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【第13回東京国際ブックフェア2006 Vol.2】ボイジャー/セルシス/インフォシティの強力タッグで電子書籍の普及が急加速!?

2006年07月07日 20時01分更新

文● 千葉英寿

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“デジタルパブリッシング フェア”の会場
複数ある“東京国際ブックフェア”の併催イベントを通じて、最も大きな専門展示となった“デジタルパブリッシング フェア”

東京・有明の東京ビッグサイトにて、今年も例年通り“東京国際ブックフェア”に併せて“デジタルパブリッシング フェア2006”開催されている。ここでは出展が相次いだIT関連企業のブースについての詳報をお届けする。デジタルパブリッシング フェアは、携帯電話向けのコンテンツ配信など、出版のデジタル化が本格化しつつある出版業界において、出版社などのコンテンツホルダーに最新の配信技術やサービスを紹介する専門展示会だ。携帯電話への電子書籍配信サービスが一気に花咲いた2005年(関連記事1関連記事2)から、今年はさらに新技術や新規サービスが乱立してくる一方、先行する企業はこれらに新興勢力を押さえ込もうという動きが目立っていた。





“Googleブック検索”を強力プッシュするグーグル

会場内で最も人気を集めていたブースは、アドビ システムズ(株)のブースだった。出展内容は、書籍電子化に不可欠なツールといえる『Adobe Creative Suite 2』のデモがメインとなっていた。デモ会場は常に満席で、立ち見の盛況となっていた。

アドビ システムズのブース アドビブースでPhotoshop CSなどを個別でも説明
デモが行なわれるとすぐに満席になったアドビ システムズのブース『Photoshop CS』、『InDesign CS』、『Illustrator CS』を個別に説明するブースも設けられた

ブース構成は地味ながらも、別の意味で最も注目を浴びていたのがグーグル(株)(Google)だろう。今や検索エンジンのトップ企業という一言では到底表現しきれないほど、事業領域を広げつつある同社がデジタルパブリッシング フェアに出展した理由はほかでもない。米国では賛否両論を醸しているサービス“Googleブック検索(Google Book Search。以前はGoogle Print)”を出版社に詳しく説明するとともに、登録プログラムをPRするためだ。

“Googleブック検索”をアピールするグーグルブース
Googleでは“Googleブック検索”について説明を受ける出版関係者が、引きも切らずに訪れていた

このサービスは、書籍のテキスト(本文)を有効活用してユーザーの検索キーワードにあった書籍を見つけ出し、その本を購入できる場所にリンク(誘導)するというもの。ユーザーは自分が必要とする情報が掲載されている書籍に簡単に見つけ出して購入でき、出版社はこれまで倉庫や書店の在庫に埋もれて日の目を見なかった書籍も、新たな読者に購入してもらえる機会が得られるわけだ。

Googleブック検索では、書誌情報のみを提供する“スニペット表示”、出版社の許可により一部ページのみを表示して、出版社の直販サイトにリンクする“サンプルページ表示”、著作権保護期間が切れている書籍において、全ページ内容を表示し、さらに近隣の書店をマップで紹介する“書籍全体表示”の3パターンのサービスが提供される。

同社ブース担当者によれば、日本でのサービス開始は年内としており、このフェアを機会に参入を検討している出版社に積極的に説明して理解を深めてもらいたいとしている。



電子書籍の先行企業3社が、ついに手を取り合った!

会場で一番のサプライズだったのが、(株)ボイジャー、(株)セルシス、(株)インフォシティの3社が、携帯電話プラットフォームでの電子書籍ソリューションを共同展開するというものだ。まず手始めに、ボイジャーの“.book”(ドットブック)とセルシスの“ComicSurfing”(コミックサーフィン)の両フォーマットが再生できる新たな電子書籍ビューワー『BookSurfing』(ブックサーフィン)を開発、提供するという。その後も段階的に、各社の有するフォーマット、技術、システムの統合を進めていくとのことだ。

ボイジャーブースの様子 総合電子書籍ビューワー『Book Surfing』
ボイジャーはパナソニック(松下電器産業)との共同出展ボイジャー、セルシスが総合電子書籍ビューワー『Book Surfing』を提供

3社が協業するに至った背景には、文字だけでは電子書籍を立ち上げることができなかったが、かといって火付け役になったコミックだけで将来の電子書籍を担うのは現実的に厳しい、という双方の思惑が一致したからだろう。いずれにせよ書籍の電子化に真っ向から向き合ってきたボイジャーと、最強の“メイド・イン・ジャパン”コンテンツであるアニメ・マンガの電子化を進めてきたセルシスの最強タッグに、放送・通信関連分野においてさまざまな開発を行なってきたインフォシティが加わったことで、今後の電子出版に大きな影響を与えることになるだろう。

このほか、ボイジャーは携帯電話用の.bookコンテンツ制作に対応した出版ソリューション“.press”(ドットプレス)の紹介も行なっていた。.pressでのコミックコンテンツは、.bookの版面を携帯サイズにフレーミングし、フレイムを移動するだけでコミックコンテンツに設定できる。これにより、ひとつのデータをさまざまなデバイスで可読できるわけだ。

