自民党が2026年4月23日、「AIホワイトペーパー2.0」という文書を公表した。
このホワイトペーパーは、AIに関連する政策提言を取りまとめた文書だ。策定したのは、自民党の「デジタル社会推進本部AI・web3少委員会」という会議体だ。23日の朝日新聞は、「5月にも政府に提出する」と書いているので、自民党としてはまだ、正式には提言をしていない段階に当たる。
米国によるイラン攻撃では、有力な生成AIのひとつClaudeが、攻撃目標の選定をはじめ国家間の軍事行動にフル活用されている。Claudeの新しいモデルMythosは、主要なOSやブラウザ、アプリケーションの未知のぜい弱性を発見したとされ、Craudeを開発・提供しているアンスロピック(Anthropic)社はMythosの一般公開を見送り、一部の大手IT企業や大手セキュリティ企業などに限定公開した。有力なAIを有効に活用できるか否かが国家の浮沈を左右することが明確になってきたタイミングで、与党がどのような政策を提言するかは、極めて重要だ。
日本のAI基盤は米国に握られている
ホワイトペーパーを通読して、強く印象に残るのは、与党の危機感の強さだ。「AI主権」について論じる項目では、「AI 駆動型国家を自律的に運営するためには、その基盤を他国に握られてはならない」と書いている。この記述の前提状況を確認してみると、おもに、ChatGPT、Gemini、Claudeなどの有力AIで米国が先行し、DeepSeekやQwenなどのモデルで中国が激しく追い上げている。欧州では、フランスのMistralやドイツのAleph Alphaといったモデルがあるが、現時点では精度で米中のモデルには及ばない。この他、日本や韓国、中東諸国は自国の言葉に強いモデルなどの開発を進めている。フランスのMistralあたりはいい味を出しているようだが、開発の予算規模や精度などを比較すると、現時点では米中2強とその他ということになる。当然、日本はその他のグループに入るし、いまのところ、日本の基盤は米国が握っていると考えるのが妥当だろう。
この現状認識を踏まえ、どのような政策を打ち出しているのだろうか。ホワイトペーパーを理解するうえで、重要なキーワードは「主権(ソブリン)AI」と「AI主権」という言葉だろう。AIが前か後ろかがちがうだけで、「同じやないかい」と思うかもしれない。しかし、ホワイトペーパーは、ソブリンAIとAI主権を別の言葉として定義している。ソブリンAIは、おおまかに説明すると、次のような言葉だ。米国や中国のAIに依存し続ければ、AIに提供された情報は、米国や中国の企業が握ることになる。また、国際情勢の変化で、米国や中国との関係が悪化すれば、優れたモデルの利用ができなくなる可能性もある。こうした事態を避けるために、可能な限り、国産化を進めておこう。これが、ソブリンAIという考え方だ。
バーティカルAIを推す自民党
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