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こだわり機器を聞く、最上の試聴室めぐり 第4回

ヤマハ試聴室で体験した、ネットワークオーディオ

NP-S2000が切り拓く、高音質再生の地平 (5/5)

2010年12月02日 11時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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LANケーブルで音が変わる……?

 デモの最後に安井氏は、3本のLANケーブルを取り出した。ネットワークオーディオが話題になる中、オーディオグレードを謳った高級LANケーブルなる製品が登場している。その音質の差を体験してみようと言うのだ。

 LANケーブルで音が変わる。そう聴いて本当に差が出るのかどうかは半信半疑であった。パソコン用のLANケーブルは、通常1メートル数百円程度で入手できるもの。対するオーディオ用のLANケーブルは、比較的安価なものでも1メートル1.5万円程度。数万円以上になるものもあるのだから、しっかりとした裏付けがなければとても導入する気にはならない。

 少なくとも、LANケーブルを変えたところで、伝送されるデータそのものに違いは出ない。読み込み(CU)エラーで情報が間引きされるCDや、同期のズレがジッターの原因になるSPDI/Fなどとは本質的に異なる部分で、ここがネットワークプレーヤーの売りであるハズだ。ならばなぜ音に差が出るのか。理屈としてはいま一つ受け入れがたい。

試聴したLANケーブルは4本。紫色のケーブルがエイム電子、黒の極太ケーブルがTIGLONのもの。水色のケーブルはよく使われているごく普通のLANケーブル

 とはいえあまりない機会ではある。用意された3本のケーブルは、エイム電子製の「SHIELDIO」1.8万円/m)、TIGLON製の「MGL-1000L」(同4.2万円)と、ごく一般的なLANケーブル。ルーター(のハブ)とネットワークプレーヤー間のケーブルを差し替えながら、ピアノソロ楽曲を聞いた。

 3種類のケーブルを聴いて、まず驚く。そして、猜疑心の強い筆者は同じ順番でもう一度聴き直したいと要望をする。不思議なことに印象は変わらない。確かに差を感じるのだ。1本目(エイム電子)と3本目は近い傾向だが、1本目のほうがより見通しがよい。2本目(TIGLON)はほかとは異質で、少し霞がかかったような雰囲気。質感にかなり特徴がある。

 後で聞くと、取材に同席していた人間も筆者と近い印象を持ったことが分かった。

 安井氏によると、LANケーブルの電磁波ノイズへの耐性、端子部分の圧着制度、コネクター接続時のガタツキや噛み合わせなどによって、音質に差が出てくるのだと言う。伝送途中でデジタルのデータが抜け落ちるということはあまり考えられないから、アナログ回路に何らかの影響が出ると言うことなのだろうか!?

 いずれにしても、パソコンやネットワークで培われた技術の延長線上にある製品であるにもかかわらず、慣れ親しんだパソコンでは意識したことのない、オーディオ的な繊細さが影響するとは……。異なる地平があることを、首をかしげつつも認識せざるを得ない、なんとも不思議な気分であった。

 ヤマハの試聴室で聴いたNP-S2000は、ネットワークオーディオという製品の立ち位置を改めて考えさせる、貴重な経験を提供してくれた。

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