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ゼロから分かる東京都青少年健全育成条例改正問題 第2回

永山薫氏に聞く非実在青少年問題と「マンガ論争2.5」

2010年06月14日 17時30分更新

文● 高橋暁子

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『マンガ論争 2.5』の紙面。「入稿直前には、テキストエディターで書いてると間に合わないので、DTPソフトに直接打ち込んでいました(笑)」(永山氏)

都の説明ではなく条文が基準

 条文の解釈を巡っては、すでに都側から「質問回答集」が出されている。このなかで都の担当者は「~は大丈夫」「~は該当しない」などと、条文に書かれていない説明を繰り返している。このことについて、永山氏は弁護士に聞いてみたことがあるという。

 有害指定を巡って、都の説明より厳しい判断がなされているとき、裁判所はどう判断するだろうか。質問回答集にある都の説明と違っても条文には則っていたとしたら、どちらが重視されるのか。弁護士の答えは、「当然、条例の条文が重視される」。

 法令は、判断に幅があるものだ。「猥褻」も、以前はヘアが一本でも見えたらダメだったが、今はヘアだけなら問題ないというように、時代によって基準は変わる。同様に、都が現在いくら「問題ない」と言っても、5年後は「時代が変わったので」と言えば通ってしまいかねない。歴史的に見ても、治安維持法など、法律ができた際とは異なる解釈で運用されたものは多い。

 「子どもに見せたくないという感情は理解できるが、それに法的強制力を持たせることはよく考えるべき」というのが永山氏の立場だ。「どんな倫理を持つかは個人の自由だし、その考えを広めるのは言論の自由。ただし、それを法律にして相容れない主義の人に強制するのは問題があるだろう」。


規制賛成側も条文を読んでいない

 東京都青少年健全育成条例改正が話題となり始めた直後、「大阪府青少年健全育成条例」が改正されて、一部のBL(ボーイズラブ)雑誌が有害図書指定を受けた。「規制がかかった原本8誌を見たが、今の男性向けのエロ漫画より過激」と永山氏。しかし同時に、「確かに過激だが、それが例えば5年間続いていて問題にならなかったとしたら、社会が容認していたことになるのではないか」と言う。

 BLというジャンルは特殊だ。読むのは主に女性であり、出てくるのは男性のみだ。BLがいかなる悪影響を与えるというのか。「大阪の場合、刑法175条のわいせつ物頒布罪で“性器が見えているので猥褻”としたほうが分かりやすい。大阪では、猥褻と青少年保護がごっちゃになっている」。

 さらに、「条文を作った人たち以外、条例を読んでいないのでは」と永山氏は指摘する。「みんな、条文と合ってもいない都の説明だけを聞いて反応している。産経新聞のインタビューでアグネス・チャンが、改正条例は売場を規制するだけで教育のために親が買うことはできると言っていたが、条文には“青少年を性的対象として扱う図書類等に係る保護者等の責務”で保護者は子どもに見せるなという意味のことが書かれているので、それはできないはず。これは読んでいない証拠」。

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