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Intel Enterprise Updateレポート

インテル、「サーバーからデータセンターへ」を語る

2010年05月26日 11時30分更新

文● 渡邉利和

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5月25日、インテルはエンタープライズ分野での取り組みについて説明する「Intel Enterprise Update」を開催した。説明を行なったのは米本社の副社長兼データセンター事業部長のカーク・スカウゲン氏。

サーバーからデータセンターへ

米インテル 副社長 兼 データセンター事業部長 カーク・スカウゲン氏

 インテルの従来の事業区分では、「クライアントPC」と「サーバー」が対になっていたが、クラウドコンピューティングに向けた業界のトレンドに対応してのことだろうが、サーバからデータセンターへと役割を拡大することになったという。

 日本ではいまだにユーザー企業内のマシンルームにサーバが設置/運用される例も少なくはないが、自社運用か外部の専門事業者かはともかくとして、専門設備である「データセンター」にサーバーを収容するというスタイルも拡大していることを考えれば、「サーバー」と「データセンター」はほぼ同義と考えることもできる。少なくとも、密接に関連する概念だということはいえるだろう。とはいえ、単純な言葉の言い換えのレベルに留まる話ではない。詳しくは後述するが、従来は筐体レベルまでが対象だったインテルの関心領域が、複数筐体をまとめた「ラック」や「ラック列」に拡大している。かつてプロセッサ単体からチップセットなどを含むプラットフォームへと事業を拡大したのと同様の事業領域のシフトが起こることも予感させる。

 説明を行なったカーク・スカウゲン氏は、「クラウドコンピューティング」で注目すべき3つの要素として、「連携」「自動化」「Client Aware」を挙げた。

クラウドコンピューティングの3つの要素

 連携とは、プライベートクラウドとパブリッククラウド、あるいはパブリッククラウド間など、さまざまな組み合わせでデータやサービスをシームレスかつ安全に利用できるということだ。自動化は、リソースを動的に割り当てる機能で、一方ではこれによって「高効率なデータセンター」が実現されることになる。

 Client Awareとは、同氏の表現によれば「クラウドにインテリジェンスを組み込む」ということだ。最新のプロセッサを搭載したデスクトップPCとスマートフォンや組込デバイスなどでは処理能力や画面サイズが異なるため、クラウドコンピューティングを前提としたとしても、同じサービスを同じように利用するのは困難であることに代わりはない。そこで、クラウド側がクライアントの属性を判別し、クライアントの能力に最適化されたサービスを提供することで、ユーザーはどのような端末を使ってクラウドにアクセスしても、つねに最良の結果を得ることができるわけだ。

 こうした、クラウド時代に求められる要素を実現するための技術面からのアプローチは、同社がこれまでも強力に推進してきた「省電力(高効率)で処理性能の高いプロセッサ」であり、その意味ではクラウド時代を見据えた戦略転換は数年前に既に完了しているという状況だといえるのだろう。

Itaniumにも言及!プロセッサーのロードマップ

 スカウゲン氏はまず、3月に発表されたXeon 5600番台の紹介から始めた。同氏は、「経済状況の影響もあり、市場で稼働しているサーバーの約1/3はまだシングルコアプロセッサだと見ている」とした上で、こうしたサーバーを台数一定でXeon 5600番台搭載サーバーに更新すれば「パフォーマンスが最大15倍に向上し、電力コストは推定で年間26%削減可能」、同じ処理能力を維持するのであれば「サーバーの台数を1/15に削減でき、電力コストは年間で95%削減可能。投資は半年以内に回収できる」という。

Xeon 5600番台の導入効率

 続いて紹介されたXeon 7500番台は、「インテルXeonプロセッサー市場最大のパフォーマンスの飛躍」を成し遂げたという。また、「第7世代Itanium」と位置づけられるItanium 9300番台も、先行製品比で2倍の性能向上を実現したという。

 従来明確に差が付けられていたXeonとItaniumのRAS(高信頼性)機能がほぼ同一になり、性能面でもほぼ同等になったことや、マイクロソフトやレッドハットが相次いで次世代OSでItaniumをサポートしない意向を表明していることを踏まえて、同氏は「XeonとItaniumは、OSプラットフォームによって棲み分ける」という説明を打ち出した。つまり、「WindowsやLinuxを使いたいサーバーにはXeon、それ以外のOSを使いたいならItanium」ということだ。同氏によれば、ItaniumをサポートしているOSは、HP-UXやHP NonStop、OpenVMSなど12種類あるという。

