ソニーからノイズキャンセルヘッドフォンの新モデル3機種が21日に発売される(関連記事)。
電車の通勤などでヘッドフォンを愛用している人にとって、周囲の雑音を取り除くノイズキャンセル機能はかなり気になるはず。実際のところ、ノイズキャンセル機能があるとどれだけ騒音が気にならなくなるのか?
ノイズキャンセルによる音質への影響など、最新モデル3機種を実際に使用して、気になる数々のポイントを厳しくチェックしてみた。
アナログノイズキャンセル採用の
スタンダード機「MDR-NC33」
本機は予想実売価格が約8000円前後と、ノイズキャンセルヘッドフォンとしてはスタンダードなモデルだ。
一般的なアナログ式のノイズキャンセル技術を採用したモデルだが、新たにドライバーユニットを垂直に配置することで、音質と装着感を向上した「バーティカル・イン・ザ・イヤー」方式を採用したほか、イヤーピースもフィット感の高い形状とした。
耳に当たる部分を柔らかくして装着感を高め、ヘッドフォン本体との結合部分を硬くしてイヤーピースが潰れることによる音質への影響を抑えた「ハイブリッドイヤーピース」を採用。結果としてノイズキャンセル性能も約87.4%(8dB)から約90%(9dB)と向上している。
筆者は外出時には旧モデル「MDR-NC22」を使用しており、その後継モデルの登場は気になるところだった。その分、より厳しくチェックしてみたのだが、困ったことに買い換えを検討したくなるほどの進化を実感してしまった。
ノイズキャンセルのオンとオフによる音質の変化は、従来に比べるとかなり少なくなった。これは案外気になるもので、MDR-NC22はやや高音がキツくなる感じがあり、結果として電車内などのよほどうるさい場所以外では、高域が自然に聴こえるオフで使うことも多かった。
しかし、MDR-NC33は音質自体がよりナチュラルな方向になった。輪郭のくっきりとした音色は共通したものがあるが、高域のシャリシャリした感じは抑えられ、うるさく感じたり、長く聴いていても耳が疲れるようなこともない。
新形状のバーティカル・イン・ザ・イヤー方式も、見た目は独特なのだが装着してみると円形のユニット部分がかさばることもなく、すっきりと耳に収まっている印象だ。
ボーカルはナチュラルな質感で、声の張りや吐息のニュアンスまでしっかりと再現される。ちょっと聴いた印象だとずいぶんと大人しい音質になったと感じるが、輪郭がキリッと立った感じや、個々の音の明瞭さはしっかりと再現される。聴き心地がよくなり、じっくりと聴き込める音になったと言える。
唯一気になったのは、低音がややゆるいことで、個人的には量感を控えてもう少しタイトな低音の方がよかった。このため、ベースの刻むリズムがややダルく感じたり、音色が一本調子になってしまうこともあった。
これは、ノイズキャンセルヘッドフォンの音響特性で、もともと低域がかなり盛り上がっていることが影響しているようだ。暗騒音を構成する成分に低域成分がかなり含まれるため、ノイズをキャンセルするための逆位相の低域成分を再生する必要があるからだ。この音質的な問題を解決するのが、次に紹介するデジタルノイズキャンセルヘッドフォンだ。
