10月27日、PDC(Professional Developer's Conference) 2008で発表されたマイクロソフトのクラウドサービス「Windows Cloud」あらため「Windows Azure」。このビッグな発表を携えて、あのバルマーが東京にやってきた。11月5日午後、都内で開かれた開発者向けのイベント「Microsoft Developer Forum 2008」でWindows Azureについて語った。
個人のWebアプリ開発者も無関係でない?
「実はWindows Azureで当初狙っているのは大企業ではなく、個人の開発者、それにごく小規模な企業だ」――米マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマー氏はこう断言した。「Azureは大企業向けなのか?」と尋ねたある開発者の質問に対しての答えだった。

米マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏
Windows Azureはものすごく大雑把に言ってしまえば、Windows Server 2008ベースのホスティングサービスに、共通サービスや管理ツール、マイクロソフト製アプリを組み合わせたもの(関連記事)。Visual Studioでプログラムを作り、それをマイクロソフトのデータセンターにあるサーバー上でサービスとしてすぐに展開できる――ざっくりそんなイメージだ。
他社サービスであれば、米アマゾン ドットコムの「Amazon EC2」や米グーグルの「Google App Engine(GAE)」、米アプタナの「Aptana Cloud」に近い。従量課金制をとることで、初期費用を低く抑えながらも、将来はスケールアウトできるメリットも同じだ。
大きな違いは「AzureはWindowsである」(バルマー氏)こと。バルマー氏は既存の.NET環境で開発されたアプリケーションを楽に移行できる点や、開発ツールが充実している点などを紹介し、「グーグルはPythonベースのツールをいくつか出しているが、本当にクラウドでサービスを展開することを考えたときに、使えるツールを持っているのはどこだろうか」と呼びかけていた。
ところで、冒頭のバルマー氏の言葉(「Azureは当初、個人や小規模向け」)は、「エンタープライズ向けクラウド」と説明されることが多いAzureだけに、やや意外でもある。背景には、Azureは当初、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)が用意されていない、という事情があるのだが、いずれにしても将来目指すのは、「軽量なアプリケーションからエンタープライズまで広範な規模をカバーするプラットフォーム」(バルマー氏)という。
CTP(コミュニティ・テクノロジープレビュー版)の段階にあるAzureは、料金体系を含めまだまだ不透明な面も多い。だが、今回のバルマー氏の発言を受けると、小規模な個人レベルのWebアプリケーション開発者にとっても、Azureは今後十分ウォッチしておく対象になりそうだ。ちなみに、Azureを含むPDCの発表内容は、1月27・28日にパシフィコ横浜で開かれる日本版のPDC「Microsoft Tech/Days」で紹介される予定となっている。

質疑応答での一コマ。会場の開発者から出た質問に対して、ポケットから取り出したペンとメモ帳で熱心にメモをとる姿も
