このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

週刊 PC&周辺機器レビュー 第66回

理科好き大人必見! 夏こそ楽しいデジタル顕微鏡

2010年08月06日 12時00分更新

文● 池田圭一

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

不死身の生物「クマムシ」を
デジタル顕微鏡で探してみた

 みなさんは「クマムシ」という生き物をご存知だろうか。「ムシ」とは言っても節足動物ではないし、もちろん熊でもない。緩歩(かんぽ)動物に分類される、体長0.1mm~1mmほどの小さな生物だ。

 このクマムシ、驚異的な生命力を持っていることで知られている。休眠状態になると、そのまま水も酸素も必要とせずに10年程度ほっておいても生き返るとか、150度の高温や-200度の低温にも耐え、宇宙空間(真空)に置いても、激烈な放射線を浴びせても復活するという。

 クマムシは世界各地に存在しているが、顕微鏡を使わないと見えないために、最近までは注目されていなかった。EV5610やGE-5で観察できるだろうか?

クマムシ採集

クマムシはこんな身近にもいる。自宅の玄関先でブロックの隙間にあったギンゴケを採取。乾燥したものがよいらしい

 実はこのクマムシ、意外と身近に存在している。まずは自宅の玄関先で、写真のようなコケ(ギンゴケ)をひとつかみ採取。ペットボトルで自作した、土中から生物を選り分ける「ベールマン装置」(ツルグレン装置)に入れて、水で湿らせたのち、上から強い光をあてる。1~2時間後、下部ペットボトルのキャップ部分にたまったものをEV5610同梱のスポイトで水ごと吸い取り、生物観察ケースに入れた。

ペットボトルで自作したベールマン装置

ペットボトルで自作したベールマン装置で、光がきらいな土壌生物を下に集める

 以下はすべて、40倍で見つけたのちに、100倍に切り替えて(デジタルズームを使って最大400倍)観察・撮影したものだ。とにかくクマムシの動きがかわいらしい。被写体を視野から外すことなく、拡大縮小ができるEV5610のデジタルズーム機能が、なかなかに活躍してくれた。

クマムシを容易に発見

透過照明・40倍で探すと、モソモソと動いているクマムシ(円内)を容易に発見できた

クマムシのように動きのある被写体は動画で残したい。3gp形式のファイルをmpeg-1に変換して編集、掲載時にさらに変換されている

食事中のクマムシ。EV5610付属の観察ケースを使うと生きたままの姿を見られる

 クマムシくらい小さい生物は、中倍率(100~200倍程)の実体顕微鏡で観察するのに向いている。その点では、落射照明機能が充実しているGE-5の180倍は最適なのだが、GE-5にはステージ上の観察対象を微動させる機能がなく、視野に対象をとらえにくい。そのためEV5610での撮影となった。


 生物顕微鏡タイプのEV5610と実体顕微鏡タイプのGE-5は、それぞれに得意な観察対象、苦手な分野がある。どちらも安価なので、いっそのこと2台とも購入して見たい対象に応じて使い分けるのが理想だろう。どちらか1機種を選ぶとなったら悩むのだが、顕微鏡入門者が扱うのに適し、さらに高度な観察にも耐えるEV5610がお勧めか。

 理科好き大人の知人たちに訊ねると「(理科好きなのは)子どものころに贈られた1台の顕微鏡がきっかけで」という回答が多い。2万円弱で容易に、本格的な観察と撮影のできるデジタル顕微鏡が手に入るとは……。理科好き大人には素晴らしい時代である。夏休みはデジタル顕微鏡で遊んでみてはいかがだろうか。

EV5610 の主な仕様 GE-5 の主な仕様
撮像素子 1/3型 200万画素CMOS 1/3.2型 130万画素CMOS
フラッシュメモリー 512MB なし
保存形式 静止画 JPEG、動画 3gp 静止画 JPEG/BMP、動画 AVI
光学倍率 40/100/400倍 60/180倍
デジタルズーム 4倍(合成最大1600倍) なし
ディスプレー 3.5型TFTカラー液晶 なし
インターフェース SD/MMCカード、USB USB
電源 付属ACアダプター USBバスパワー
サイズ 幅105×奥行き155×高さ330mm 幅120×奥行き188×高さ186mm
質量 約1.41kg 約1.0kg
直販価格 1万9800円 1万9800円
■Amazon.co.jpで購入

筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン