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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第13回

激震ネットメディア。その現状を「再び」俯瞰する。

mixiはFacebookの日本侵攻を食い止められるか?

2010年09月24日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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「メディア維新をいく」アニメ編をはじめたばかりだが、8月13日の第10回記事で紹介したように、9月10日のイベント「mixi meetup 2010」において、mixiはフルオープン化を発表した。メディアを語る際、この変化を無視して進める訳にはいかない。今回は、一度立ち止まってネットメディアの勢力図や未来を考えてみたい。

 ユーザー数が5億人を突破したとされるFacebook。北米のみならず、世界中にそのシェアを拡げているSNS(ソーシャルネットワークサービス)だ。国内では2000万ユーザーを抱えるmixiもその影響からは逃れられない。

 「Web 2.0」や「クラウド」といったいわゆるバズワード(明確な定義のない専門用語)の次の打席に立ちそうなのが「ソーシャル」。

 ソーシャルと言われてまず思いつくSNSだが、Twitterのようなリアルタイムコミュニケーション型のものや、Foursquareに代表される位置情報と組み合わせたサービス、そして共同購入型のGROUPONなど、その範囲は拡がり続けている。

創業から2年で売上200億円に達したとされるGROUPON。日本の同種サービスQpodを買収し、日本法人も設立する

 しかしソーシャルという言葉の定義はとても曖昧だ。ユーザー同士の交流を基盤とするサービスをソーシャルと呼ぶのであれば、1999年開始の2ちゃんねる、2006年開始のニコニコ動画を外すわけにはいかない、ソーシャルグラフ(ユーザー同士のつながり・関係)自体の活用は、今よりずっと以前から始まっていたといえる。

 では、今このタイミングでソーシャル分野が急に注目を浴びたのは何故なのだろうか? それはいわゆるオープン化、技術的にいえばAPI(Application Programming Interface)の公開に本質がある。それによってサービス間同士の連携が急速に進んでいるからだ。それは以前紹介したYahoo! JAPANのオープンネットワークともなぞらえることもできる。

mixiが発表したフルオープン化とは?

 Twitterが急速に利用者数を拡げた要因の一つに、APIの柔軟な公開ポリシーが挙げられる。Twitterのデータベースを一定のルールのもと外部から利用できるため、開発者は様々なクライアントソフトや連携サービスを作り、利用者は自分好みのものを選択することができる。

Twitterのつぶやきを後からまとめることができる「Togetter」もTwitter APIを利用することで実現されている

 Twitter社自身がユーザー向けの様々なサービスを作らなくとも良く、システムそのものの品質向上に専念できるというメリットもある。

編註:ただし、5月にTwitter社はサードパーティのクライアントソフトTweetieを買収し、公式Twitterクライアントソフトとしてリメイクした。9月15日には公式サイトのUI強化も図っており、サードパーティ優遇策には変化もみられる。

mixiのオープン化を発表する原田明典副社長

 mixiが発表したのも、このAPIの拡充と公開範囲の拡大だ。

 これまでもmixiは「mixiアプリ」の仕組みを提供してきた。これは、主にゲームの開発者に対してmixiのソーシャルグラフが格納されたデータベースへのアクセスを2008年から認めるものだ。

 mixiアプリの開発者はmixiユーザーがマイミクを招待したり、ゲーム内の更新情報を「mixiボイス」と呼ばれるTwitter的なサービスに自動投稿できた。

 さらに今回、mixi Graph APIと名付けられたAPI群を活用することで、ゲームだけでなく、mixi以外のウェブサービスやスマートフォン、家電などでもmixiのソーシャルグラフを活用することができるようになった。

公開されたAPI群。グループなどのソーシャルグラフ情報や、mixiユーザーをメールアドレスで検索したり、mixiボイスなどの更新情報を外部から利用できる

 同時に、最近日本でも目にすることの多くなったFacebookの「いいね!(Like!)」ボタンに準ずる「mixiチェック」ボタンをプラグインとして提供することも明らかになった。

 Facebookのいいね!ボタンは、その名の通りユーザーが今見ているページコンテンツを気に入った場合にクリックする。そうするとFacebookのソーシャルグラフを元に、他にも同じコンテンツを気に入ったユーザーが分かる。実際の友人・知人関係を越えて、同じものに「共感」したユーザー同士がつながっていくのだ。

 この仕組みはSNSをビジネスに活用したい企業にも役立つ。自社のブランドコンテンツ、例えばキャンペーンサイトに共感してくれたユーザーが、ひとつの場所(コミュニティー)に集まっており、その反応を確認したり、企業からのメッセージを届けられるようになるからだ。

 新たに設けられたmixiのチェックボタンも、これと同じような狙いがある。ボタンをクリックすることで、その情報が集積され、マイミクも更新情報を共有できる。mixiの原田明典副社長は、「(mixi以外の)ウェブをソーシャル化する」機能と説明している。

mixiチェック画面。mixiチェックに対応した外部サイトのボタンを押すとここに集約される

 FacebookがAPIを一般公開したのが2008年なので、これに遅れること約2年、ようやく2000万ユーザーを擁する日本最大のSNSが動き始めた、という印象だ。TwitterのAPIも取り込むことで、ほぼTwitterと一体化した感のあるFacebookは、Twitter人気が高い日本市場でもその存在感を徐々に増しつつある。果たしてその進出に対抗できるのだろうか?

 他サービスとの連携と、後述するオープン化の第2段階がその鍵を握る。

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