「3」を出すタイミングでは間に合わない
永山氏は「マンガ論争」シリーズで、漫画を取り巻く現状や問題点、課題などを追いかけてきた。続編となる「3」執筆のための取材は昨年から続けていたが、そんな最中に東京都青少年健全育成条例の改正話を耳にしたという。
今すぐやらないと手遅れになる可能性があったため、同人誌として緊急出版に踏み切った。「現在はCOMITIA(コミティア)の通販でしか手に入らないが、今後はAmazonなどでも販売できるようにしたい」と永山氏は語る。
再審議が行なわれる6月までに出そうと、それまでの蓄積をベースに新たな取材も入れて、わずか1週間程度で作り上げた。最後はその日起きたことも入れていった。初売りの場となった5月4日の同人誌即売会「コミティア」では、冊子のほかに最新情報を載せた4ページのチラシを配ったりもした。
現在はそのチラシ分を新たに収録した『マンガ論争 2.51』を印刷所に入稿したところ。「それでもまだ最新情報を入れていかないといけないので、電子書籍化して随時内容をアップデートしつつ、同時に、どこでも読める紙媒体も作る必要があると考えています」(永山氏)。「3」は、この延長線上のものになる可能性があるという。
ロリ規制、児童ポルノ禁止法改正が目的?
「なぜこういう改正案がでてきたのかまったく理解できない」と永山氏は首を傾げる。元々現行のままでも不健全指定は可能なのに、なぜわざわざ条例を改正しようとしているのだろうか。
猪瀬直樹副知事はブログで、「不健全図書(成人向け図書の棚に置く)に指定されてきたのはエロ規制で、ロリ規制ではない。新たにロリ規制をもうけただけの話」と書いている。これまで自主規制団体と話し合って規制の基準を作ってきたが、それでは“ロリ規制”はできない。
これについて永山氏は、「あくまで憶測だが……」と念を押しつつ、「これまで指定しなかったものまで指定し始めると業界団体に反発されるので、ならば条文を改正しようと考えたのかもしれない」と語る。
また、「児童ポルノ禁止法」を改正して児童ポルノの単純所持を処罰化するよう審議が進められていた。2009年の衆議院解散に伴って廃案となったものの、「これを応援するため、露払い的に出てきた可能性もある」と永山氏は言う。
都条例の改正案が通った場合、ほかの都道府県が影響を受けて同様の条例が次々出る可能性が出てくる。その流れを受けて、児童ポルノ禁止法もすんなり改正されてしまうかもしれないという。さらに、改正のきっかけを作った東京都青少年問題協議会のメンバーに出版印刷業界やクリエイター側の人間がいないことも憶測を呼ぶところだ。
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