圧倒的な臨場感に軽くショック!?
VSA-919AHの実力は如何なものか、このアンプとの組み合わせが推奨されているパイオニアの「International Project SERIES 3」スピーカーシステムで試聴してみた。
構成は5.1chで、フロント(S-31-LR)2本+センター(S-31C)1本+リア(S-31B-LR)2本+サブウーファー(S-51W)1本の6本。フランス人デザイナーによるスタイリッシュなスピーカーだ。単体でも購入できるが、セットでも合計16万円弱という非常にリーズナブルな製品である。
最初に、Blu-rayの映画ソフトから再生。今回の特集では、サラウンド効果を検証するためにすべての機器で同じソフトを再生しているが、まず圧倒的にサラウンドの包囲感や臨場感が違うことに、予想はしていても驚かされる。
筆者も普段は自宅に大型スピーカーをフロントに据えた5.0chシステムを設置しているが、それでも新鮮な驚きを感じるほどだ。何より、AVアンプとスピーカーのセットで、BDレコーダーを加えたとしても30万円ほどの投資でこれだけの音が楽しめるのである。確かに、残る問題は設置スペースぐらいだろう。
次に、これも今回共通で試聴している、BSデジタル放送をエアチェックした映画タイトルの音声(MPEG-2 AACの5.1ch)を再生してみたが、これがまた良いのだ。HD音声同等とはさすがに行かないが、通常の鑑賞では充分過ぎる音質、迫力、臨場感が味わえた。非常に力強い、というか厚い音は、恐らくAVアンプとスピーカー双方の優れた特性によるものだろう。これには、自宅システムにちょっとした自信のあった筆者も、軽いショックを覚えたほどだ。
2ch音声のエアチェックソフトも再生してみた。テレビ放送の5.1chサラウンド放送はまだまだ少ない。特に音楽ものや通常番組などは、2chで放送されているものの方が多い。それらを高音質サラウンド再生できるのなら、万々歳だ。
VSA-919AHには、そのための「A.S.R」(アドバンスド・サウンドレトリバー)という機能も搭載されている。13種類の「アドバンスドサラウンドモード」を使えば、2chであっても5.1chに近いサラウンド音場を付加することができる。例えば、音楽ライブなら会場のざわめきや響き渡る残響音、スポーツ中継などであれば、その場で見ているような臨場感や空気感が出てくる。
これらはバーチャルサラウンドでも体感できたことだが、単体のAVアンプやスピーカーの手にかかると、さらにセパレーションがはっきりしてマルチchに近い効果が得られる。
サラウンド専用設計がAVアンプの強み
メーカーも言うように、安価でも専用に設計されたAVアンプには、それなりの力があるということだ。しかも、より上級のアンプで培われた技術やノウハウが投入されることによって、コスト面とのバランスを取りながら、しっかりした設計がなされている。
これはパイオニアに限らず、他メーカーでも同様だろう。しかし、「専用」であるからこそ、AVアンプには様々なサラウンド方式を再生しなければならないという宿命がある。新しい方式が登場すれば、それに対応して行かなければならない。これは、どんなに高価なアンプでも同じだ。
しかし、その度に買い替えるのでは、とてもたまったものではない。ベテランユーザーの中には、以前購入したアンプが最新のサラウンドに対応できず、悔しい思いをしていらっしゃる方も少なくないだろう。他の方式に変換して再生したり、BDプレーヤー側で(対応していれば)デコードしてから、チャンネル全部をアナログ接続して凌いだりするわけだ。
コストや技術の面でなかなか難しいとは思うが、例えばパソコンのようにソフトウェアのアップグレードや、モジュールのアップグレードなどで、ある程度対応できるようにして貰いたいものである(実際、一部のアンプやBDレコーダーなどでは行なわれている)。
メーカーにとっては買い替えてもらった方がいいに決まっているが、これだけエコが叫ばれている時代、ひとつの製品を長く使うという設計思想があっても良いように思う。いわゆる2chステレオ再生のピュアオーディオなら、何十年前のアンプであっても音が出せるのだから。
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