中小企業はあってもベンチャーがない
日本振興銀行が破綻し、初めてのペイオフが行なわれた。この直接のきっかけは、銀行法違反(検査忌避)で強制捜査を受け、木村 剛元会長ら役員が逮捕されたことだが、振興銀の経営については以前から問題を指摘する声があった。「貸し渋り」で困っている中小企業にミドルリスク・ミドルリターンで融資して日本を元気にするというビジネスが、目算どおりいかなかったからだ。
このビジネスモデルは、木村元会長が竹中平蔵金融担当相のチームに入った2000年代初頭には意味があったかもしれない。当時はどこの銀行も巨額の不良債権に苦しんで融資を絞っていたので、そういう「負の遺産」をもたない新銀行には強みがあった。しかし不良債権の処理が山を越して銀行が中小企業融資を増やすようになってからは、優良企業は銀行から借りるので、振興銀で借りるのは銀行から借りられないハイリスクの企業ばかりだった。
結果的には、振興銀の業態は中小企業に高利で貸す商工ローンに近くなり、融資残高を増やすために貸金業者の債権を買い取ったことが出資法違反(法定金利を超える利息)に問われた。それが違法かどうかについては法廷で争われるだろうが、これは振興銀の本来のビジネスとは明らかに違う。これは「ベンチャー融資」を行なおうとした新銀行東京の失敗と同じである。
最大の問題は、日本には中小企業はあってもベンチャーが育っていないことだ。振興銀の対象とした中小企業には投資意欲がなく、借金の返済や資金繰りのための後ろ向きの融資ばかりだった。いまだに一部のエコノミストが「デフレの原因は日銀が資金を十分供給していないからだ」と主張しているが、振興銀のケースでもわかるように、問題は資金供給の不足による「貸し渋り」ではなく、資金需要がない「借り渋り」なのである。
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