Androidにも注力する一方、自社製OSを前面に出し
iPhoneやAndroidに対抗していく
もう1つの戦略がBadaだ。Badaは新しい技術ではなく、これまで自社端末で使ってきたプロプライエタリOSをスマートフォンOSとしてオープンにし“Bada”(韓国語で海の意味)と名付けたものである。SDKの提供やアプリケーションマーケットなども展開していく。Samsungは2009年11月にBadaを、2010年2月に初代端末となる「Wave」を発表した。
Waveには1GHzの自社製プロセッサーを搭載、iPhone 4が「Retina」と呼ばれる高解像度画面を特徴としているのに対し、「Super AMOLED」(スーパー有機EL)を搭載する。明るさは20%増、一方で直射日光下での反射を80%抑えるという。画面のサイズは3.3型(解像度は800×480ドット)で5メガピクセルカメラも搭載した。
ソフトウェアでは、SamsungのウィジェットベースのUI「TouchWIZ」、電子メールや「Facebook」「Twitter」などのソーシャルネットワークサービスを統合する「Social Hub」などが特徴となる。
6月のWave発売(重要市場となる英国では、Appleの「iPhone 4」発表日に発売された)に先がけ、6月1日に予定どおりSDKを公開した。API、UIビルダー、シミュレーター、デバッガーなどで構成され、無料で入手できる。開発したアプリケーションは「Samsung Apps」というマーケットプレイスで公開できる。Samsung Appsは現在、英国やフランスなど一部市場でのみ利用できるが、Samsungでは年内に50ヵ国展開を目指している。
Samsungの狙いはもちろん、サードパーティのアプリケーション開発を促進し、iPhoneやAndroidのような一陣営を作ることだろう。それにあたり5月中旬から7月前半まで、欧州、アジアなど世界約34都市で「Bada Developer Day」を開くほか、アプリコンテスト「Bada Developer Challenge」も開催する。Androidアプリのコンテスト「Android Developer Challenge」とネーミングもコンセプトもまったく同じで、最優秀アプリには現金30万ドルが贈られる。賞金と景品(Wave)を合計した総額は270万ドルという。
しかし、Bada搭載機が現時点で1機種しかなく、Samsungが他のメーカーにBadaをオープンにする予定は「当面ない」としていることを考えると、開発者がBada向けにアプリケーションを作成するモチベーションは果たしてどのぐらいのものだろうか。2月にSamsungの幹部に話を聞いた際は、2010年にはスマートフォンの出荷台数を前年比3倍にする目標であり、台数の面でBadaのプッシュが大きな役割を果たすとのことだった。Samsungのブランド力と資金力を考慮すると、端末と開発者向けの取り組みを積極展開し、相乗効果を狙える可能性はありそうだ。
なお、SamsungはBadaを用意した背景について、Windows MobileやSymbianなどの外部OSは自社の携帯電話に完全にはフィットしない、と開発の限界を指摘していた。アップルのiPhone、RIMのBlackBerryの共通点は、OSと端末をセットで開発・提供している点だ。この長所をBadaで実現しつつ、他のOSにも手を広げておく、これは“メーカー”という同社のDNAを考えると納得がいく戦略と思う。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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