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【WPC TOKYOレポート Vol.10】Vista&Office担当者にインタビュー「貴方のお気に入りの新機能はなに?」

2006年10月20日 19時52分更新

文● 編集部 小西利明

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Vistaのマーケティングを担当する同社 コンシューマWindows製品部 シニアプロダクトマネージャの倉本玲子氏に、多くのユーザーが気になるであろう、既存パソコンからVistaへのアップグレードについてを中心に話をうかがった。

 
[ASCII24] Vistaはハードウェアに対する要求が厳しくなり、移行をためらうユーザーは少なくないと思われます。XPや2000を使い続けているユーザーに移行を促すため、どういう施策を用意しているのでしょうか。
 
[倉本] まず今市場に出ているパソコンでは、“Windows Vista Capable PC”があります。これはいわゆるVistaの基本的な機能を体験していただけるもので、要件も512MBのメモリー容量、プロセッサーも800MHzと低く設定されています。ハードルとしては、現在メインストリームで販売されているパソコンから考えれば、まったく問題ないものになります。現在Windows XPユーザーの方の環境と似通った形で、Capable PCの設定条件は設定されています。
一方で“Premium Ready”というものも始まりまして、これはWindows Aeroなどが使える、いわゆるVistaの上位機種となっています。我々としては、ユーザーが利用したいパソコンのレベルに応じて、OSも選択していただけるように施策を用意していきたいと考えています。
アップグレードについては、XPの時もいくつか施策を用意しておりましたので、その方法については検討しております。具体的には後日発表とさせていただきます。
Vistaに対応可能なパソコンに付くロゴ。白いロゴはAeroもOKなパソコンの印
Vistaに対応可能なパソコンに付くロゴ。白いロゴはAeroもOKなパソコンの印
 
[ASCII24] 現在米マイクロソフト社のウェブサイトでは、“Vista Upgrade Advisor”のRC版が提供されています。これの日本語版の提供予定はございますか。というのも、これを使うと自分のパソコンをVistaにアップグレードできるかできないか、問題があるとすればどこかが把握しやすいのですが。
 
[倉本] 日本語版の提供も検討しております。
XPパソコンのハードとソフトがVistaにアップグレード可能かを判定する“Vista Upgrade Advisor”。日本語版の提供が期待される
XPパソコンのハードとソフトがVistaにアップグレード可能かを判定する“Vista Upgrade Advisor”。日本語版の提供が期待される
 
[ASCII24] XPからVistaへのアップグレードでは、XPのバージョンとVistaのSKUの組み合わせによって、アップグレードインストールができるものと、クリーンインストールが必要なものとが存在し、非常に分かりにくい状況です。またハードウェアの要件も、Aeroを使おうとするとかなり厳しくなる。ユーザーにはかなり分かりにくいと思われますが、どうにかならないものでしょうか。
 
[倉本] Upgrade Advisorの提供というのもひとつです。またユーザー様は製品サイト等で情報を収集されますから、アップグレードや買い換えに不安を抱かれないように、情報の提供は今後も拡充していこうと計画しています。
 
[ASCII24] Vistaを初めて触った頃は、ユーザーインターフェース(UI)など今までからかなり変わっているので、戸惑った面がありました。一般のユーザーでも、かなり違いに戸惑う面があるのではないかと思いますが、それを緩和する具体的な施策はありますか。
 
[倉本] ひとつは、VistaやOffice 2007について、触れていただく機会を増やそうと強く考えています。RC1に関しては、雑誌添付ということも行ないました。XPの時よりも、(ダウンロードを含めれば)過去最大規模でした。まずはパソコン習熟度の高い方から理解していただくということが非常に重要ですので、とにかく雑誌添付を拡充しました。今後はWPCのような展示会等を通じて、露出回数を増やすということもありますし、特設ウェブサイト等も通じてご紹介していきたいと思います。
あとはユーザーによって違うとは思いますが、ビジネスユーザー、私共はインフォメーションワーカーと呼んでいますが、この方々に大問題なのは、Office自体が、たとえばPowerPointがどう変わったかにあります。おそらくそれぞれのアプリケーションの機能に習熟していただくことから始まるので、新しい使い勝手、特にリボンと呼ばれる機能など、どのように改善されどこが違うのかといったところは、ウェブサイトや店頭デモなどを含めてご紹介したいと考えています。
 
[ASCII24] 今XPで使っているTVパソコンやTVチューナーカードでは、Vistaでの互換性に不安を感じるものもあります。何か対策はありますか。
 
[倉本] 現在TVチューナーのメーカー様と協力して、コンパチビリティーチェックをやっています。“Certified for Windows Vista”ロゴプログラムというものを行なっていまして、たとえばVistaのMedia Centerなどとの互換性テストを通過した製品については、Certifiedロゴを授与しています。これが目印というわけではないですが、Aeroが動いてMedia Centerも起動するという環境を作るという点について、まさにメーカー様と組んで行なっているところです。
 
[ASCII24] しかしあれは現行の製品に付くロゴであり、過去の製品、販売終了したような製品に付くロゴではないですよね?
 
