「F2を切ろう」が目標だった
── CCDの次はレンズについてですが、GRD IIより明るいタイプを採用しましたね。
樋口:まずデジカメ全般でいえば、暗い場所での撮影画質についてユーザーの満足度が低いんです。GRシリーズも同じ傾向で、そこに手を入れないと画質をワンランク上げられない。そこで高感度に強いCCDと同時に、より明るいレンズの採用を考えました。
大野: 今回は「F2を切ろう」というのが目標でした。GRD IIがF2.4でしたから。
樋口:レンズを大口径にして、明るくするとシャッタースピードを速くできるので、その分、暗い場所での撮影時にISO感度を上げなくて済むし、手ブレや被写体ブレも置きにくくなるんです。ですからF2を切ったのは非常に大きいことです。
F2.4からF1.9だとあまり違わないようですが、実際に撮ってみると結構、差を感じられます。さすがに一眼レフほどの「ぼけ」は出ませんが、少し立体感が出てくる印象です。
── F2を切る明るいレンズを開発するのは大変ですよね。
大野: 大変です。でもおかしなボケ方はしないように気をつけました。GRシリーズは、周辺まできちんと解像するのがウリなので、絞り開放(つまりF1.9)で、前モデル(F2.4)と同等の画質を実現してます。同時にゴーストを減らしたり色収差を減らしたりとレベルは上がってます。
画質か、互換性か 今回は「画質を優先」
── レンズ関連でいえば、マクロ時のAF動作音やAF速度も改善されてますよね。マクロモードにすると、レンズ群の一部が動いて最適なセッティングに変わるとか……。
大野: マクロ時のレンズの動作音は賛否両論ですね(笑)。実は「CX1」の前の機種である「R10」から改善する技術を積んできました(関連記事)。
マクロモードに切り替えると、レンズの位置を微妙に調節して像面湾曲を最適化するので、例えば書類などを撮ったときでも周辺部まできれいに写ります。マクロ時の画質向上がメインですね。
── そのせいか、今回のモデルではレンズアダプターも新しくなって、従来モデルとの互換性がなくなりました。
樋口:バッテリーは従来との互換性を維持しましたが、レンズアダプターは大きくなってしまいました。レンズ品質を向上しようとすると、どうしても互換性などが犠牲になりますが、逆にそこを固めてしまうとレンズをよくすることができないというジレンマがあります。今回は画質を優先しました。
ちなみに、今回はワイコンだけでテレコンは用意してません。検討はしたのですが、GRD IIIにふさわしい高画質を得ようとすると、どうしても径が大きく重くなってしまうんです。ちょっと使ってもらえないサイズになってしまったので、商品性を考えて断念しました。