RISCプロセッサー市場のなかのItaniumやXeonの位置づけ

 ただ、インテルがいかに力説しようとも、Itaniumに明るい未来が残っているようには見えないのが正直なところだ。OSサポートは確かに重要ではあるが、現実には「レガシーモード」であり、既存システムの延命のために使われるのが主になっていくと思われる。機能も性能も同等でOSサポートだけが違う、ということならともかく、これまではXeonとItaniumとでは価格帯もまるで異なっていたので、新規設計のシステムであえてItaniumを選ぶのは相当に特殊な事情がある場合に限られそうだ。

 同氏が示した今後のItaniumのロードマップでは、Itaniumの更新は1年おきで、Itanium 9300番台(コードネームTukwila)の後、「Poulson」「Kittson」の2世代が計画されており、それぞれ前世代の2倍の性能を実現する予定だ。なお、製造プロセスは45nmを飛ばし、Tukwilaの65nmから一気に32nmに移行する計画だという。同氏は「これだけで約8年分のロードマップが明らかになったことになる」と語ったが、それでもItaniumの将来性に対する疑念を払拭するには至らないものと思われる。とはいえ、同氏が語ったとおり、現時点ではXeonかItaniumか、ユーザーが選べる選択肢が存在している状況であり、あとはユーザーの支持がすべてを決定していくことになるのだろう。

データセンターでの新たな取り組み

 データセンターを新たなプラットフォームとして捉える取り組みも始まっている。同氏は「あまりメディアでは話題にならなかったようだが」と前置きしつつXeon C5500シリーズの紹介を行なった。これは、同氏によれば「サーバーOSの動作検証を行なっていない初めてのXeonプロセッサ」だそうで、「ストレージやネットワーク・デバイスへの組み込み用途に最適化された『データセンター向けXeon』」だという。

 実際に、ストレージや高速スイッチなどでも高機能化が進む一方、ソフトウェアによる機能実装の比重が高まっていることから、ハードウェアプラットフォームとしては事実上IAサーバーとほぼ同等のものが使われるのが一般的になっている。従来インテルがこの点を強調することはあまりなかったように記憶しているが、「サーバーからデータセンターへフォーカスを拡大」する過程で重要なポイントとして浮上したようだ。

 さらに、高効率化の取り組みに関しても、データセンター全体の電力管理を行なう「インテル データセンター・マネージャー」の構想が紹介された。グリーン化への意識の高まりを受けて、IAサーバーでもサーバー単体での電力制御が緻密化してきたが、あくまでもサーバーの筐体内部での取り組みであった。しかし、前述のようにストレージやネットワーク・スイッチが実態としてIAサーバーになってくれば、サーバーと同様の手法でそれらのデバイスの電源管理も可能になるはずだし、さらにはそうした筐体を複数束ねて全体最適化を図る可能性も開けてくる。

データセンター全体の電力管理を行なう「インテル データセンター・マネージャー」

 インテル データセンター・マネージャーでは、各筐体の電力消費に関する情報を集約することで、ラックレベル/ラック列レベルでの消費電力制御を実現するという。従来のデータセンターの電力管理は、ラックに取り付けた配電ユニットのところで消費電力を測定し、そのデータを元に外部から制御を行なう、という手法が主だったため、インテルの取り組みはデータセンターのフロアレベルでの電力制御を飛躍的に緻密化できる可能性がある。

 スカウゲン氏のメッセージは、唯一Itaniumに関してのみ歯切れの悪い点が見受けられたが、それ以外のデータセンターインフラに対する取り組みなどは説得力のある明快なものだった。逆にいえば、あまり驚きのない、論理的に納得しやすい取り組みが主だったともいえる。

 とはいえ、インテルの事業領域がサーバー筐体の外に拡大していくことは間違いなさそうだ。クラウドコンピューーティングの本格的な普及期を迎え、ハードウェアプラットフォームの面からはインテルの存在感は当面維持されることになりそうだ。

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