使い勝手の向上など
リニューアルした「MDR-NC600D」
ソニー独自のデジタルノイズキャンセル技術を採用したモデルが「MDR-NC600D」だ(実売予想価格4万円前後)。デジタルノイズキャンセルのメリットは、ノイズ低減性能の向上が大きいが、個人的には音質がより自然になることの方が大きいと感じている。
これは「MDR-NC33」で触れた低音域のゆるさなどの改善だ。デジタル信号処理の際、元々低音域を持ち上がっていた特性をデジタルイコライザーで補正し、再生音が適正な特性になるようにしている。
こういった緻密な処理ができるのがデジタルならではのメリット。ヘッドフォンのようなポータブルな機器では精度の高いアナログイコライザーを追加することなど不可能だろう。
結果として、その音は低音がしっかりと伸びながらもきちんと締まり、ベースの弾むような弦の鳴りや身体が動くような躍動感までしっかり再現できるようになった。
カナル型に比べてドライバーユニットの口径も40mmと大きいため、音に余裕がある。デジタル技術をふんだんに採り入れたヘッドフォンでありながら、音自体は極めてアナログ的、というか自然な聴き心地になっているのも意外だった。
解像度の高いクリアな音質傾向でありながら、楽器の音色や声の再現が実に生々しく、客席というよりステージに自分が立ち、すぐそばで音楽を聴いているような感じが味わえた。
99%(約20dB)低減というノイズキャンセル性能は、数値上の評価でも本機がもっとも優れるが、実際のところパソコンのファンノイズや家の近くを通る大型トラックの走行音などはほとんど消えてしまった。
もちろん、ノイズキャンセルのためのフィルター特性は環境に合わせてA/B/Cの3つのモードを切り替えられるので、最適なモードを選べばどんな場所でも優れたノイズキャンセル性能を発揮できるだろう。切り替えといっても、自分でモードを選ぶ必要はなく、「AI NC MODE」ボタンを押すことで自動的に切り替わる(1秒以上長押しすることで手動切り替えも可能)。
前機種との違いは外観のロゴ印刷がシルバーからゴールドに変わった点のみ。ユニットやデジタルノイズキャンセル機能などは共通だ。大きく変わったのは付属のキャリングケースで、一回りコンパクトになることで持ち運びがしやすくなっている。これは、さまざまな場所に持ち歩きたいというユーザーの声に応えたものだ。