めた、という印象だ。TwitterのAPIも取り込むことで、ほぼTwitterと一体化した感のあるFacebookは、Twitter人気が高い日本市場でもその存在感を徐々に増しつつある。果たしてその進出に対抗できるのだろうか?
他サービスとの連携と、後述するオープン化の第2段階がその鍵を握る。
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