2000年代ーストレージ集中化の時代
C/S型システムが普及するにつれ、企業内にサーバーが乱立し、サーバーの運用管理に割く時間も増大していった。そうした中、保守作業を効率的に行なうためや、専門のオペレータに運用管理を任せるために、分散していたサーバーを一カ所にまとめる動きが出てきた。ネットワークの高速化を追い風として、サーバーをユーザーの近くからマシンルームやコンピュータセンターに移設して、集中管理するようになった。
この時、限られた設置スペースに大量のサーバーを設置するため、ラックマウント化やブレード化が進んだ。さらに保守効率を向上させるため、現在では仮想化により物理的なサーバーの台数を減らす方向に進んでいる(仮想化環境のバックアップは第9回で解説)。
これに対応して、個々のサーバーにHDDを接続するのではなく、数十個から数千個のHDDを内部にもつ大規模記憶システム(ストレージ装置)を導入して、ストレージ装置を複数のサーバーで共用するようになった。ストレージ装置の内部を多数の論理領域に分割し、それぞれの領域をサーバーに対して別個のHDDに見せる仕組みである。
データのバックアップはストレージ装置に対して行なうため、バックアップの作業はサーバーの台数ではなくストレージ装置の台数に応じて発生する。ストレージ装置を導入することで、サーバー管理の集約と同時にデータ管理の集約まで実現するのである。
現在のストレージ装置の容量は、ローエンドの装置でも数百GB以上であり、ハイエンドの装置であればPB(ペタバイト:テラバイトの千倍、ギガバイトの百万倍の単位)を超えてしまう(写真7)。
この容量のデータをバックアップするため、バックアップ媒体にはCGMTの中でも容量の大きな、
- DLT(Digital Linear Tape)
- LTO(Linear Tape-Open)
- AIT(Advanced Intelligent Tape)
といった規格が使用される(写真8)。
また、1つの媒体ではバックアップしきれない(媒体の容量が不足する)場合には、オートチェンジャやライブラリ装置を利用する。それでもバックアップにかかる時間が長すぎる、あるいは磁気テープの保管場所に困るという場合には、データを別のストレージ装置に複写する方法が使われる。
この時、バックアップおよびリカバリを短時間で済ませるために使われたのが、第6回で紹介したレプリケーションやスナップショット、CDP(Continuous Data Protection)などの新しいバックアップ技術だ。
さらに2000年代になって、第8回で紹介したように、コンプライアンス(法令遵守)や内部統制評価など企業活動を監視統制するために「証拠保全のためのバックアップ」が行なわれるようになった。たとえば企業の会計データは、紙の帳票ではなく電子データで保存することも認められるようになった。ただし、国税庁は最長で過去10年間の会計データを監査することがあるため、10年分のデータを変更することなく保存しなければならない。
また、製造業であればPL法(製造物責任法)で製造データの10年間の保存義務が課せられている。「証拠保全のためのバックアップ」には、データの改ざんや人為的ミスによるデータ削除からデータを保護し、バックアップしたデータがコピー元のデータと一致することを保証する仕組みが必要である。
このため、データの書き込みが一度しかできず、書き込まれたデータの書き換えや削除が不可能な記憶媒体を利用することが多い。このような媒体を「WORM(Write Once, Read Many)型メディア」と呼ぶ。CD-RやDVD-Rなどの追記型光ディスク製品が多いが、磁気テープでもLTOなどにWORM型の媒体がある。
さて、次回からの2回は商用バックアップソフトを使って、バックアップやリストアなどを試してみる。バックアップにはどのような設定が必要なのか、実製品の画面を見ながら理解しよう。
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