Androidスマートフォンが好調でシェアを伸ばしているSamsungだが、ここのところSamsungのプラットフォーム戦略に関係あるニュースを見ると、今後が必ずしも楽観できない状況が浮き彫りになる。
Appleとの訴訟に苦しむSamsung
決して今後が楽観視できる状況ではない
Samsungのスマホ事業に弱みがあるとすれば、事業成長を支える「Android」そのものだろう。SamsungはGALAXYブランドでAndroidを採用したスマートフォンとタブレットを展開しているが、昨年から激化している特許訴訟においては、各国の裁判所での受けがよくないようだ。原告はAppleだ。
FOSS PatentsのFlorian Mueller氏によると、AppleとSamsungの特許バトルは世界全体で合計19件にものぼるという。この2社が法廷で対立する9ヵ国のうち、オランダとドイツではAppleの主張を幾分認める初期判定が下った(オランダは「GALAXY S II」などのスマートフォン、ドイツは「GALAXY Tab 10.1」などタブレットに対し、仮の販売差し止め令が出ている)。
さらにオーストラリアでは係争中であることから、「GALAXY Tab 10.1」の発売を見合わせている状態だ。これらの影響は限定的と見られるが、気になるのが市場の規模からも影響が大きいと見られるアメリカだ。アメリカへの輸入指し止め令を発効できる国際貿易委員会(ITC)がAppleの主張を調べた結果、正式な審査に入ることを8月に明らかにしており、今後の動向が注目される。
追い討ちとなるのがGoogleによるMotorola Mobilityの買収だ。SamsungのライバルであるMotorolaを取得することで、SamsungらOEMとの関係が変わってくる可能性もある。
韓国政府主導の独自のスマホOSが開発される?
そんな矢先、Samsungのプラットフォーム戦略変更となりえるニュースが2つ出てきた。
1つ目は、Hewlett-Packard(HP)による「webOS」端末開発の打ち切り、2つ目は韓国政府が旗振り役となったスマートフォンOS開発の発表だ。
1つ目のwebOSではHPがwebOS資産を売却する可能性があることから、Samsungが買い取るのではという憶測が流れた。しかしSamsungのCEO、Gee-Sung Choi氏は9月2日にドイツ・ベルリンで開幕したコンシューマ家電の展示会「IFA 2011」でこれを一蹴したようだ。Choi氏はこの憶測に対し、「決してない」と真っ向から否定したとBloombergなどが報じている。
2つ目の韓国政府が独自にスマホOSを開発というのは、8月22日に韓国の聯合ニュース(Yonhap)が報じたものだ。ここで韓国の知識経済部で大臣代理を務めるKim Jae-hong氏は、GoogleのMotorola買収は短期的にはAndroidを採用する韓国企業(主にSamsungとLG電子)にはプラスとなるが、将来は強力な競合になりうるとの見解を示した。気になるのが同紙が引用した「Samsungは当初、ジョイントベンチャーに否定的だったが、GoogleのMotorola買収が発表された後に態度が変わった」という部分だ。
計画では韓国政府は年内にプロジェクトを立ち上げ、ベンダーが共同でオープンソースのモバイルOSとウェブベースのOSを開発するのを支援するという。

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