夏コミのその裏では
聖地巡礼が開催されていた
毎年8月13~15日に東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケット、通称「夏コミ」に参加することこそ、由緒正しいアキバ系人間のお盆の過ごし方である……らしい。筆者の周りでも、梅雨の前後から〆切と格闘し、お盆の三日間を全速力で駆け抜け、そしてコミケ後は精根尽き果てた抜け殻となる、という同人戦士たちの姿は、この時期の風物詩となっている。
……でも、我々アキバ系人間にとって、コミケだけが唯一のお盆の過ごし方なのか?
それは断じて否、だと答えたい。のぼせるような熱気の代わりに、涼やかな風が。人混みをかき分ける苦痛の代わりに、その身をゆったりと冷たい水に浮かべる快感が。そこには、大手サークルを巡るための行動表にがんじがらめに縛られた過ごし方ではなく、時間を忘れてしまうようなのんびりとしたお盆の過ごし方が、たしかにある。
今回は、コミケだけではないもうひとつの夏、お盆を迎える信州・木崎湖の風景をご紹介しよう。テーマは「アキバ系人間のためのリゾート地」、である。
東京からJR中央本線と大糸線を乗り継いで、約4時間。クルマなら長野自動車道・豊科ICから、白馬方面に走って1時間ほど。北アルプスに抱かれた仁科三湖のひとつ、木崎湖とその周辺の風景が、アニメファンの注目を集めるようになったのは、今から8年も前の話だ。
「おねがいティーチャー」(2002年)と「おねがいツインズ」(2003年)、いわゆる「おねがいシリーズ」として放映された一連のTVアニメ作品は、ここ木崎湖周辺を舞台として物語が紡がれる。劇中に登場する情景に魅せられて、放映後から多くのファンが木崎湖を訪れ、アニメの中そのままの美しい風景をのんびりと楽しみ始めたのだ。また、地元の人々や自治体も、突然アニメファンの来訪が増えたことを不思議に思いつつも、彼らを快く迎えてくれたのだった。この木崎湖の現象こそ、現在日本各地で広まりつつある「アニメ聖地巡礼」のはしりとなった出来事なのである。
あれから長い月日が経ち、木崎湖の周辺は一時の賑わいから徐々に落ち着きを取り戻しつつある。しかし、今なおこの地を訪れるアニメファンは途切れることはない。ここ木崎湖は、現在もアニメファンにとって一級の観光地であることは間違いないのだ。
毎年8月15日、木崎湖では湖上に打ち上げ台を設けた大花火大会と灯篭流しが開催される。コミケを終えた参加者が、帰りにここまで足を伸ばすことは事前に聞いてはいたが、筆者が現地に入った午前9時にはまだ人影も少ないはず。そう考えながら、念のため痛車がよく集まるというチェーン脱着場までいってみると……、そこには駐車場いっぱいに停車している痛車の一団が!
ナンバーを見てみると、地元以外にも遠く仙台や岡山、滋賀、愛知や静岡といった全国各地から集まっている。その中の一人に話を聞いてみると、夏場にこれくらいの台数が集まるのは普通らしく、特にコミケの開催日でも関係がないようだ。
筆者が木崎湖を訪れたのは、実はこれで3度目になる。これまでは冬場、近くに用事があったついでに木崎湖に足を伸ばした感じなんだが、やはりアニメと同じ夏に訪れるのがファン冥利につきるってもの。ということで、さっそく「おねがい」シリーズに登場した各ポイントを時間の許す限り回ってみよう。なお、次のページからの写真は、できるだけ作中のアングルに近付けて撮影したものである。
(次ページへ続く)

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