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開発支援プログラムMPR、MPN――そしてビジネスへ

クラウドでガッツリ! Azureでビジネス展開するための近道とは

2010年08月23日 09時00分更新

文● 塩田紳二

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MPRでパートナーのソフトウェア開発をサポート
――MSDNやTechNetとはひと味違う!?

 パートナーには、マイクロソフト製品をセットアップして付加価値を増した製品を販売する企業のほかに、自社でソフトウェア開発を行ないシステムを構築して販売する企業もある。こうしたソフトウェア開発を行なうパートナーを支援するプログラムが「Microsoft Platform Ready」(MPR)だ。

 MPRは、ソフトウェア開発を行なうパートナーの技術支援プログラムであると同時に、コンピテンシーなどが取得可能となる。これにより、MPNでのSilverやGoldといった上位資格の取得が容易になるほか、上位レベルのコンピテンシーも取得しやすくなる。また、マイクロソフトが行なう「ロゴ」プログラムでのロゴ取得に関する窓口も用意されているので、自社製品をアピールしたい場合は問い合わせが可能だ。なお、MPR自体は登録のみで費用は無償という点も、ISVにはうれしいポイントになるだろう。

 既存の技術者向けサービス「MSDN」や「TechNet」は、個人を含めて広く技術者全体により多くの技術情報を提供するものだが、このMPRは、前述のパートナー制度(MPN)に連動するプログラムであり、あくまで企業向けとなる。そのためビジネス面の支援を受けられるのが大きな違いだ。

 具体的にいうと、MPRではパートナーのアプリケーション(ソフトウェア製品)の検証を支援するというのが一番のポイントだ。マイクロソフトが提供する検証ツール(MPRのポータルサイト上で、2010年10月より提供開始)では、パートナーのアプリケーション(ソフトウェア製品)がマイクロソフトの要求する各種仕様を満たしているかどうかの検証(互換性等のチェック)を行なう。将来的には次期Windowsへの移行に必要な仕様なども考慮されるかもしれない。そうなれば、この検証ツールを使用することで、次世代マイクロソフト製品にスムーズな移行が約束されるだろう(ぜひとも期待したい)。

 対象となるプラットフォームは、現時点では下表(表2)のとおりで、今後はポータル上での開発情報の掲載や検証ツールの提供に止まらず、各プラットフォーム上でアプリケーション開発を行なうための“How to セミナー”、トレーニング、検証ツールの利用解説セミナーなども頻繁に開催される。ちなみに9月は「SQL Server 2008 R2」のセミナーが募集開始され、10月からは「Windows Azure」「SharePoint 2010」のセミナーやトレーニングが予定されているそうだ。詳細はMPRのポータルサイトをご確認いただきたい。

MPRの対応プラットフォーム一覧

MPRの対応プラットフォーム一覧(2010年8月現在)

 MPRでの検証ツールは1つのソフトウェアで分野全体をカバーするものであり、おもにWindows(OS)やマイクロソフトの関連製品などとの整合性をチェックするものだ。これまでのプラットフォームや製品個別のロゴプログラム(検証)とは異なり、一度に複数のプラットフォームや他製品との整合性を検査し、互換性や次期プラットフォームなどへの移行可能性を検査・レポートしていく。検証ツールはMPRサイトからダウンロードして実行できるようになっていて、開発者は(たとえば休日や深夜であっても)自分の好きなスケジュールで実行し、その結果(検証ツールから出力されるファイル)をMPRのポータルサイトにアップロードすることで、認証(合否判定)が得られるという仕組みだ。

 このMPRは、マイクロソフトが以前から進めてきた「イノベートオン(Innovate on)」「Greenlight(キャンペーン)」の後継プログラムになるそうだが、支援対象のマイクロソフト製品数や支援の内容ははるかに充実することになる。例えば前述の検証ツールをみても、従来アプリケーション(ソフトウェア製品)開発を行なうパートナーは、情報の入手やスキルアップこそ進められたものの、自助努力でアプリケーションとマイクロソフト製品との整合性などをチェックする必要があった。

 しかし、MPRではマイクロソフト自身が作成した検証ツールが提供されるため、企業は独自のチェックツールを開発するコストも必要ないし、そのツールが正しくチェックを行なっているかを検証する手間もなくなった。企業はMPRでソフトウェアの開発コストを抑えることができ、開発時間の短縮が可能となるのだ。

MPRは開発→検証→ビジネスの3ステップ
――MPNとMPRでクラウドへの階段を駆け上れ!

 MPRには、大きく3つのステージがある。最初は「開発」で、ここでは、MPRからのドキュメント提供やセミナー、トレーニングが用意されている。次の「検証」ステージでは、MPRが提供するツールを使用し、自社のアプリケーション(ソフトウェア製品)を検証する。なお、検証ツールの利用方法に関するドキュメントやセミナーも企画されている。この検証ツール上で、アプリケーションに問題がある場合、具体的にどのような箇所で問題が発生しているか、レポートで確認することもできる。企業にとっては非常に有益だろう。

 最後のステージは「ビジネス」で、ここはMPN側のサービスとなる。検証をパスすることはコンピテンシー取得の条件のひとつであり、PinPointなどを含むMPNのサービスを利用して、ビジネス面でのサポートを受けることが可能になる。

デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進部パートナーストラテジーアドバイザー永野 浩氏

永野 浩氏

 マイクロソフトでパートナー向けに製品および技術系のマーケティング活動を行なっている、デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進部パートナーストラテジーアドバイザーの永野 浩氏は、「MPRを例えて言うなら、MPNというパートナーのビジネスを推進する車の中の“エンジン”の1つといえます。技術支援(セミナーやトレーニングなどの提供)によってパートナーのアプリケーション(ソフトウェア製品)開発を潤滑に起動させ、MPNというビジネスが加速するわけです。そしてMPRとMPNをつなぐ役割が“コンピテンシー”です。ですので、このコンピテンシーは非常に重要な役目です」という。

 さらに「本年度、マイクロソフトはクラウドに力を入れます。当然、MPRはWindows Azureのアプリケーション開発支援にも力を入れますので、パートナーがクラウドビジネスを推進することに対する、具体的な“コミットメント”のひとつといえますね。もちろん、既存のマイクロソフト製品も同時に支援しますので、パートナーにとってはクラウドとオンプレミスの2つの選択肢を自由に選べるメリットがMPRにはあるわけです」とも重ねる。



 「クラウド」アプリケーションは、初期投資を低く抑えられる代わりに、利用量に応じた料金が必要となる。そのため、なんらかの形でビジネスモデルを構築する必要が出てくる。となると、クラウドアプリケーションを開発し、サービスを提供するプレイヤーは、すべてマイクロソフトの「パートナー」たる資格を持つわけだ。そんなプレイヤーは、MPRを利用することで、クラウドビジネスのコアであるアプリケーション開発の支援が幅広く受けられる。これをみすみす見逃す手はないだろう。


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