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プライベート・クラウドのためのオールインワン製品

Tivoliがクラウドを管理する—IBM CloudBurst がV1.2に

2009年11月06日 09時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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 日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)が、エンタープライズ・プライベート・クラウド向けのサーバーインフラをワンパッケージで提供する「IBM CloudBurst V1.2」を発表した。

IBM CloudBurst V1.2製品概要

IBM CloudBurst V1.2製品概要

 同製品は、クラウド環境構築のためのサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアを組み合わせ、導入サービスまでパッケージしたもの。「これを買えば、明日から(は、言い過ぎだが)プライベートクラウドを構築/運用できる」製品というわけだ。

 CloudBrustは、春先に1.1が発表されたが、V1.2では、リソースの使用量による従量課金を目的とした課金管理機能「IBM Tivoli Usage and Accounting Manager(ITUAM)」や、電力監視機能を追加したことが目玉だ。

CloudBtustの構成要素

 IBM CloudBurst V1.2は、具体的には以下の要素によって構成される。

  • ブレードサーバー
  • ストレージ
  • ネットワーク
  • 仮想化機能
  • クラウド管理ソフトウェア
  • クイック・スタート・サービス(導入サービス)

このうち、ブレードサーバーには、「IBM BladeCenter HS22 クラウド・マネージメント・ブレード」が、ストレージは「IBM System Storage DS3400 FC ストレージが使われる。

TSAM概要

TSAM概要

 CloudBrust V1.2の、心臓部とも呼べるのが、“クラウド管理ソフトウェア”と銘打たれた「IBM Tivoli Service Automation Manager V7.2」、略して「TSAM」だ。TSAMは、クラウドの仮想環境をマネージメントする。つまり、ユーザーの要求にあわせて、サーバーのリソースを仮想環境に割り当てるのがTSAMである。また、仮想イメージのディプロイや、予約管理(1カ月後にこの仮想環境を利用したい、といった使い方)なども行なう。

 TSAMはまた、クラウドの管理者やユーザーに対して、Webベースのポータル画面も提供する。上記したITUAMやITMからの情報が、まとめてTSAMのポータル画面上に表示されるから、提供しているクラウド全体のリソース管理や課金管理が可能というわけだ。

 つまりTSAMは、ハードウェアをはじめとした、クラウド全般の管理を一元的に管理するソリューションとなっているのだ。TSAM V7.2自体は、1コア21万3300円で、単体でも販売される。

 CroudBrust V1.2では、TSAMが入ったブレードをHA構成にするなど、可用性も高められている。これは、前バージョンの1.1が、開発向け/テスト向けという位置づけであったのに対し、1.2が実運用をにらんだ製品であるためだ。

価格は1900万円〜

 CloudBrust V1.2の価格は、大きく分けて「エントリー」「スタンダード」「アドバンス」の3つの構成に分類される。このうち、スタンダードとアドバンスは未だ価格が決まっていないが、エントリーの参考価格は3000万円だが、現在は1900万円の特別価格で提供される。なお、CloudBrust V1.1から1.2へのマイグレーションは無償。

 各構成は、ブレード数、ストレージ拡張ユニット数、ストレージ容量、ネットワークの違いによって分けられる。

エントリー構成
ブレード数4、ストレージ拡張ユニット0、ストレージ容量5.4TB(12ディスク)、ネットワーク1Gb2系統
スタンダード構成
ブレード数7、ストレージ拡張ユニット1、ストレージ容量10.8TB(24ディスク)、ネットワーク10Gb2系統
アドバンス構成
ブレード数14、ストレージ拡張ユニット3、ストレージ容量21.6TB(48ディスク)、ネットワーク10Gb2系統

 クラウド環境をワンパッケージで提供するCloudBrustだが、想定される利用者は誰なのか? IBM ソフトウェア事業 Tivoli事業部 理事 事業部長の日野義久氏は、1.1と同じく開発・テスト環境を構築するユーザーを筆頭に挙げつつも、プライベート・クラウドのエントリーとしての用途や、大規模データセンターへの導入、研究所・大学などになるのではないかと語る。1.1の出荷台数は数台に留まるものの、これは1.2を早い時期からアナウンスしたことも影響していると言い、1.2は実際、購入の手続きに入っているケースもあるとのことだ。

IBM ソフトウェア事業 Tivoli事業部 理事 事業部長の日野義久氏(左)と

 とはいえ、CloudBrustの使われ方はまだまだ未知数だ。「今は、(クラウドの)“波”を作ることに注力したい」とする日野氏は、同質な業務を多く持っている企業のシステム一本化需要などがマッチするのではないか? と、記者発表の場で語ったが、いずれにせよ、想定利用者は今後の動向次第ということになる。

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