NVIDIAチップセットの歴史 その1
原点はXbox NVIDIAチップセットの系譜をたどる
2010年04月05日 12時00分更新
Athlon XPと同時期に登場した「nForce2」
これに続き、AMDがAthlon XPを投入したタイミングで投入されたのが、「nForce2」シリーズである。GPUを統合したものを「IGP~」、GPUなしのものを「SPP~」としてそれぞれリリースするのは初代と同様だ。
nForce2ではnForce220のように、「メモリーバスを1チャンネル減らしただけ」といった製品はなく、純粋にGPUを内蔵するかしないかの違いしかない。内蔵GPUは一応、GeForce 2 MX相当から「GeForce 4 MX440」相当に変わったが、こちらの記事で説明したとおり、中身は同じものである。
余談になるが、nForce2の登場の頃、まだAMDはFSBを400MHzに引き上げる計画はなかった。当時は「Thoroughbred」コア(Athlon XP)をベースに、Athlon 64と同様の130nm SOIに移行させ、動作周波数を引き上げた「Barton」コアをリリースする予定だったからだ。
ところが130nm SOIプロセスの開発の遅れにより、AMDは方針を転換。Thoroughbred同様に、130nmのバルクプロセスのまま400MHz FSBをサポートするとともに、2次キャッシュの容量を512KBに倍増させて性能の底上げを図ったCPUを、Bartonコアとしてリリースした。これはnForce2でサポートされた。
nForce2のサウスブリッジには、今回も「MCP」と「MCP-T」という2種類が用意された。両社の違いはサウンドとEthernet機能である。MCP-TにはAC97のほかに、DirectX 8.0のDirectSoundなどに対応した「APU」(Audio Processing Unit)が搭載され、また「Dual Net」と称してNVIDIAの独自Ethernetのほか、3Com社のEthernetコントローラー「3C905」が搭載されている。MCPはAC97のみで、またEthernetはNVIDIAのものだけが搭載されている。
APUはともかく、なぜ3ComのEthernetをわざわざ搭載したかというと、当時はまだNVIDIAのEthernetチップに、それほど信用がなかったため。ビジネス用途向けに信頼性のある3Com社製コントローラーをわざわざ搭載した、というわけだ。
ちなみに、当初nForce2は「nForce2 IGP/SPP」として発表されていた。のちにAMDが400MHz FSBのBartonコアAthlon XPをリリースするタイミングで、nForce2も400MHz FSBおよびDDR-400を正式サポートして、「nForce2 Ultra 400」と改称されている。また、ロードマップ図には入れていないが、2004年に入ってさらに、3種類のMCPがリリースされている。
- MCP-S:MCPにSATA 150×2を追加
- MCP-RAID:MCPのATAポートを使い、RAID 0/1/0+1が可能
- MCP-Gb:MCPのEthernetをGigabitEthernetに変更
これはなぜかと言うと、AMDが2004年6月に「Sempron」を投入したことに関係している。こちらの記事でも軽く触れているとおり、AMDは当初K7のThoroughbredコア(Bartonコアの2次キャッシュを半減させたものも一部含まれていたらしい)をベースにSempronをリリースする。しかしCPUはいいとしても、チップセットの側がnForce2のままでは流石に見劣りがしたためだろう。NVIDIAは急遽、MCPのみ機能を追加したものをリリース、これらを搭載したマザーボードが若干流通した。
もっとも、AMD自身がすぐにK8ベースのSempronも投入。K7ベースの製品はフェードアウトしていったので、これらのチップセット製品がすぐに市場から消えることになったのも、致し方ないところだろう。

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