AIRは、WindowsやMac、LinuxなどのOSで動作するアプリケーションを作成し、配布して使ってもらうために必要な環境や開発ツールなどの「道具」すべてを提供するインフラです。今回は、特に初めてAIRに触れる方や、興味を持っているが、まだ理解できていない、よく分からないという方のために、概要と特徴をご紹介します。まず前提となるキーワードを元にして、AIRをご紹介します。
AIR――名前の由来と概要
AIRは、「Adobe Integrated Runtime」の略称です。次のように定義されています。
The Adobe Integrated Runtime (AIR)
- is a corss-operating system runtime
- allows Rich Internet Applications (RIAs) to run as desktop applications
- leverages existing web development skills to build desktop software
日本語では以下のようになります。
アドビ統合ランタイム(AIR)は、
- クロスオペレーティングシステムのランタイムです
- リッチインターネットアプリケーション(RIA)をデスクトップアプリケーションとて実行できるようにします
- デスクトップアプリケーションを作成するのに、得意のWeb開発スキルを活用できる環境を提供します
ここで次のようなキーワードが出てきました。これらを理解することでAIRの概要を把握できます。
- ランタイム
- クロスオペレーティングシステム
- リッチインターネットアプリケーション(RIA)
- デスクトップアプリケーション
ランタイム(Runtime) とは
「ランタイム」 (Runtime)は日本語では「実行環境」と訳し、アプリケーション本体を稼動させるために必要なプログラムを意味します。この「ランタイム」がAIRを理解するためのキーワードになります。
AIRランタイムは、AIRアプリケーションが実行するための環境を提供するプログラムです。AIRの定義1.に「クロスオペレーティングシステムのランタイム」がありますが、ランタイムはAIRアプリケーションを実行するための土台として働くプログラムです。つまり、AIRアプリケーションはランタイムという補助的なプログラムの助けを借りて動作します。
実際には、AIRランタイムはAIRアプリケーションをインストールするための環境を提供し、実行時にはOSとAIRアプリケーションの間で働きます。AIRランタイムはAIRアプリケーションをインストールして実行する前にセットアップしておく必要があり、アドビ システムズのサイトから無償でダウンロードできます。
クロスOSを実現する仕組み
なぜ、AIRがOSとランタイムの2重構成なのかを理解するために、「クロスオペレーティングシステム」(Cross-Operating System:以下、クロスOS)を実現するための仕組みを考えます。これは「同じアプリケーションがそのまま複数(これが「クロス」です)のオペレーティングシステムで動作する」ということを意味します。つまり、Windows VistaやWindows XP、Mac OS、LinuxなどのOSで、同じAIRアプリケーションをインストールして使用できます。
通常、OSが異なると、アプリケーションの実行ファイルやインストーラはそのOSに合わせて構築し直す必要があります。このことは、たとえばFlashやDreamweaverにWindows版とMac版があり、Windows版はMac OS上では動かないことからも分かります。
クロスOSを実現するために、ランタイムがその役割を果たします。AIRアプリケーションがWindows、Mac OS、Linuxで動作するのは、Windows用、Mac用、Linux用のランタイムが用意されているためです。つまり、AIRアプリケーションは、Windowsマシンでは「Windows用のランタイム」、Macマシンでは「Mac OS用のランタイム」、Linuxマシンでは「Linux用のランタイム」がインストールされていれば動きます。Windows用やMac OS用のAIRランタイムにより、一度作成したAIRアプリケーションは作り直すことなくクロスOSで動作するのです。
詳細は異なりますが、AIRランタイムと同じようなクロスOSを実現する類似の形態として、「Javaバーチャルマシン(VM)」や「.NET Framework実行環境」があります。