不死身の生物「クマムシ」を
デジタル顕微鏡で探してみた
みなさんは「クマムシ」という生き物をご存知だろうか。「ムシ」とは言っても節足動物ではないし、もちろん熊でもない。緩歩(かんぽ)動物に分類される、体長0.1mm~1mmほどの小さな生物だ。
このクマムシ、驚異的な生命力を持っていることで知られている。休眠状態になると、そのまま水も酸素も必要とせずに10年程度ほっておいても生き返るとか、150度の高温や-200度の低温にも耐え、宇宙空間(真空)に置いても、激烈な放射線を浴びせても復活するという。
クマムシは世界各地に存在しているが、顕微鏡を使わないと見えないために、最近までは注目されていなかった。EV5610やGE-5で観察できるだろうか?
実はこのクマムシ、意外と身近に存在している。まずは自宅の玄関先で、写真のようなコケ(ギンゴケ)をひとつかみ採取。ペットボトルで自作した、土中から生物を選り分ける「ベールマン装置」(ツルグレン装置)に入れて、水で湿らせたのち、上から強い光をあてる。1~2時間後、下部ペットボトルのキャップ部分にたまったものをEV5610同梱のスポイトで水ごと吸い取り、生物観察ケースに入れた。
以下はすべて、40倍で見つけたのちに、100倍に切り替えて(デジタルズームを使って最大400倍)観察・撮影したものだ。とにかくクマムシの動きがかわいらしい。被写体を視野から外すことなく、拡大縮小ができるEV5610のデジタルズーム機能が、なかなかに活躍してくれた。
クマムシのように動きのある被写体は動画で残したい。3gp形式のファイルをmpeg-1に変換して編集、掲載時にさらに変換されている
食事中のクマムシ。EV5610付属の観察ケースを使うと生きたままの姿を見られる
クマムシくらい小さい生物は、中倍率(100~200倍程)の実体顕微鏡で観察するのに向いている。その点では、落射照明機能が充実しているGE-5の180倍は最適なのだが、GE-5にはステージ上の観察対象を微動させる機能がなく、視野に対象をとらえにくい。そのためEV5610での撮影となった。
★
生物顕微鏡タイプのEV5610と実体顕微鏡タイプのGE-5は、それぞれに得意な観察対象、苦手な分野がある。どちらも安価なので、いっそのこと2台とも購入して見たい対象に応じて使い分けるのが理想だろう。どちらか1機種を選ぶとなったら悩むのだが、顕微鏡入門者が扱うのに適し、さらに高度な観察にも耐えるEV5610がお勧めか。
理科好き大人の知人たちに訊ねると「(理科好きなのは)子どものころに贈られた1台の顕微鏡がきっかけで」という回答が多い。2万円弱で容易に、本格的な観察と撮影のできるデジタル顕微鏡が手に入るとは……。理科好き大人には素晴らしい時代である。夏休みはデジタル顕微鏡で遊んでみてはいかがだろうか。
EV5610 の主な仕様 | GE-5 の主な仕様 | |
---|---|---|
撮像素子 | 1/3型 200万画素CMOS | 1/3.2型 130万画素CMOS |
フラッシュメモリー | 512MB | なし |
保存形式 | 静止画 JPEG、動画 3gp | 静止画 JPEG/BMP、動画 AVI |
光学倍率 | 40/100/400倍 | 60/180倍 |
デジタルズーム | 4倍(合成最大1600倍) | なし |
ディスプレー | 3.5型TFTカラー液晶 | なし |
インターフェース | SD/MMCカード、USB | USB |
電源 | 付属ACアダプター | USBバスパワー |
サイズ | 幅105×奥行き155×高さ330mm | 幅120×奥行き188×高さ186mm |
質量 | 約1.41kg | 約1.0kg |
直販価格 | 1万9800円 | 1万9800円 |
■Amazon.co.jpで購入
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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