マメに発表していくことです
―― irodoriを始められたキッカケをうかがえますか。
たつき 学生のときは、短くてもいいからお話を一本作りきりたかったんです。そのころにはもう新海誠さんとか、個人のクリエイターがすでにいらっしゃった。僕らは仕事をするかしないかくらいで、自分たちがこの先どうなってくるんだろうっていうときでした。「1人で作った!」というものが珍しくなくなっていき、バンド活動みたいになってくんじゃないかなと。
―― 「ドラム募集!」みたいにメンバー募集したりとか。
たつき そうそう。アニメーターいないかー、とか、撮影募集中ー、とか。いつかひとりでもサクサク作れるようになるだろう。でも、そういう時代の前に、一度多人数での制作の流れがくるんじゃないかなと。
―― 新海さんのころにはまだ、そうやってたくさんのメンバーが集まって自主制作をするモデルって、なかったですよね。
たつき もう今から3年くらい前ですかね。個人でアニメを作るっていうのは増えてきてましたけど、チームはあまり見なかった気がします。
―― アニメはお好きなんですか。
たつき 大学時代に「アニメ作りたいわー!」とか思い出したころからちょいちょい見だしたんですよね。
―― 「すごいアニメ好き」みたいな感じじゃないんですね。そもそもアニメをあんまり見てなかったのに、なぜアニメを作ろうと?
たつき アートアニメみたいなものは学校で見させられていたんですけど、もっと俗っぽいほうがいいなと思って「眼鏡」を作りました。
―― それは気楽に作りたかったとか、そういう思いですか?
たつき 目が肥えてくると、作品をつくっても「自分はもっとできるはず。まだまだ良くなる」って言い出して、発表しなくなっちゃうんですよね。だったら毎回習作でもいいから、お話がつながるくらいの最低限の質はキープしつつ、どんどん実験的なことができればいいなというスタンスが強いです。
―― 最低限の質をキープしながら、まずは発表が大事と。
たつき そうですね。発表しないとお客さんとの距離感だけがどんどん離れていっちゃう気がします。
―― とはいえ、まずやってみるっていうのもクリエイターとして難しいところもありませんか。
たつき 実際に制作をはじめると、完璧を目指すようになってしまって。それをちょっと何とかしようと思って、今月20日にアップするからそのつもりでやろうぜって話をして、無理矢理アップしたのが眼鏡の第1話でした。
―― なるほど。出来たらアップするじゃなくて、期限を決めたんですね。
たつき 作品はなるべく見てもらって、それに対する反応をフィードバックしてくほうがいいと思ってます。マメに発表していくのはつらいことだし、恥ずかしかったりもしますけど、大事なのかなって気がするんですね。
―― 作品を発表してフィードバックを受けるのが大事っていうのは、他の経験から得たものですか?
たつき 僕が中高生のころは、パソコンが普及しはじめたくらいで、「これで色々出来るぞ。何かやろう」って気持ちが常にあったと思うんです。でも、すぐに頓挫したり撃沈したりして(笑)。そういう経験が良い方向に生きてきた気はしますね。