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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第41回

1万人が見た、CD全曲録音――USTレコーディングの挑戦

2010年12月11日 12時00分更新

文● 四本淑三

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DSDはunsuspected monogram向き?

―― これDSD(Direct Stream Digital形式)でも配信されるんですが(OTOTOY.jp)、ProToolsとは別系統で録ったんですか?

佐久間 ううん。マスターがDSDなの。今まで僕はマスターにハーフインチ(アナログテープ)を使っていたんだけど、その方がProToolsでやるより音がいいからね。だけど、そろそろハーフインチも使えなくなってくる。そうすると現状、DSDが圧倒的にいい。

―― あの、先生!

佐久間 はい、なんでしょう。

―― 元がPCMでも、DSDがマスターなら、そんなに音は違うものですか?

佐久間 比べたのね、2496(24bit/96kHz)で録ったものと、DSDで録ったものを、同じコルグの1U(ワンユニット)レコーダーで。やっぱりDSDの方がなめらかで綺麗だよね。

コルグの1Uレコーダー「KORG MR-2000S」(価格は24万8000円)

―― つまりDSDで買うと、2496の音が、そのまま聴けるということ?

佐久間 そうそう。PCMの2496で配信しても良かったんだけど、あんまり需要ないみたいで。だったらDSDの方がいいやって。小野誠彦の言葉を借りれば「コンソールアウトの音をそのまま録れるのがDSD」。僕らがコンソールで聴いている音が、そのままお茶の間に届けられると。CDは途中でいろいろ変換しちゃうんで、やっぱり音が劣化してしまう。

―― DSDは小さなシステムでも充分に音はいいですからね。

佐久間 そういえば小野くんがDSDレコーダーを持ってアマゾンに行ってきたって話をしてたよ。

―― アマゾンってアメリカにあるAmazonじゃなくて?

佐久間 ははは。本物のアマゾンだよ! そこの原住民の人たちがいるところで、いろいろ録ってきたらしいんだけど。ってこんな話してていいの?

―― いいです先生、面白いから。

佐久間 向こうの人たちは、ほんの小さなカサカサっていう音で、身の危険を察知したりできるっていうの。手前で大きな音がしていても、後ろで小さな音を聴き分けたりする。例えばアフリカに住んでいる人は、すごく遠くまで見えちゃうって言うでしょ。あれと同じことで、生活の必要から来る耳の良さを持っているらしい。

―― 生きていくために高い聴力が必要なんだ。

佐久間 それで小野くんも録ってきた音を何度も何度も聴いていたら、何分何秒のところで、カサっと鳴っているのが分かるようになったって。PCMだと消えちゃって分からないって。身の危険を察知する気配のようなものまで録れるのがDSDだって。

―― それはすごいなあ。

佐久間 もうひとつ、彼は面白いことを言っていて、毎年同じ場所、同じ時期に行ってフィールドレコーディングすると、種が滅んでいくのが分かるはずだと。

―― ああ、特定の鳴き声が聞こえなくなるとか……。

佐久間 録音という技術は、実はそういうことじゃないかって。

―― じゃあ演奏が上手いバンドというのはアドバンテージになるわけですよね。DSDで一発録りができれば、ほかよりいい音で録れるわけでしょ?

中崎 でもロックに向かないってよく言われるんですけどね。

―― そんな定説みたいなものが、もうあるんですか?

佐久間 僕はそうは思わないけどね。音が良ければ、それに越したことはないし、何に向いている向いてないもないでしょ。

中崎 だって、より生演奏に近づくわけですから。

―― つまりライブの演奏力が高いバンドに有利なわけで。すると今回のレコーディングの経験も無駄にならないし、unsuspected monogramにとって都合のいい状況に。

中崎 そうですよー。

佐久間 よし、上手くまとまりました。今日はありがとう。

―― はい、こちらこそ。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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