このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

騒音を大幅に抑制して、なおかつ高音質も追求!

電車でも美術館の静けさを! ソニーの新世代NCヘッドフォン

2009年06月18日 16時00分更新

文● 鳥居一豊

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

デジタルノイズキャンセルで
待望のカナル型モデル「MDR-NC300D」

着用イメージ

「MDR-NC300D」の着用イメージ

 最後に紹介する「MDR-NC300D」は、“デジタル”ノイズキャンセル採用としては初のカナル型モデルだ。こちらもユーザーの熱い要望に応えて開発されたもので、デジタルノイズキャンセルの実力を知る人にはまさに待望のモデルである。

 デジタルノイズキャンセルのためのソフトウェアエンジンは「MDR-NC600D」と共通だが、小型化のために汎用のDSPではなく専用チップ「インテグレーテッドDNCプロセッサ」を開発している。

 これにより、ヘッドフォンの音響特性を補正するデジタルイコライザーに加え、独自のデジタルパワーアンプ「S-Master」をヘッドフォン用にチューニングして搭載した。つまり、本機は単なるノイズキャンセルヘッドフォンではなく、ノイズキャンセル機能付きヘッドフォンアンプを備えたヘッドフォンというわけだ。予想実売価格はおよそ2万5000円とやや高めだが、ヘッドフォンアンプ付きと考えると十分にお買い得感はある。

 外出時で使うiPodなどの携帯プレーヤーやモバイルノートパソコンのヘッドフォン出力は、出力レベルが低めなこともありヘッドフォンによっては音が貧弱に感じがちだ。そのため、マニアの間ではヘッドフォンアンプを使って高音質化を図ることも少なくない。

コントロール部

ノイズキャンセル機能のコントロール部はアンプ内蔵のためやや大きめ

 MDR-NC300Dを初めて見たときにはノイズキャンセルユニット部分がやや大きいと感じたが、ヘッドフォンアンプ内蔵ならば十分にコンパクトと言える。ポータブル機器と組み合わせることの多いカナル型ヘッドフォンとしてはなかなか魅力的な機能だ。

付属品

付属品一覧。イヤーピースは6種類を同梱する

 イヤーピースは大きさ(3種)と高さ(3種)のバリエーションを備えた7種類を用意し、耳へのフィット感を高めるだけでなく、イヤーピースのすき間から侵入する外部の騒音をよりシャットアウトできる。

 大きさに加えて、高さにもバリエーションを加えた効果は大きい。従来、筆者は「M」サイズのイヤーピースを使用していたが、背の高い「ML」サイズに交換してみると、よりフィット感が高まり、装着しただけでずいぶんと外部の音が静かになったと感じた。

 ノイズキャンセル性能にも差が出てくるので、サイズ選択はじっくりと吟味したいところだ。もちろん、イヤーピースは前述の2種類の硬度のシリコンを組み合わせたハイブリッドイヤーピースなので、耳栓のような圧迫感もなく快適に装着できる。そして、好みに応じてノイズキャンセルの効き具合を調整できる「NCオプティマイザー」も備える。

 ノイズキャンセル性能は約98.4%(18dB)で、その効果は「MDR-NC600D」とほぼ同等。実際に外出時に電車などでも使ってみたが、電車の走行音などはほぼ完全にシャットアウトできた。音楽を止めてノイズキャンセルだけを効かせると、人の声の付近の周波数は耳に入ってくるが、それも随分遠くなったように感じる。満員の電車内ですぐそばの人が会話をしていても、ノイズキャンセルだけで数メートル遠ざかったようになる。音楽を再生すれば音量をかなり絞ってもほとんど外部の音は聴こえない。

 音質的にもかなりの実力で、まず中低音の情報量の多いことに気がつく。高域は細かい音やエコーの広がりなどはしっかりと再現するものの、耳障りなにぎやかさはなく、上品な音にまとまっている。

 低音域はさすがに「MDR-NC600D」ほどの伸びはないが、低音がゆるんでしまうこともなく、適度な量感のある引き締まった音になっている。最近気に入ってよく聴いているエリック・モングレインの独特なラップタッピング奏法によるギター曲を聴くと、ギターソロとは思えない多彩な音と、弦の爪弾きや手のひらでギターの胴を叩くリズムの音の積み重ねが美しく再現され、ギターを水平に膝の上に置いて奏でる姿が目に浮かぶようだ。

 解像度が高いにも関わらず、線が細くならず、アコースティックな響きなど厚みのある音が聴けるのは素晴らしい。


音質ではNC600D
外出用ならNC300Dがおススメ

 ノイズキャンセルヘッドフォンは、その効果は認めるものの、音質的な影響から敬遠する人も少なくないだろう。

 しかし、デジタルノイズキャンセルヘッドフォンはそんな人こそぜひ試してほしいモデルだと感じた。耳栓に似た、あるいは無響室に居るような、周囲の音が強引に消えているような不自然さがなく、音の響きの良い静かなホールや美術館にでもいるような上品な静けさが得られる。

 そんな理想的な環境が誰でも比較的現実的な価格で手に入れられるのはかなりうれしい。音質を追求するなら「MDR-NC600D」が有利だと感じたが、ちょっとした外出でも手軽に使えて電車内でもどこでも「静けさ」が得られる「MDR-NC300D」の方が実用性は高そうだ。

■Amazon.co.jpで購入

■関連サイト

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中