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松下電器、国内初のPLCアダプターを12月9日に発売――実売価格は2万円前後

2006年11月13日 18時23分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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PLCアダプターのデモ
コンセント経由で家庭内ネットワークを構築できるPLCアダプター。会場ではノートパソコン“Let'snote”に蓄積したHD映像を転送して、セットトップボックスで大画面TVに表示するデモを行なった

松下電器産業(株)は13日、東京・浜松町の世界貿易センタービルにプレス関係者を集め、家庭内の電力線を通じて家庭内LANを実現する“PLCアダプタースタートパック”『BL-PA100KT』と“増設用アダプター”『BL-PA100』を12月9日に発売すると発表した。価格はオープンプライスで、編集部による予想実売価格はスタートパックが2万円前後、増設アダプターが1万3000円前後。

PLCモジュール
同社独自の積層(6層)基板技術“SIMPACT”で小型化を実現したという組み込み用の“PLCモジュール”

同時に、PLCアダプターを構成する組み込み用モジュールおよびPLC通信チップについても、パナソニック コミュニケーションズ(株)とその子会社のパナソニックCC宮崎(株)を通じて12月1日にサンプル出荷される。価格は個別相談となる。

藤吉一義氏
パナソニック コミュニケーションズの代表取締役社長の藤吉一義氏

発表会には、松下電器産業の役員で、パナソニック コミュニケーションズ(株)の代表取締役社長も務める藤吉一義氏、パナソニック コミュニケーションズのホームネットワークカンパニー ホームセーフティカテゴリー カテゴリーオーナーの小林英次氏、松下電器産業 パナソニックマーケティング本部PDCグループ グループマネージャーの原 昭一郎氏らが出席し、開発の背景や製品の特徴などを説明した。

小林英次氏 原 昭一郎氏
ホームネットワークカンパニー ホームセーフティカテゴリー カテゴリーオーナーの小林英次氏松下電器産業 パナソニックマーケティング本部PDCグループ グループマネージャーの原 昭一郎氏

今回発表されたPLCアダプターは、松下電器産業が推進するHD-PLC方式を採用する電力線通信アダプター。HD-PLC方式は周波数帯ごとに細かく信号をカットできるという“Wabelet OFDM”方式によって、既存のアマチュア無線や短波放送などへの影響を最小限にできる特徴がある。既存のFFT based OFDM方式では減衰量が-13dB程度だが、Wavelet OFDMでは-35dBと大きく減衰できるため、ほかの電波機器への影響が最小限になるとメリットを説明する。特にアマチュア無線やラジオ日本の使用する短波帯域をフィルタリングしていると強調した。

藤吉一義氏
PLCアダプターの前面と背面。上部にSETUPボタンが用意され、子機を増設したときも1タッチで設定が完了する

PLCアダプターを幅広いユーザーに普及するため接続手順も簡素化しており、工場出荷時に個体(親機と子機1セット)ごとで異なるAES128bitの暗号化キーを設定済み。購入後すぐに家庭内のコンセントに接続して、親機側をブロードバンドルーター(もしくは光/ADSLモデムなど)にEthernetケーブルで接続して、子機側をパソコンなどがある部屋のコンセントに接続し、パソコンとEthernetケーブルで接続するだけで利用開始できるという。

PLCアダプターの設定手順 接続速度をLEDで表示
PLCアダプターの設定手順接続速度をLEDで表示

増設アダプターを購入した場合にもパソコンなしで設定可能で、親機と隣接するコンセントに接続して5秒以内に両者のSETUPボタン(アダプター上部にある)を押すと、自動的に機器の接続設定と暗号化設定が行なわれる。この暗号化設定によって、電力線を通じた情報漏洩も防げるとしている。

PLC基板 電源基板
PLCアダプターの中身。PLC基板同じく電源基板。こちらで輻射を押さえたり、電源回路からPLC信号を取り出し/抽出を行なう

親機1台に対して子機を最大15台まで接続でき、ネットワーク機器を最大16台まで利用可能。転送速度は理論値で最大190Mbps、実行値は約80Mbps程度になるという。通信速度はLEDの点灯状態で確認でき、3つLEDが点灯していると30Mbps以上、2つでは10~30Mbps、1つでは10Mbps未満となる。

IP-AVコンバーター
デモで使われたセットトップボックス“IP-AVコンバーター”は参考出品

PLC方式ではコンセント1つを電源供給以外に使う必要があるため、家電機器への電源供給が制限される可能性もある。同社では電源タップ経由でのPLCアダプターの利用は推奨していない(電源タップによっては通信速度の低減につながるため)。そこで、2007年1月販売予定として、3口の電源タップを内蔵したアダプター、および3口のEthernet端子を持つPLCアダプターも開発している(いずれも会場で参考展示された)。

HD-PLC方式のメリット
同社が推進するHD-PLC方式のメリットを大きくアピールしていた。図はWabelet OFDMによって、ほかの機器が利用する周波数帯への影響を最小限に抑えられるというもの

同社では2010年には世界で1億台、日本ではその約1割にあたる990万台の需要を見込んでいる。当初はパソコンユーザーなどいわゆる“アーリーアダプター”を対象に販売し、その後はモジュールを家電機器などに内蔵して、ネットワーク経由でのメンテナンスが行なえるようにしたい、と未来像を展開。

ただし、PLC方式には同社が推進するHD-PLC方式のほかにHomePlug PLC、DS2 200といった規格の製品が海外ですでに販売されており、今後はこれらの方式を使った製品の国内販売も予想されている。同社ではHD-PLC方式のメリットをIEEE(米国電気電子学会)/ESTI(欧州電気通信標準化機構)/PLC-J(高速電力線通信推進協議会)にアピールしてデファクトスタンダード化を目指すとともに、既存方式との共存を実現するべく調整を進める、としている。

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