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マイクロソフトのWeb開発ツールで中身も見た目もクールに 最終回

ダメダメWebアプリからの脱却を目指せ

スクウェア・エニックスがコマースでASP.NETを採用する理由

2010年06月30日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp イラスト●野崎昌子

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アズルトラベルのWebサイトリニューアルを手がけているAMWソフトウェアの二人。マイクロソフトのASP.NETでの開発を選択した同社だが、好奇心旺盛な坂本は、マイクロソフトのWebテクノロジーが実際にどのように使われているのか興味を持つ。最終回は、スクウェア・エニックスのコマースサイトでの導入事例を見る。

登場人物

岩崎課長:Web技術課長。今回のWebサイトのリニューアルを統括する。プログラマーあがりだが、知識がやや古いかも。

坂本:別のシステム会社から転職してきたプログラマーで、技術チームの現場をまとめている。個人でサイトも運営しているため、Web技術に明るい

オープニングトーク

坂本:課長! そういえば、先週行ってきたセミナーの話をするのを忘れていました~。

岩崎課長:そうだ、そうだ。なんだかAKB48の特集とか行って、帰ってしまったからな。坂本はなあ、サラリーマンのホウレンソウを理解しているのか? だいたい……

坂本:す、すいません(話をいそいで戻さないと……)。その会社はコマースサイトで、最初はPHPで開発していたんですけど、ASP.NETに全面移行したんです。

岩崎課長:そりゃ、ずいぶん大胆だなあ。でも、うちらが手がけるアズルトラベルの新サイトも、パッケージ旅行のコマースサイトになるわけだから、よく聞いておかないとだな。で、今度もわしの知っている会社か?

坂本:知ってるもなにも、日本どころか、世界でも知らない人はいないですよ。あのスクウェア・エニックスがマイクロソフトのASP.NETでコマースサイトを構築しているんです。

岩崎課長:スクエニか! 息子に今度出るドラクエのモンスターバトルロードをねだられて困ってるんだ。なにが困るって、わしもはまってしまうからな。はっはっはっ。

坂本:……。では、明日の夕方までにセミナーの報告書を挙げておきまーす。

もともと社内はJava文化だった

 ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーの2大国産RPGを抱えるスクウェア・エニックス。日本を代表するゲームソフト開発会社である同社が2007年1月にスタートしたのが、公式ショッピングサイト「スクウェア・エニックス e-STORE」である。

スクウェア・エニックス オンライン事業部 シニアマネージャー 営業部 マネージャーの津田真氏

 スクウェア・エニックス e-STOREは同社のゲームソフトをユーザーに対して直接販売するコマースサイトである。スクウェア・エニックス オンライン事業部 シニアマネージャー 営業部 マネージャーの津田 真氏は「新作はもちろん、旧作も含めてスクウェア・エニックスのソフトを直接購入いただけるサイトとして立ち上げました。連携させたスクウェア・エニックスメンバーズという会員制サービスがすでに2005年にスタートしており、顧客の交流を深めるそのサービスの1つとして、コンテンツ提供やコミュニティなどをともに用意してきました」とサイトオープンの経緯についてこう話す。

 このスクウェア・エニックス e-STOREの構築にあたって採用されたのが、マイクロソフトのASP.NETで構築されたコマースエンジン「MODD SaaS」である。このコマースエンジンは、クロスワープというソフトウェア開発会社によって開発されたもので、SaaS型で提供されている。これにより開発期間の短縮や運用コストの削減、最新技術のいち早い導入などが可能になる。単なるショッピングカートの提供のみにとどまらず、決済、在庫管理、物流、カスタマーサポートまでカバー。スクウェア・エニックス e-STOREでも、このMODD SaaSの機能をサイト内に組み込み、同社の他のサイトと連携させているという。

スクウェア・エニックス オンライン事業部 ディレクターの原田利祐氏

 当時こうしたSaaS型でのコマースエンジンの採用や開発のアウトソーシング、そしてマイクロソフトの技術の導入などは、同社にとってはチャレンジばかりだった。オンライン事業部 ディレクターの原田利祐氏は「弊社の場合、昔から動的なWebはほとんどJavaのサーブレット等を使っていたので、会社全体の雰囲気としてもJavaが当たり前という感じでした」(原田氏)とのこと。開発やサイト運営も自前でやっており、保守の関係からもJava以外の選択は難しかったという。

 しかし、2006年10月に急遽スクウェア・エニックス e-STOREの立ち上げが決定。約3カ月でオープンにこぎ着ける必要に迫られたなかの選択過程で、ASP.NETベースで作られているクロスワープのMODD SaaSの採用が決まった。「これだけ多様な言語やアプリケーションが世の中出回っているなか、偏った環境に依存するリスクもあります。それぞれの技術のメリットとデメリットはありますので、オープン化の波に乗るためにも、ノウハウを蓄積する意味でも選択肢を増やしておきたいと思っていました」(原田氏)という意向もあったという。もとより物流関連のアプリケーション開発に強いという理由から、スクウェア・エニックスは3年ほど前からクロスワープとコンタクトをとっていたこともあり、受注や仕様確定までの流れはスムースだったようだ。

(次ページ、PHPサイトと連動。商品棚も別の言語で構成)


 

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