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白組に聞く、ホンモノを生み出す制作環境

もやしもん支えた、デルのハードウェア

2010年11月17日 09時00分更新

文● TECH.ASCII.jp編集部

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カクカクした3Dモデルを柔らかく見せる

 ドラマ・もやしもんにおける「実写とCGの融合」。多くの人がまず最初に、コミカルな菌のキャラクターや、菌が登場する際に多用される特殊なエフェクトなどを思い浮かべるだろう。

3D制作では、まず初めにキャラクターの骨組みを作り(モデリング)、その上に画像で模様(テクスチャー)を貼り付け、反射率や拡散率など質感に影響する数値を設定。光源や動きを決める。ただし、これだけでは人工的な雰囲気が出てしまうので、自然さやリアルさを出すためのノウハウが必要になる

 かわいい菌の表現は、もちろんドラマの肝になる部分だ。最近では、実写およびアニメーション作品を問わず、積極的に活用されている3DCGだが、子供向けのアニメ作品を見ていた娘がポツリとつぶやいた発言を聴いて、岩本監督はハッとさせられたという。これまでの2D制作からフル3Dの制作に切り替わったキャラクターを見て「カチカチになった」と表現したのだという。

撮影時には、菌の位置を決めるためのマーカーを持って演技している

 CGで菌のかわいらしさをどう表現するか。そのために必要なのは人間の肌の様な質感の工夫自然で柔らかな動きであると考えた。特に動きについては、3Dモデルの可動部分(リグ)を動かす際にフレックスでダンピングする機能を取り入れている。例えば、菌が頭を大きく振れば、角の部分が反動で激しく揺れる。こうした動きを計算で求め、柔らな印象を与えるようにした。

菌が滝のように流れてくる映像の撮影風景。グリーンバックで撮影した部分にCGを重ねている

 また、もやしもんでは、大量の菌を含んだ空気が、滝のように流れ込んでくる表現も多用されている。こういった動き(流体表現)は物理シュミレーションを利用したほうがリアリティーがあるという。菌が大量に発生しているシーンでは、1つ1つモデルをおくことは難しい。そこで小さいものはパーティクル処理で疑似的に粒子を表現すると言った調整を加えたりもしている。

 岩本監督は、物理演算処理は高い可能性を持っていると話す。しかしその実現には十分なマシンスペックが必要だ。作成した動きをリアルタイムでチェックしていくためには豊富なCPUパワーやメモリーが必要である。高性能なワークステーションやレンダリングサーバーへの要求は止まるところを知らない。


実写のリアリティーを高めるためにも活用

 ドラマ・もやしもんでは、菌の表現だけでなく、実写のリアリティーを高める目的でも3DCGやVFXが活用されている。

ドラマの映像から。桜が満開に咲き誇っているように見えるが……

 その一例と言えるのが、農業大学に入学したばかりの主人公が歩くキャンパスの風景(第1話)。キャンパスには満開の桜が咲き、新生活の始まりを感じさせる。しかし、このキャンパスのロケが実際に行われたのは1月だった。当然のように咲いた桜を撮ることは不可能な状況である。

 この咲き誇っている桜。実はCGで後から足されたものである。枯れ木に桜に花を咲かせるというと、まるで昔話に出てくる奇跡のようだが、その奇跡をデジタルの力で実現するのが白組だ。

 桜の3Dモデルを作成し、実写と同じカメラワークで動かし、映像の上にプロットしていくという手の込んだ処理によって実現されている。

桜をAdobe After Effects上で合成している画面。人物の前に桜が表示されているが、ここにはマスク処理を施し、人物が前にいるように見せる

 桜の3Dモデルは3dsMaxで作成した。実写映像からカメラアングルの変化を導き出し、同じ角度からモデルを見ている。かなり長いシーンで、映像の尺としては1400フレームほどある。実写との間にちょっとした動きのズレがあった場合でも、映像に違和感が生じるため、人間の手で細かに調整する作業も必要になる。

 3Dモデルと実写の合成には、Adobe After Effectsが使われている。モーショントラッキングで映像を追いかけ、その上に桜の木を置く。もちろん単に重ねればいいと言うわけではない。実写映像にはレンズの色収差(輪郭部分の色ずれ)などが生じるため、色ごとに微妙に位置をズラして画面になじませるといった細かな処理も加えた。また、桜の上に人物が被る場合にはマスク処理で調整する。クリエイター(アーチスト)は、これを何度もプレビューしながら、自然な動きになっているかを確認していく。

セットを組むことが難しいケースでは、写真のように大型の樽をCGで表現してしまう場合もある。非常に狭いスペースでのロケだが、合成を前提にすることで、樽を中心に回り込むようなカメラアングルが表現できた。どのような映像にするかをCGありきで考えて、演技や撮影プランを事前にシミュレートしていくのが大切だという

 コンポジット処理のために、こうしたレイヤーを重ねて行くと当然のようにデータ量が増える。リアルタイムに近い形で再生するためにはRAID構成にした高速なストレージや大きなバッファメモリーが必須になると岩本監督は話す。

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