このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

米DreamWorksを支える、かなりスゴイ制作環境

2010年03月31日 17時21分更新

文● ASCII.jp編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

How To Train Your Dragon™, ©2010 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

 先週23~25日に渡って米国で開催された米ヒューレット・パッカード(HP)社のワークステーション発表会。2日目に訪問したのはHPと長きに渡って協業体制を敷き、数多くの3Dアニメーションを世の中にリリースしているDreamWorks Animationだ。

 同社は現在2年に5本のペースで3D上映に対応したアニメーション作品を発表しているが、会場では上映間近の新作映画「How to Train Your Dragon」(邦題:ヒックとドラゴン)の試写に加え、作品がいかにして生まれたかの解説も行われた。


How to Train Your Dragonとは

 日本でも話題作『アバター』の上映や、3Dテレビの商品化などによって一躍脚光を集めている3D映画だが、DreamWorksは、シュレックやカンフーパンダなど数年前の作品から、立体映像に取り組んでおり、新作はすべて3D映画として制作するという力の入れようだ。

 筆者は3D映画に多少偏見があり、これまでリアリティーというよりはアトラクションという意味合いが近いものという理解をしていた。

 しかし実際に上映された作品のクオリティーの高さに触れ、その認識がかなり外れているという感想を持った。細かい部分まで配慮の行き届いた映像の質感や遠近感に驚き、作品の世界に没入するような不思議な感覚を覚えたのだ。

ヒックは、傷ついた珍しい黒い火竜トーレスンスと友達となる。How To Train Your Dragon™, ©2010 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

 How to Train Your Dragonは、ドラゴンの脅威に日々悩まされているバイキングの村が舞台。主人公の少年ヒックは、ある時、村の近くで手負いになり、身動きが取れなくなったドラゴンに出会う。そのドラゴンとの交流を通じて、人間とドラゴンの間に絆が生じ、ヒックも成長していくというある意味正統派的なストーリーだ。

ジェフリー・カッツェンバーグ氏。DreamWorksの共同創業者のひとり。ニンテンドーDSなどにも触れながら、3Dディスプレーとコンテンツの将来について語った

 DreamWorksはこの映画の制作のために、5年の歳月(元となるストーリーに出会い着想を得た時点にさかのぼると7年)を費やしており、アニメーションそのものの制作(レンダリング)には約18ヵ月をかけた。

 DreamWorksのアニメ制作では、まず最初に企画を固めるプロモーションの段階があり、ストーリーボード(絵コンテ)を制作。音声に関してはプレスコ方式(先に声優の音声を収録)をとっており、ストーリーボードに基づいたレイアウトとキャラクターの動きを作成し、それと並行する形で背景などの制作を行う。これらを最終的にまとめ、ライトニング(照明処理)など仕上げの処理を行って作品が完成する。

 作品を構成するうえで最もこだわった点は、質感の表現だという。人の肌や髪の毛などのテクスチャーは力を入れて制作している。また、作品の雰囲気を演出するという意味ではライトニング処理も重要だ。この部分にはレンダリングファームでデータをどう取り扱い、負荷分散をどう行うかといった要素が問われる。

3Dアニメーションでは、まずベースとなるモデルを作成し、動きを付けるためのリギング処理を行う。その上にテクスチャーを貼るが、その質感にはかなりこだわったようだ

 ハリウッドでは年間500本の映画が制作されるというが、収益性を高め、確実なヒットを得ていくためには生産性の向上が重要だ。そのためにDreamWorksはITを積極的に活用している。

 例えば、キャラクターの動きに関しては、まず最初に稼働型フィギュアのように関節を持った骨組みを作成するチームがあり、アニメーターがそこでできたモデルをどのように動かし、演技させるかを決め、カメラワークを作る。そのためのシステムには、RedHat Linux上で動作するインハウスの制作ツールが使われている。

DreamWorksで使われているインハウスのツール

 実際にデモンストレーションが行われたが、非常に良くできたツールで画面の右上にカメラのアングルを反映した最終的な出力、左下にマウスのドラッグ&ドロップで稼働できるキャラクターのオブジェ、そして左半分にタイムラインに沿って各関節のパラメーターの変化が一覧表示できる折れ線グラフが用意されている。

 キャラクターの関節の数は、シュレックを制作したときには500ほどだったが、今回の作品ではメインとなるドラゴンで2500。さらに複雑な動きをする双頭のドラゴンでは実に4800と飛躍的に増えた。複雑な計算処理が必要になるが、リアルタイムに結果が表示され非常に軽快に動作している印象だった。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