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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第96回

「クライメートゲート」事件が壊すマスメディアの情報独占

2009年12月09日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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暴かれた温暖化データ「改竄」の証拠

 コペンハーゲンで国連気候変動枠組条約会議(COP15)が開かれているが、それにタイミングを合わせたようにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーの電子メールが大量にウェブで公表された。その中にデータの偽造を示すものがあり、ウォーターゲートにならって「クライメートゲート」事件と呼ばれて論議を呼んでいる。

 問題の電子メールは、イギリスのイースト・アングリア大学のサーバへの不正アクセスによって持ち出されたもので、11月17日に温暖化懐疑派サイトで公開され、世界中のメディアで取り上げられた。全部で1000通以上のメールがあるとされるが、特に問題になったのは次のような部分だ。

マイクの“Nature trick”を完成したところだ。最近20年のデータに実測データを加え、1961年以降のKeithのデータの下降部分を隠した。

 これは「ホッケースティック」として有名な、次の図のような年輪による平均気温データが改竄されたことを示している。元の「Keithの年輪データ」では、1961年以降ずっと気温は下がり続けているのだが、それを“Nature”(有名な科学雑誌)に掲載するとき、最近のデータを実際の気温にすりかえたことをtrickと呼んでいる。

Wikimedia Commonsより

図はWikimedia Commonsより(http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Global_temperature_1ka.png)

 これを書いたフィル・ジョーンズ教授は24日に、電子メールが本物だと認めた上で「年輪データに実測データを加えて正確を期した」と反論した。しかし最近の実測データが年輪データと大きく食い違うということは、過去の年輪データも当てにならないことを示す。論文では全体を年輪データとして紹介しており、実測データに合わせたことは断っていない。「下降を隠した」というのは、そういう意味だろう。

 この他にも、データをグラフにするとき気温を高く見せるスクリプトが発見されている。またIPCCの結論と異なる論文を発表した学術誌“Climate Research”から査読委員を引き上げる話が出ている。IPCCの研究者はよく「懐疑派の研究は学術誌には出ていない」とその信用性を否定するが、このように組織的に懐疑派の論文を排除する工作が行なわれていたわけである。

 もともとIPCCは、気候変動の影響を調査するために組織され、国連や各国政府から巨額の研究助成金を得ている政府機関であり、中立な学会ではない。彼らが資金を得るために問題を誇張するのは当然で、その報告書は政府に都合のよいプロパガンダとして割り引いて受け取ったほうがよい。これを絶対の真実と考えて「温暖化ガスの1990年比25%削減」などという非現実的な国際公約をするのは軽率である。

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