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どれくらいの省電力効果があるかInteropで見よう

MOTTAINAI精神をネットワークに持ち込むアラクサラ

2009年06月09日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「コスト削減」の嵐にかすみがちな去年のトレンド「グリーンIT」だが、国産ネットワーク機器ベンダーであるアラクサラネットワークス(以下、アラクサラ)は、省電力技術を追求し続けている。ここではInterop Tokyo 2009での同社の見所の1つとなる省電力技術を紹介する。

常時電源オンはむしろ非常識

 アラクサラの省電力への取り組みは、昨今のグリーンITブームから始まったものではない。アラクサラは2004年の会社設立当初から環境負荷の低減を製品作りに盛り込むことを明言していた。当時、和田宏行社長にその話を聞いたときは、あまりピンと来なかったが、今となっては先見の明があったと考えられるだろう。

ダイナミック省電力を搭載するアラクサラの「AX6600S」シリーズ

 経済産業庁が2008年2月に発表した資料によると、トラフィックの爆発的な増加で、ネットワーク機器の電力消費量は2025年に現在(2006年当時)の約13倍に跳ね上がるという。これはサーバやPCに比べてもはるかに大きい。こうしたネットワーク機器の電力消費を押えるために、同社が提案するのが、まず部品やアーキテクチャレベルの工夫。つまり、少ない電力で、高い性能を引き出す製品作りだ。これはハイブリッドカーなどの開発に等しいモノがあり、多くの会社が実践している。

 アラクサラはさらにユーザーに対する発想の転換まで求めている。今までネットワーク機器は常時電源オン&フル性能が当たり前だったのに、大胆にも「使わないときはネットワーク機器も電力オフ」にしようと提案しているのだ。

 もちろん、これには根拠がある。多くの企業では、システム全体で見ると、深夜や休日ではトラフィックは激減するという事実だ。仮にこの休日と深夜(0~6時まで)の電力をまるごと節減すると、「企業の場合、1年の約半分はいわばMOTTAINAI TIMEになり、大学でも2/3が削減できます」(同社)という試算が可能になるのだ。アラクサラはこうしたMOTTAINAI TIMEに省電力システムを提案している。

コアとスイッチで利用する機能を分ける

 このダイナミック省電力システムの面白いところは、コアとエッジで適用する技術を分ける点だ。

内部の動作クロックを下げたり、待機系ユニットの給電をOFFにする(同社Webサイトより

 たとえば、常時動作が当たり前となっているサーバをつなぐコアスイッチの場合は機器を落とすのではなく、トラフィックに応じて性能を落とす。これは先頃発表された「AX6600S」などおもにシャーシ型スイッチで搭載されている機能で、装置を再起動することなくスイッチユニットの動作クロックを動的に制御し、通常モードと省電力モードを切り替えることで実現する。また、シャーシ型スイッチにおいては、バックアップ系のスイッチユニットへの給電をオフにしておく。この2つの電力制御をスケジューリングして使うことで、実に効率的に電力を抑えることができる。

エッジスイッチでは、未使用のポートをスリープ状態にする(同社Webサイトより

 一方で、ユーザー側に近いエッジ側はより即物的だ。つまり、未使用のポートは省電力モードにしたり、場合によってはスイッチ自体をスリープさせる。クライアントの台数が多ければ多いほど、こうした省電力機能は効いてくる。

 このようにアラクサラの省電力技術の製品への導入は進んでいるのだが、実際にはユーザーのマインドが大きな障壁となる。多くの管理者やエンジニアにとってみれば、今まで常時フル稼働が常識だったわけで、必要なときだけ全力投球する部分稼働という考え方は、一朝一夕では受け入れがたいわけだ。これに対しては、長い時間を使って啓蒙を進めていく必要がある。

 その1つの試みが、Interop Tokyo 2009で予定されているデモンストレーションだ。会場ではプレゼンテーションと連動し、オフィスを模した環境を作り、実際の省電力効果を数値で見せるという。ネットワークとグリーンITに興味がある方は、省電力効果やスタンバイからの復帰などを実際に見てみるとよいだろう。

 アラクサラは今後のR&Dとして、トラフィック量に応じてさらに細かく電力制御を行なう技術の開発を進めている。今までの「使わないときにオフにする」という省電力技術はPCや家電でも実装されているが、トラフィック量をトリガに無駄な消費電力を変えるというのはネットワーク機器ならではのチャレンジだ。冒頭にも話したとおり、環境負荷への軽減を掲げるアラクサラの方針にぶれはない。

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