振り返ったとき、本当にそこに初音ミクがいたら
―― そもそも、どうしてそこまで動く初音ミクにこだわったんです?
みさいる 歌ってほしかったんです、目の前で。その一点なんです。調声がうまい人の曲を聞いていると、実際にそこで(初音ミクが)歌っているみたいじゃないですか。振り返ったとき、本当にそこにミクがいたらいいなって。
―― 作ってみて、実際に「ミクがいる」生活はどうです?
みさいる まあ、いるとは言っても、いつもは首が取れてるんですよね……。しかも、1曲歌わせるためのモーションを作るのに1ヵ月以上は必要なんです。自分で好きな曲を歌ってもらおうと思っても、ホイッと動かせるわけじゃないのがヘコむところで。
―― 理想は曲に合わせて自動で口を動かしてくれることですね。
みさいる そうですね。衣装や顔の造形を調整したいということもあるので、その中から一番必要なところをやっていきます。まずは「笑顔」を作りたいんですよ。やっぱり笑っているのが大事だと思うんで、そこをやっていこうかなと。
―― まだまだ進化させていくと。
みさいる そうですね……足とか、色々なところがガタがきているところもあるので、作り直しながら。
―― どこまで進化させたいと思ってますか?
みさいる 本当は「MikuMikuDance」(関連記事)みたいに踊ってほしいんですよ。
―― おおー、それはすごい! それが最終目標ですか?!
みさいる いや、最終目標は本物の初音ミクが欲しいんです。
―― ほ、本物の初音ミク?
みさいる 話しかけたら会話してくれる。それはもう本当に夢ですけど。(人工知能による)意志があって……という。
―― 大学では技術系のサークルに入られているとお聞きしましたが、完成したときの周りの反応はいかがでした?
みさいる けっこう冷たかったです(笑)。いや、半分くらいは反応が良かったかな。
―― あれ、そうなんですか? ぼくなんかが見ると「すごい!」と思っちゃうんですけど。技術系の人から見ると、そこまでビックリするほどのことじゃないんですか?
みさいる 技術的に新しいことをやっているわけじゃないですから……アニメ風の顔の表情を作るところは新しいかなって思うんですけど、それ以外は大したことじゃないと思います。
―― ロボット作りは勉強はされたんですか。もしくは独自の方法というか。
みさいる あ、フレーム※を使わないっていうのは、かなり我流だと思います。普通は剛性が足りないと安定しないので、フレームに金属を入れますよね。そうしないと曲がったりしてモーションが再現できなかったりするんで。
だけど今回の制作には「スタイロフォーム」という素材を使っているんです。これだと軽くて太さがあって、外骨格的(外に骨がある)な感じになっているんですね。これならフレームがなくても剛性が得られるんじゃないかと。その他の部分、制御とかは本当に市販のものを利用しただけですね。
※ フレーム : ロボットの「芯」になる骨組みのこと。通常は動物と同じように骨があり肉をつけ……というやりかたで構成するが、今回の「等身大初音ミク」はその骨を省略し「硬い肌」にして作っている
―― となると、総重量は?
みさいる 6キロですね。
―― 軽いですね!
みさいる 一番良い状態で、首さえなければ、フラフラ立ってましたね。頭は2キロです。相対的に頭が重いんですよ。