初音ミクをはじめとしたボーカロイドの話題を求める人々が集まるSNSが「ボーカロイドにゃっぽん」だ。
他のコミュニティサイトと同様に参加は完全招待制で、参加者は現在約9000人。まもなく1万人に迫る勢いだ。「P」(プロデューサー)と呼ばれる主要なDTM作家はもちろん、彼らの熱狂的なファンや、PVなどでイラストを描くイラストレーターも多数参加している。
コミュニティ内では新曲のリリース情報やライブなどのイベント情報が話題として共有される。作家同士でライブをしたり、1枚のアルバムを作るために声をかけあうこともある。関係者が活動するためのサロンとなっているのだ。
にゃっぽんは現在、管理者の「わーいのひと」氏、インフラ管理者の長月あきと氏、それとインシデント管理者の「ゑのすけP」氏の3人で運営している。今そこで何が起き、そしてどうやって運営しているのか。わーいのひと氏と長月あきと氏に、運営の裏側を聞いた。
にゃっぽんは「オールナイトニッポン」のパロディ版
―― はじめに「ボーカロイドにゃっぽん」を始めたきっかけを教えてください。
わーい 初音ミクがリリースされた月に「ハツネギ」というSNSが出来て、それが2008年2月の時点で大体5000人弱くらいのコミュニティになっていました。とにかく人気はあったんですが、個人が作ったフリーのSNSサービスを使っていて、サーバーのレスポンスやデータの移行で問題が起きていたんです。そこで継続的な安定運用のために、自分たちですべてコントロールできるよう新規に専用サーバーを用意して、一からSNSを作ったのが「にゃっぽん」です。
―― ボーカロイドにゃっぽんという不思議な名前はどこから来ているんですか。
わーい 「オールナイトニッポン」のパロディとして始まったネットラジオのタイトルから来ています。すごく音として良い名前だと思ったので、それを使わせてほしいとお願いしたんです。番組自体はボーカロイドファンが好き勝手にしゃべる、まさにオールナイトニッポンのような感じです。掲示板でネタ投稿を募集したりして。そのファンが集まるサイトということで当初名前として使わせてもらいました。一時名前を変えようという動きもあったのですが、参加者の投票の結果、今の名前のまま運営を続けることになりました。
―― 年齢層は高い方ですか、低い方ですか。
わーい 正確なところは分かりませんが、初期は30代の参加者が多かったですよ。いわゆるMIDI世代で、ボーカロイドで再度DTMをはじめたという層です。自分の持っている過去のライブラリーをボーカロイドに歌わせるところからスタートした人もいるみたいなので。
長月 若いIDを持っている人たちは年齢層が高い方で、「DTM出戻り組」と呼ばれています(笑)。ただ、実際に有名Pの年齢を見てみると30代より20代が多いですね。学生の人たちも増えましたし、社会人でも20代中盤の人が多いです。現在の参加者は10代の中学生~高校生が増えてきている印象もあります。
―― ボーカロイドに若年齢のファン層が増えているということなんでしょうか。
わーい 純粋にファン層として広がっているというよりは、「ボーカロイドの影響を受けた友だちから話を聞いた、だからSNSに参加してみようと思った」という側面が大きいんだと思います。それまでまったく知らなかった人が知るきっかけになっているという。
長月 ボーカロイドの存在は少し前の「桜ノ雨」※の影響から入ってきたところが大きかったのかなとも思います。卒業ソングにまでなったということで一気に中高生の認知が高まったんじゃないかと。