AMDチップセットの歴史 その2
優れた内蔵GPUでシェアを広げたATIチップセット
2010年03月15日 12時00分更新
インテル向けの拡大により、幻に終わった
AMD向けRS380/RX380
このあおりを食らったのが、AMD向けのチップセットである。この時点でAMD向けのプラットフォームは、K7(Athlon)用のSocket AからK8(Athlon 64)用のSocket 754/940(Socket 939はもう少しあと)に切り替わっていた。当時のAMDは、特にSocket 754用の優れた統合チップセットが、喉から手が出るほど欲しかった時期である。ATI側もRS350/RX350と同時に、K8用の「RS380」「RX380」の開発を進めていた。
実際、最初のRADEON IGP 320発表当時は、さまざまなAMD関連のイベントでATIは、「RS380/RX380を投入する」といったアナウンスをしていた。しかし、残念ながらこのRS380/RX380は、結局幻のチップセットに終わってしまう。理由のひとつは、特にSocket 754はマーケットシェアが非常に少なく、ここに開発費を投じて製品をリリースしてもペイしないということだった。以下の2つも理由として挙げられよう。
- K8はメモリーコントローラーがCPU側にあるため、UMA方式を取るのは技術的に難しかった(最終的にはチップセットのそばにローカルフレームバッファを設けるのが一般的になった)
- インテル向け製品の爆発的拡大により、AMD向けまで手が廻らなくなった
この結果、この世代のATIチップセットと言えば、インテル向けを指すのが普通であった。
こうした傾向は次の世代も続く。2004年11月に「RADEON X300」相当(若干機能を落としてX200相当)のグラフィックス機能を統合した「RADEON Xpress 200 for AMD」を、2005年3月には「RADEON Xpress 200 for Intel」をリリースする。RADEON Xpress 200 for IntelはPentium Mのバスライセンスを受けて、これを公式にサポートしている点が大きな違いである。
実はこの4ヵ月の時間差は、多分に政治的なものだった。開発自体は両プラットフォームともにほぼ同時に完了したらしいが、問題はインテルの側にあった。RADEON Xpress 200に相当するチップセット「Intel 915 PM/GM」の発表が2005年1月に予定されていて、これを発表する前にサードパーティーからスペック的に上回る製品を発表されるのは具合が悪い、ということだったようだ。こちら当然ながら良く売れることになる。
この頃には、AMDもSocket 939プラットフォームに切り替わり、マーケットシェアも拡大しつつあった。このSocket 939マーケットではNVIDIAがかなりシェアを伸ばしてきていたが、NVIDIAは高性能・高消費電力という製品だったので、RADEON Xpress 200の入り込む余地は十分にあった。ロードマップ図には示してないが、この当時AMDから投入された「Mobile Athlon 64」や初期の「Turion 64」向けに、RADEON Xpress 200 for AMDにモバイル向け省電力機構を追加した、「RS480M」も広く使われたと記憶している。
またインテル向けプラットフォームは、相変わらずグラフィック性能の高さで他社を圧倒していたこともあり、これまた広く使われるようになってゆく。特にRADEON Xpress 200は、インテルの「D101GGC」というマザーボードに採用されたほどであり、このあたりでほぼ台湾ベンダー(VIA/SiS/ULi)をしのぐ勢いになっていたと言える。
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