[倉本] 確かに新しいものが主流になってくるとは思いますが、現在メインストリームで使われている古いものについては、たとえばCertifiedではなく“Works with Windows Vista”とでも言うような、一段下のロゴプログラムがあります。これは弊社のテストではなく、メーカー様が独自にテストをしていただいて、Vistaで動くことを検証していただくプログラムとなっています。Certifiedがマイクロソフトとタッグを組んだ検証だとすれば、Works~はVistaで動くことをメーカー様側で能動的に検証していただくプログラムです。ですので、ちょっと古いけれどメインストリームなものについて確認したい場合は、そのような施策を用意しております。
 
[ASCII24] それはメーカーのウェブサイトに行けば情報が載っているというものですか。
 
[倉本] そうですね。そこに行くとWorks~のロゴが貼ってあるような感じです。
 
[ASCII24] Vistaは32bit版だけでなく64bit版もリリースされますが、これはすべてのSKUについて、32bit版と同じタイミングで提供開始されるのでしょうか。それとも後になるのでしょうか。
 
[倉本] 64bit版の提供は予定していますが、提供方法、SKUの数等については、近々決定の予定なのですが、現時点ではまだ決定しておりません。
 
[ASCII24] スケジュールについても未定と。
 
[倉本] そうですね。
 
[ASCII24] これは我々メディアも良くない点かもしれないのですが、現状では「VistaのPremium、Aeroが動かないマシンはダメだよね」といった風潮ができつつあるのかなと思います。御社としてはどう思われますか。
 
[倉本] これは我々がパソコンメーカー様とも話をしてきた重要な点なのですが、Premium Ready PCなどはパソコン市場全体を拡大していこうという狙いがあります。たとえば1GBという要件は、当然メモリーに対する需要が出てきます。Premiumの体験ができれば、それに対応したアプリケーションやサービス、周辺機器に対する需要も生まれます。もう一度、パソコンを中心として需要を喚起できる、起爆剤になるという観点です。
それも含めて、(Premium Readyについて)パソコンメーカーから賛同を得られたのは、非常に大きな意味があります。だから我々としては“Premiumが当たり前”の時代にしていくことで、もう一度業界全体を盛り上げていく、ある意味の責任のようなものがあると思っています。Vistaのリリースで市場に与えるビジネス効果が大きいと期待されていますし、我々もそれを達成しなくてはならない。新しいOSの登場で、パソコンの使い方が次の世代に変わる。そして次の世代を代表するのがPremiumの世界と、我々としてはパソコンメーカー、周辺機器メーカーと共に、そういう世論を作っていきたいと考えています。
 
[ASCII24] なるほど。しかしそれはユーザーにとっては、新たな出費となります。そうなるとXPからの移行には、かなり時間がかかってしまうのではありませんか。パソコンの買い換えサイクルまで待たれては、3~4年後でもまだXPというユーザーが多いという状況になっては、御社もメーカーも負担になるのでは。
 
[倉本] 2つのシナリオがあります。ひとつは、今は具体的には言えないのですが、XPの方が安心してVistaに移行するための、パソコン丸ごと買い換えではない方法といったもののサポートですね。もうひとつは、Vista自体の魅力をきちんと理解していただくことを、我々がきちんと提案していくことだと思います。「Vistaにしたいな」「Vistaが欲しい」と思うような機能であるとか、Vistaでなければできないことがあるとなれば、XPの方がどんどんVistaに移行する現象も起こると考えます。
 
[ASCII24] XPが結果的に5年もの間続いたことで、パソコンのOSを選ぶという意識が、今のユーザーには希薄なのではないかと思います。OSを変えるという意識がない人に、どうやってその意識を持たせるのかが問題ですね。
 
[倉本] 逆にそれがチャンスだな、という面もあります。Windows 95の時は、まだパソコンは高級品でした。XPの時は、パソコン市場も成長期でした。今のようにブロードバンドもない時代でした。今は完全に市場が成熟期に入ってしまい、95ともXPとも時代が違う。当時OSをアップグレードするというのは、一部の方だったと思うのです。でもVistaはある意味成熟して家庭に普及したパソコンで、皆さんが使えるように垣根を低くして、使い勝手を簡単にシンプルにして、セキュリティー機能もつけてと、かなりユーザー目線で開発しています。ある意味、市場が変わったことをチャンスにしていきたいという観点で製品開発されたものなのです。
 
[ASCII24] 最後に、貴方がVistaの中でも特に気に入ってる、あるいはユーザーに使ってほしいと考える機能はなんですか。
倉本さんイチオシの“Windowsフォトギャラリー”。デジカメ写真の整理や修正が簡単に行なえる
倉本さんイチオシの“Windowsフォトギャラリー”。デジカメ写真の整理や修正が簡単に行なえる
 
[倉本] Windowsフォトギャラリーですね。日本のコンシューマーの利用シーンで多いのは、デジタルカメラで撮った写真をどうにかしたい、というが一番多いんです。フォトギャラリーは今回、誰も説明を受けなくても、ゼロから使えるような仕様になっています。説明書を読まなくても使えるようにUIをデザインしているのと、PhotoShopを使えないような方でも簡単に補正できるようにしています。誰でも“ちょっとデジタルなことが自分でできる喜び”が、簡単に味わえる点が非常に大きいですね。今後はオンラインで簡単にプリントの発注ができる機能も追加します。
さらにWindows DVDメーカーで、フォトギャラリーで撮った写真を、DVDビデオとしてDVDに書き込める。そうすると、パソコンを持っていないけれどDVDプレーヤーはあるという家に、DVDを持っていくだけでデジタル写真を見せられるというわけです。


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