パナソニックのデジタル読書端末の次期モデル
パナソニックのデジタル読書端末の次期モデル

その表示デバイスのひとつとなるのが、ボイジャーと共同でブースを展開していた松下電器産業(株)が参考出品していた“次期電子書籍ビューワ”だろう。これは2005年から開発を続けているもので、右手左手どちらで持っても片手で操作できるもので、.bookなどの電子書籍コンテンツはもちろん、SDオーディオや動画などを10時間程度再生できるマルチメディアプレーヤーだ。“ΣBook”(シグマブック)の後継機にあたるものだが、機能もスタイルも大幅に変更されたため、その名前を継ぐかどうかも未定とのことだ。

ΣBookの後継機種の画面 ΣBookの後継機種の画面、その2
グラビアやコミックを表示させても美しい

また、セルシスはこれまでKDDI(株)のau端末でComicSurfingが実現していた外部メモリーカードへのコンテンツデータ保存を、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)の端末でもminiSDやメモリースティックDuoなどの外部メモリーカードに記録できるように仕様変更することを明らかにした。これまでのドコモ端末では、仕様上の理由から完全なダウンロード型配信が行なえなかったのだが、今夏投入と噂されている“903シリーズ”で仕様が変更され、実現できるようになったようだ。

NTTドコモ端末で外部メモリーに電子書籍を保存可能に
セルシスはNTTドコモ端末でも外部メモリーカードへの保存が可能になることを表明


XMDFの普及促進に懸命なシャープ

シャープブースの模様
シャープブースの模様

電子書籍で重要な地位を占めるフォーマットのひとつ“XMDF”(同社の“ブンコビューワー”向け電子書籍フォーマット)を単独で展開しているシャープ(株)にも、新たな動きが見られた。同社は昨年、“北斗の拳”をXMDFで電子化してコミックにも進出したが、今回はさらにこれを推し進めて『XMDF対応マンガ制作ツール』の提供を始めた。このツールは無償で提供されるものだが、一般ユーザー向けにフリーダウンロードで提供するわけではなく、XMDFで電子出版を行なうコンテンツプロバイダーに対して、シャープが直接提供するという。JPEGなどの画像データや音声データなどを編集加工する機能は持たず、それら素材が揃った段階で画面レイアウトを行なうツールであるからだ。



XMDF形式のコミックの画面 XMDFマンガ制作ツールの画面
シャープのXMDFでは、コミック対応が本格化しているXMDFマンガ制作ツールは無償で提供するとのこと

また、同社は(株)デジタルコミュニケーションズが開発している『Word2XMDF』も参考展示していた。Word2XMDFはMicorsoft Wordで作成・編集したWord文書を、XMLなどの予備知識を必要とせずにXMDFに変換するコンバーターソフト。携帯コンテンツなどの厳密なレイアウトデザインを必要としないコンテンツの制作などには、ノンコストで威力を発揮するかもしれない。

Word文書からXMDFへの変換ツールの画面Word文書からXMDF変換も可能になる

このほか、ウェブブラウザーを活用した電子書籍ビューワーも会場を彩っていた。(株)廣済堂(こうさいどう)は、ウェブブラウザーの画面上で“めくって読める”書籍閲覧ソフト『Web Magazine Viewer』を開発、展示していた。Web Magazine Viewerは、本を読む感覚でページをめくってコンテンツが閲覧できる機能を持つもので、(株)ヤッパの電子印刷物配信技術である“YAPPA ONLINE PAPER”をベースに印刷ノウハウを付加したもの。Flashをベースとしているため、ウェブブラウザーでの閲覧時にはFlash Player以外に新たなプラグインソフトをインストールする必要がないのも手軽だ。

光陽社の『easyBookPRO』の画面 廣済堂の書籍閲覧ソフト『Web Magazine Viewer』の画面
光陽社の『easyBookPRO』廣済堂の書籍閲覧ソフト『Web Magazine Viewer』

(株)光陽社は、PDFデータを利用してウェブブラウザーで閲覧できる電子書籍に変換するパッケージソフト『easyBookPRO』と、電子書籍作成サービス“easyBook”を紹介していた。こちらもページめくり機能などを盛り込んでいるものも、特に目新しい機能があるわけではない。しかし、ノンスキル&低コストで電子書籍化が行なえるという点では、印刷会社や制作会社に重宝されるだろう。


マイクロテックのオーバーヘッドスキャナー『BookShot BS1200』
マイクロテックのオーバーヘッドスキャナー『BookShot BS1200』

昨年話題になった、手間を掛けずに書籍のデジタル化を行なう自動ブックスキャナーが今年も出品されていた。世界的にも注目されている米キルタス・テクノロジーズ(Kirtas Technologies)社の『APT1200』が出品されており、現在までに2台が導入されたという。また、(株)マイクロテックはオーバーヘッドスキャナー『BookShot BS1200』を出品した。こちらはAPT1200のように自動でページをめくって取り込みを行なうものではないが、シーソー式のブックホルダーにより、原稿(書籍)に過度な負荷を与えず取り込むことができる。専用の1200万画素エリアCCDカメラを搭載しているので、より高精細なスキャニングを可能としている。のど(綴じ込み部分)の湾曲したイメージも自動補正され、より完成度の高いスキャンデータを生成できる。



コダックブースの模様 GMGカラーテクノロジーズのブースの模様
コダック(株)はデジタルパブリッシング全般のサポートを展開していたGMGカラーテクノロジーズ(株)では完全RGBワークフローを紹介

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