このページの本文へ

古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第67回

「日本のネットを開国したい」非モテSNSえがちゃん本気で語る

2010年03月13日 12時00分更新

文● 古田雄介

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

モチベーションを支えているのは「下の世代」

―― では、永上さんのモチベーションについて伺います。2ちゃんねるの中傷スレッドもそうですが、ネットで活動をはじめてからけっこう炎上や叩かれる関連の騒動が多いですよね。原因などは置くとして、そういった状況を何度経験しても活動を続けるエネルギーは相当なものだと思います。心が折れたりしたことはないんですか?

永上 慣れましたね。ネット自体は小学6年からやっていて、中学生になったときヤフーチャットで叩かれたんですよ。メールボム攻撃を食らって朝起きたら1万通メールが届いたなんてこともありました(笑)。あと、携帯電話の番号も16歳の頃から公開しているので、脅迫電話もたまにかかってきますね。最初は嫌でしたけど、知らない人から叩かれたり脅されたりする生活を10年も続けたら、やっぱり慣れますよ。

―― 自分にメリットや明確な意志がないと、慣れる前にそうした活動をやめる気がします。最初期の頃から何かしらの考えがあったんですか?

永上 そうですね。いくら叩かれても負けないっていう姿勢を貫くことが僕の正義だという感じです。「それは違うだろ」という意見が出ても、自分から討論を投げ出すことは絶対にしない。けっこう意固地なので、僕自身の考えはあまり変わらないですけどね。

 僕はネットで育った、いわゆるデジタルネイティブという世代なんです。ネットが常にある環境で育ち、中学生になって未熟なりにも自分で開発したサービスを発表して、けっこうバンバン叩かれた。それで僕が負けて止めてしまったら、次の世代の人が個人でプログラムを組んでサービスをリリースしてという風潮がどんどんなくなってしまうと思ったんですよ。

 だからやっぱり、僕は常に自分より年下の人のことを考えて活動していて、それが原動力になっているというのは感じます。はてなで叩かれたときに、より強くそう思うようになりました。

批判の声については「ネットのコメントというのは、見ている人の1%に過ぎないとよく言われます。しかも、否定的な内容のほうが書き込まれやすい。それより、コメントしていない99%の人の気持ちを考えたいですね」という

―― はてな界隈にはプログラマーの方が多くいますね。そこでどんなやりとりがあったんですか?

永上 ウェブサービスにおけるセキュリティの重要性や作り手の倫理観など、本当に色々な意見をいただきました。そこで感じたことは2つあります。第一にプログラマーのすごさ。プログラムは本当に奥深くて、何年やっても新しい発見が多いんです。件のやりとりでそこで活躍されている方のすごさを知って「僕じゃなれないな」と感じました。それがきっかけで、僕はプログラムを書くことを止めたんですね。自分が不向きだということに短期間で気づかせてもらったのは、かなり大きな収穫だと思います。

 もうひとつは、新しい若者のプログラマーに厳しい風潮です。下手なコードでもプログラムを書いたことに対して褒めるという文化があんまりなくて、穴を見つけては叩くという傾向を感じました。最近中学生や高校生のプログラマーがすごく増えていますが、彼らにとってあまり居心地が良くないんじゃないかと思うんですよ。

―― ただ、ネットで難しいのは初心者も企業も同じ世界でサービスを提供できることです。個人がテレビ番組を作って全国放送するようなもので、内容に嘘や間違いがあったら制作者のキャリアや規模に関係なく、やっぱりしっかり訂正しなくちゃいけないじゃないですか。責任を伴わない生産物はどうしても信用できないし、不意に迷惑をかけることもあったり。その辺はどうでしょう?

永上 あー、難しいですね。正直なところ、一人でプログラミングしていたときは考えていなかったですけど、最近は意識するようになりました。

 先ほど言ったように、今はプログラムを自分で書かず、人にお願いするようにしています。非モテSNSも30人くらいのチームで運営していて、僕がプロジェクトのマネージメントをしているんですよ。そうするうちに、生み出したものに対しての責任、マネージャーの責任みたいなものを感じるようになりましたね。

 今考えれば無責任なこともやっていましたが、やっぱり10代はそんなの気にせず、コードを書きまくってサービスを作ったほうがいいと思いますね。トガって、叩かれて、大人になって責任をしっかり持てるようになってという感じで。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン