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データセンターにも、クラウドにもインテル入ってる!

インテルがODCAとメニーコアの取り組みを語る

2010年11月12日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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11月11日、インテルは「Open Data Center Alliance」(ODCA)に関する取り組みの説明会を開催した。ODCAは、10月27日付けで米国で発表されたもので、ユーザー企業の団体であるという点が特徴的。インテルはテクノロジープロバイダーであることもあり、メンバーではなく「技術アドバイザー」という立場でこの活動を支援していく。

ユーザーの要望を明確化するODCA

ユーザー指向のオープンなデータセンターを支えるODCA

 クラウドに関しては、ITベンダー各社が激しい主導権争いを繰り広げている最中だ。独自戦略を追求する一方で業界内でのパートナーシップの確立も盛んに行なわれ、戦国時代ともいうべき合従連衡が展開されている。とはいえ、こうした動きは基本的にはベンダー側の都合に基づいて行なわれているものであり、ユーザー企業にとって望ましいものであるとは限らないのも確かである。とはいえ、テクノロジープロバイダー間での主導権争いが一段落した後でユーザーが声を上げても手遅れとなる可能性もあるので、ユーザー企業がテクノロジーの進化に主体的に関わっていこうとするなら、できるだけ早い段階からアクションを起こす必要がある。ODCAの結成は、そうした意味からは「これ以上遅くなっては意味をなさなくなる」ギリギリのタイミングだと見て良さそうだ。

ODCAモデルのロードマップ

ODCAの今後の予定

 ODCAはクラウドコンピューティングに対してユーザーとしての立場で関わる企業で構成され、「よりオープンで相互運用可能なクラウドおよびデータセンターソリューションを実現する、将来のハードウェアおよびソフトウェア要件を策定する」ことを目指した段階だ。ユーザー企業による団体、というコンセプトが徹底されており、テクノロジープロバイダーは議決権を有する正式メンバーとして参加することは認められていないという。インテルも例外ではなく、正式メンバーとしてではなく、アドバイザーという立場で活動を支援していくという。

米インテルのデータセンター事業部 副社長兼マーケティング本部長のボイド・デイビス氏

 説明を行なった米インテルのデータセンター事業部 副社長兼マーケティング本部長のボイド・デイビス氏は、2015年の予測として「インターネットユーザー数が10億人以上増加」「接続機器数は150億台」「インターネットトラフィックは1000エクサバイト以上」といった数字を紹介、さらに「現在のテクノロジーでは2015年のITインフラストラクチャーへの電力供給に、石炭火力発電所45基の新設が必要」といった予測があることも指摘し、「高効率名インフラを構築しなければ、膨大なユーザーが限られたITリソースを奪い合うような状況になりかねない」という懸念を表明して、高効率で柔軟なITインフラ(=クラウド)の構築が不可避であることを強調した。

 インテル自体はクラウドの実装を直接手がけているわけではないが、クラウド分野でのインテルの果たす役割について同氏は「変化をもたらす触媒」だと位置づけた。同氏は「Wi-Fiはインテルが発明したわけではないが、インテルがCentorinoプラットフォームにWi-Fiを標準で組み込んだことで、当初10年以上かかると予想された無線LAN環境の普及が3年ほどで成し遂げられた」という実績を挙げて、クラウドに関してもインテルがユーザーが望む変化を迅速にもたらすことができると語った。

メニーコアへの取り組みもあわせて披露

 同氏はまた、科学技術計算などの分野ではまだまだ演算能力が不足していると言う。たとえば、天気予報の分野に関して言えば、「ハリケーンがどこに上陸するかの予測は現在は48時間前に予報が出せるが、これをもっと早い段階で予測するためには現状の演算能力ではまったく不足しており、百万倍程度の演算能力が必要だ」という。こうしたトップエンドの演算を実行するHPC分野ではさまざまなスーパーコンピューターが活用されているが、同氏は「スーパーコンピューターはごく限られたユーザーしか利用できず、大多数のユーザーが利用するPC/ワークステーションとスーパーコンピューターの“中間が欠けている”ことが問題だ」という。そして、この中間を埋めるためにもクラウドが活用できると同氏は指摘した。

PCIeアダプタにMICプロセッサーを搭載した

 現在HPC分野でインテルが積極的に進めているのが、“Intel Many Integrated Core(MIC) Architecture”だ。試作段階から何度か公表されていたもので、50以上のコアをダイ上に集約するとされている。汎用的なサーバーとしてではなく、あくまでもHPC向けの高度な並列アプリケーションを高速に実行するためのアクセラレーター的な位置づけとなるが、まずはソフトウェア開発用のプラットフォームとしてPCIeアダプタカードにMICプロセッサー(Aubrey Isle、最大32コア/128スレッド)を搭載した“Knights Ferry”が実現している。初の正式版のMIC製品となる予定の“Knights Corner”(開発コード名)は22nmプロセスで50コア以上を集積するとされているが、ソフトウェアの対応には時間が掛かるため、まずはKnights Ferryを使ってソフトウェアの開発/検証を進めてほしい、という意図だろう。

メニーコアとマルチコアの違い

XeonプロセッサーとMICアーキテクチャの違い

 クラウドとMICは直接の関連はなさそうだが、HPC環境をクラウドで提供することによってより多くのユーザーがHPCを利用して新たな成果を生み出すことができる、ということのようだ。

 今回の説明に関しては、インテルはクラウドに関して直接的な関与を行なっているわけではないが、クラウドと無関係の事業を展開しているというわけではなく、さまざまな形でクラウドに積極的な関与を続けていく、という意向表明として受け止めればよいように思われる。

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