「押し入れの奥から見知らぬ古いアルバムを引っ張り出したら、色あせたお祖父さまの写真が出てきた」なんてのは、わりとアチコチで聞くお話しだ。山高帽をかぶってステッキを持った爺ちゃんの写真は、たいてい四隅がちびてボロボロだったりする。
かつてはモノクロだった写真が、時と共に黒い部分が色あせて褐色に、白い部分は日に焼けてやはり褐色になっている。そんな写真を見た時、”レトロなセピアカラーの写真”という表現になる。「セピア」は、時代の風情を現わす言葉としても定着しているが、セピアカラーの”セピア”とは、本来は海に住むイカが吹き出す真っ黒な「イカ墨」を指す言葉だ。
古代人をはじめ昭和初期の日本人にとっては、イカ墨の加工品をインクとして使い文字を書くことはそれほど特異なことではなかった。実は現代においても、自給自足でイカ墨原料のインクを作っているマニアックな方がいる。「黒に近い褐色」のイカ墨は耐光性や耐水性に優れ、天然物であるがゆえに不純物も少なく、デリケートな構造の万年筆に非常に優しい存在であったのだろう。
丸善の復刻版「アテナインキ(セピア)」
衝動買い文具でいろいろお世話になっている日本橋の「丸善」が、昨年創業140周年を迎えた。そしてその記念商品として、夏目漱石へのオマージュを込めた2種類の限定版万年筆「携帯版・漱石」と「漱石」のそれぞれに、大正初期のアテナインキ(ボトル入り復刻版)、「万年筆物語」として同社が販売している原稿用紙を3点セットにして予約販売した。
景気が悪いとかナンとか言っても限定商品という言葉は魅力に溢れているらしく、「携帯版・漱石」のキット(価格7万3500円/50セット)と、「漱石」のキット(147万円/3セット)の合計53セットは瞬く間に完売したらしい。今回、筆者が丸善の日本橋本店地下で衝動買いした「アテナインキ(セピア)」(イカ墨原料ではなくイカ墨色のインク)は、その限定記念キットに含まれていたインクボトルとまったく同じ商品を、限定1000個で再販売したものだ。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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