CPUやマザーボード、グラボはアレコレと機能と価格を比較して購入を検討するも、意外と適当に選んでしまうのが電源だ。検討するにしても、グラボ2枚差し派であれば出力ワット数、そうでなければ静音性のデシベル数で絞り込み、あとは価格との相談といった具合だろう。最近はテレビCMでも流れているように、省エネPCという選択肢もこれに加わってきたが、パーソナルユースでは劇的に電気代が安くなることはない。とはいえ企業で大量にPCを導入している場合は、“チリも積もれば”でかなり電気代の節約にもなるのが省エネ電源だ。
ASCII.jp読者には、こんなヤツはいないと思うが
電源?PCが動けばいいじゃん! 一番安いヤツでオッケー♪
なーんて、選んだりするとあとで痛い目に合う。なにを隠そう「こんなヤツ」とは、俺様である!(笑)。
昨年の今頃、ATX電源を買ったのだが「超お買い得!」とあった500W電源を1470円で買ってきた。あまりに安いので「怪しいなぁ」と思いつつも、残りの資金で追加のHDDを買えてウマー!だったのだ。
がっ! 半年も経つと、電源がある日突然「パーンッ!」という大音量で爆発。調べてみると、半導体が弾け飛ぶという前代未聞の惨事に見舞われた。幸い半導体が吹っ飛んだ瞬間に、それがブレーカー代わりとなってマザボ他を破損することなくコトを終えたが、場合によってはPC全損、最悪の場合は火事になる可能性だってある。後日その電源の型番をググってみると、日本全国津々浦々でハジけていることが判明。中には「PCを全損した!」という悲惨な同志も多く見かけた。
こんな話を編集部のK氏に話したところ「これスゲーいいから使ってみてくださいよ!」と言われて借りたのが、電源の老舗メーカーENERMAX社の「PRO87+」だ。
こっコイツ! 動いてるのかっ?
電源が爆発してしばらく放置してあった実験用のサブマシンに借りてきた電源を入れてみよう。さっそく電源を箱から取り出してみると、黒い筐体に一際映える黄金の巨大ファン。なんと直径は約14cm! ATX電源の底面すべてがファンになっているという勇姿だ。
どうやら黄金の巨大ファンは、電源の省電力化を推進する第三者団体である「80 PLUS」から、「この電源は省エネでエネルギー変換効率が超イイんじゃね?」と認定された最高の栄誉「80 PLUS GOLD」の証しらしい。80 PLUSの認定は、次のような4段階評価になっている。
学校の評価相当 | 負荷の違いによるエネルギー変換効率 | |||
---|---|---|---|---|
80 PLUS評価 | 負荷20% | 負荷50% | 負荷100% | |
努力が必要です | 80PLUS | 80% | 80% | 80% |
がんばりましょう | 80PLUS BRONZE | 82% | 85% | 82% |
よくできました | 80PLUS SILVER | 85% | 88% | 85% |
大変よくてきました | 80PLUS GOLD | 87% | 90% | 87% |
※基準となるエネルギーは、アメリカ仕様のコンセントのAC115V。日本は100Vなので、15Vのロスがあるため表の値までは少し及ばない。また230V仕様の場合は、80 PLUS PLATINUM(プラチナ)までランクがある。
これまでエネルギー変換効率は、各社の独自調べになっていたが、時代がECOだけに第三者機関でニュートラルにジャッジしようじゃないの!ということで、このような80 PLUSが設立されたというワケだ(関連記事)。
表を見て不思議に思うのは、コンセントから取った100Vの電気エネルギーがPC用の12/5/3.3Vに変換されたとき、2割近くもどこかに行ってしまうところだろう。電源はCPUやサウス・ノースブリッジのように、熱くて触れないほど熱を出さないものの熱を発している。これがエネルギー損失のひとつ。つまりコンセントの電気エネルギーの一部は、熱エネルギーとなって部屋に巻き散らかされているというわけ。もうひとつの損失は、電源内部のパーツが持つ抵抗。マザボでも頻繁に登場する「低ESR」という言葉があるが、パーツの内部抵抗でエネルギーロスしてしまうのだ。そしてほとんどの場合、これが熱エネルギーとなって放出される。
今回借りた「ENERMAX PRO87+」は、負荷20~100%でエネルギー効率は87~92%ということなので、学校の評価相当にすれば「大変よくできました」に花まるが付くぐらい省エネということだ。
で、実際にパソコンに組み込んで見てさらにビックリ! パワーボタンを押しても
電源ファンの音がまったくしネーッ!
「こっ!コイツ動くぞ!」なんて一部マニアでは有名なセリフがあるが、「こっ!こいつ動いてるのかっ!?」ってな具合に、背面の吹き出し口に手をかざしてファンが回っているのを確かめないと分からないぐらいに静かなのだ。
これは80 PLUS GOLD認定を受けている証し。つまりコンセントのエネルギーのほとんどが、PC用電源の電気エネルギーに変換され、電源から発せられる熱が少ないので、高速にファンを回す必要がないためだ。負荷が低いときはファンを回す必要のないぐらいの発熱量なのだろうが、電源のファンは筐体内の廃熱を吐き出す機能も兼ねているので、とりあえず低回転で回しとけって感じに思えた。
非常に静かで助かる電源なのだが、今度は静かだと思っていたCPUファンやグラボのファンがうるさく聞こえてしまうのが難点……。静音に走ると、キリがなくなるのが自作PCの世界なのだ。
(次ページへ続く)
